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 たっぷりと時間を取って王宮内を見学した後は、さすがに休憩を取りたい。
 嬉しいことに王宮内にカフェがオープンしているので、しばしのんびり。カメリエーレが「ビチェリンはいかが?」と薦めてくれるので、トリノ名物のビチェリンをいただく。小腹が空いたので、プロシュットのパニーノも。パニーニは他にもサーモンやチーズなどいろいろあって選ぶことができる。サンドウィッチもあり。王宮カフェなので上品なサイズ&量。ビチェリン、もっと飲みたかったな。
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 トリノのビチェリンといえば、「カフェ・アル・ビチェリン」(発祥のカフェ)へ行ってみたかったが、宿から距離があったので諦めてしまった。チョコレートの風味が疲れに沁みて美味しい♪甘さはあるが、コーヒーと一緒なので、くどくないの。

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 王宮内の武器博物館からカステッロ広場を、そして滞在中の宿を臨む。
トリノは、美しかった。
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 世界遺産であるサヴォイア王家の宮殿には、欧州随一といわれる武器博物館がある。これが凄い迫力で、芸術品なみの甲冑や武器に目の玉が飛び出そうになる。騎士が馬にまたがっているのがリアルで、今にも動き出しそう、中世にタイプスリップした感覚に。しかし重そう、実際に動けたのだろうかと。
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 そして、お馬さんまでもが重そうなのである。人間も馬もこれでは、身に付けた感覚が想像できない(辛そう)。見た目はもちろんカッコイイのだが(凄いデザイン…アヴァンギャルドだ)。
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…手の先までがこんななの。ここまでくると絶句。いくら見ていても飽きない、時を忘れてしまう。

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ミラノ滞在中に何度も通った、中心部のメラヴィリ通り。
トラムのレトロな趣きが街の風景に馴染んで、どこか懐かしい印象。

今回の音楽の旅は、成田からミラノに到着後トリノへ。そしてまたミラノに舞い戻ってきた。音楽鑑賞を軸にしてしまうと、どうしてもこのような旅程になってしまうのが辛いところ。
 ミラノではスカラ座まで2分の宿、ホテル・スターに2泊。3つ星でも場所的にそれなりの値段がするが、早割でなんと45%オフで確保。一人旅(夫は日本で留守番)には嬉しい。ただ、ホテルのサイトで申し込み後、24時間以内に確認メールのやり取りをしないとキャンセル扱いになるので注意。また、即決済でキャンセル不可なので、旅程が確定しなければ申し込めないのが難点。
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 ホテル・スターはこの細い路地の右手に。ホテル自体は快適で、フロント・デスクもすぐに顔と部屋番号を覚えてくれて、対応がとてもいい。朝食も普通に充実していて美味しい♪なんといっても立地が最高だ。
 だが、トリノの中心部があまりにも整然と美しかったものだから、この辺りに来てみると「なんだかグチャグチャした(パッとしない)所だな」というのが第一印象(ごめんなさいねミラノ)。慣れてみると、これはこれで味わいがあっていい。
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 スカラ座に近いということは、ドゥオーモやガッレリアからも近いということで、実際に行ってみると宿からあまりの近さと、東京都心なみの人混みに驚く。せめてプラダ本店ぐらい覗いてみようと入ってみるが、店内は日本人や中国人の観光客がほとんど。そう、ここは観光地だものね。


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ミラノのシンボル、ドゥオーモ。快晴の空に映える白が眩しい。
この隣にある1900年代美術館も行きたかったが、今回は残念…。

 今回ミラノは3泊。到着日は中央駅傍のホテル・ベルナへ。翌日朝に列車でトリノへ発つので、本当に泊まるだけ。なので三つ星(別館)と四つ星とあるが、今回は経済的な三つ星の方をチョイス。知人のお薦めだったが、これが大正解!
 部屋に入ると枕上にはウェルカムスイーツ(美味)がさりげなく置かれており、心遣いにほっこり。ポットはもちろん、ティーバック類が盛り沢山なうえ、ミニバーにはドリンクがアルコールを含め10本近く入っている。これが全てフリーとのことで、一泊だけとはもったいなかったなぁと(ケチ根性が…)。
 朝食は三つ星も四つ星も同じ場所。滞在客は年輩の方が多く、落ち着いた感じ。スタッフがまめに気遣ってくれるのが嬉しい。
 カフェマシーンがあるが、朝はカプチーノが飲みたい。「マダム、何か他に?」と声を掛けてくれるので、カプチーノを頼むとキッチンに行ってすぐに持ってきてくれた。しかも可愛いの。
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 中央駅はこれまた荘厳さ溢れる建築物で、内部の装飾も美しく、思わず写真を撮りたくなる。駅周辺は近代的な印象で、いわゆる「都会」な感じ。「都会」は東京も、ミラノもベルリンもパリも雰囲気自体は大体似通っているもの。これがスカラ座周辺となるとまた違った印象となる。

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ダンテのベアトリーチェ、書斎のステンドグラスから。
背景にはフィレンツェの鐘楼。

 友人、知人ら皆からお薦めされたポルディ・ペッツォーリ美術館へ。スカラ座からも近く、月曜日でも開館しているので、これ幸いと気軽に訪れた。こじんまりとして落ち着いた邸宅美術館だが、名画を多く所蔵しており、昨年に日本へ来たボッティチェリ《書物の聖母》とも再会。
 また、目もあやなヴェネツィアンレース&グラス、ペルシア絨毯、金銀の装飾品、彫刻、そして見事な時計コレクションなども目を楽しませてくれる。絵画や工芸品は、機会があれば日本へお越しいただけるが、建物自体となると難しいので、こうして貴族の私邸である室内装飾を味わうことができるのは嬉しいな、と。
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 宮殿の豪華絢爛さとは違う寛げる雰囲気がいい。ここでは、ロココの大きなパニエファッション(お姫様ドレス)ではなく、もっと近代的で軽やかなドレスが似合いそう。見どころは絵画(ヴェネツィア派も沢山)をはじめ語ればきりがないのだが、当主がよく過ごしていたという書斎は独特の味わいで、ダンテ《神曲》に因んだステンドグラスが鮮やか、ベアトリーチェが可憐なこと!当時としては随分モダンな感じを受ける。
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 ミラノに来たからには、これ(だけ)は観ねばなるまい、と訪れた《最後の晩餐》。予約を取るのが難しいと聞いていたが、直接サイトにて最後の一枚を確保。ミラノ滞在時に合わせてちょうど一枚だけ残っていたなんて、これこそ奇跡、とチケットを握り締めて無事入場。1グループ(20人~30人ぐらい)単位の見学で、15分間という制限があるけれど、少人数であることのメリットが最大限に生かされており、周りを気にせず絵画とじっくり向き合えるのはありがたい。
 実際に観てみると、思ったより大きいことに驚く(通常は思ったより小さいと思うことが多いのだが)。この絵については、様々な解説を読むことができるが、やはり色彩や質感は、こうして実際に見るのと紙上で観るのとでは全く違う。そして、何よりもこの空間で観ることによってレオナルドが何を描こうとしていたかが、体感できる。この場所であること自体にまず意味がある。描かれている場所と絵は切り離せない、遠近法の見事さは、この空間があってこそ分かるのだと、もう目から鱗状態である。得難い15分間の体験だった。
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 サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の美しさにも息を呑んだ。
 なんと清澄な空気がみなぎっていることか、この教会は今なお生きている。お祈りを捧げている信者の邪魔にならぬよう、音を立てないようにして内部を回らせていただく。敬虔な想いが自然と湧き出てくる教会だ。中庭の回廊から眺める教会の優美さに溜息。内部の独特な壮麗さにも、目を奪われてしまった。
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 スペインの若きピアニスト、フアン・ペレス・フロリスタンのリサイタルへ。
 今年のMITO9月音楽祭のテーマは「natura(自然)」。コンサートごとに表題が付けられており、今回は《AL QUADRATO》。抽象的な題、絵画のような四角い空間を表しているのだろうか。
 会場に入ると舞台にはファツィオリのピアノが。どんな音色を聴かせてくれるのだろうかと、期待が高まる。
 プログラムはリスト、ドビュッシー、そして休憩を挟んでムソルグスキーの《展覧会の絵》とヘヴィーな内容(超絶技巧満載)で、まぁこれは大変(ドビュッシーを挟まなければもたないだろうな)と。
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 まずはリスト《巡礼の年 第2年:イタリア》から3曲。《婚礼》はラファエロの絵画をモチーフとしているが、その絵画は、まさにここミラノのブレラ美術館にある。ロマンの薫り溢れる曲と相まって、それを思うと胸が高鳴り、どうにかなってしまいそう。
 フロリスタンは手さばきもエレガントな、柔軟性に富むロマンティックなリストを奏で、またファツィオリがなんとも艶やかでくっきりとした響き。ヒューイットのバッハでのファツィオリとは全く異なる鮮やかな響きに驚く。そして、《物思いに沈む人》(こちらはミケランジェロ)を挟んで、In questo stato son,Donna,per vuiー悩める恋心を謳いあげた《ペトラルカのソネット104番》、まさにイタリアのアモーレ全開といったソネットで、プログラムにもしっかりとソネットが掲載されているのは素晴らしい。
 最前列にいた若いカップルがぴったり肩を寄せ合って聴き入っているのも、いいなぁ、と微笑ましい。こんな親密な空間で、恋人同士リラックスして聴けるクラシックコンサートなんて、最高ではないか(値段を聴いて驚くなかれ、5€。しかもこの演奏レベルを聴けるとは、日本の感覚では信じられない)。
 私の隣席のおばあさまは、熱心なクラシック音楽ファンのようで、休憩時間には来シーズンのスカラ座プログラムを凄い勢いで一枚ずつめくりながら〇×チェック(×は行かない舞台のよう)をしていた…。カーテンコールでは大喝采、満足されたようで良かった。

 そしてドビュッシーの前奏曲集から5曲。《亜麻色の髪の乙女》《オンディーヌ》《西風の見たもの》と、馴染みのある曲が続く。近代的和声のドビュッシーの世界を鋭い響きで表現。休憩後は大曲《展覧会の絵》、これは圧巻だった。ロシアの薫り…、本当にユニークな組曲。ここでのフロリスタンは、リスト&ドビュッシーとは全く異なった手さばきで、どっしりと芯の通った力強い音を立ち上げる。ギャラリーで実際に絵と対峙しているかのごとく、しっかりと各曲のキャラクターを表現。《リモージュの市場》の賑わいのくだけた表現も上手い。クライマックスの《キエフの大門》への盛り上げ方も迫力満点で、大喝采。
 ムソルグスキーは昨年に《死の歌と踊り》で度肝を抜かれたが、オペラ《サランボー》なんて聴いてみたかった。完成したのが《ボリス・ゴドゥノフ》だけとは、残念。
 

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 偶然に入ったサン・マウリツィオ教会で、色彩鮮やかなフレスコ画に目を奪われてしまったが、最も印象的なのが、このブルーの天井画。まさに天上の世界が描かれている。このフレスコ画、厳格な雰囲気が全く無く、柔和でエレガント。愛らしい雰囲気があって、微笑ましい。癒されるなぁ。
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 天上の世界の下には、キリスト受難の物語と聖人たちさまざま。ここでもマグダラのマリアが本当に綺麗(いつも輝く髪を波打たせてキリストの足元にいるイメージ)。
 ヴェネツィアでもお馴染みの聖ロッコ。そして聖カタリナ、聖アガタと美しき女性の聖人たちが並んでいる。女子修道院らしい雰囲気。
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 聖ルチア。マグダラのマリアと違って、凄まじい殉教を遂げた聖女たちは皆、凛とした佇まい。ドレスもエレガント。
 面白かったのは《ノアの箱舟》、まるで子供向けの想像力を掻き立てられる絵本の世界だなぁと。この時代には、もうラクダやらキリンやらはよく知られていたのだろうか。目立つ位置にユニコーンがいるのもナイス。
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 ミラノに来たからには、とにもかくにも《最後の晩餐》を観ねばなるまい、とサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会を詣でたあとの帰路で、ふらりと立ち寄った教会。偶然入ったが、一歩足を踏み入れたとたん、その壮麗さに腰を抜かしてしまう。《最後の晩餐》の見学で一緒だった団体も後から来て、ガイドの説明を受けていたので、有名な場所なのかな、と。
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 ともかく壁面全てがフレスコ画で埋まっており、なんという鮮やかさ!これは必見、ガイドブックに大きく取り上げられていないのが不思議なくらい。こんな教会がさりげなくあるところが、さすがイタリアだ。
 あとから調べてみると(夜にスカラ座へ行く予定だったため、内部をゆっくり観れず残念)、15世紀からあるロンバルディア・ルネサンス様式の教会(外見は地味)で、フレスコ画はレオナルド・ダ・ヴィンチと同時代で、彼からの影響を強く受けたベルナルディーノ・ルイーニとその弟子達によるものだそう。
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 レオナルドの影響がいかに強かったか、そして《最後の晩餐》が当時いかに革新的なものとして受け取られていたのかが、よく分かるのがこちらのフレスコ画。違いを見比べてみるのも、また興味深いかも。

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 スカラ座博物館の小さな入口から、オペラのポスターがズラッと掲げられている(ここでもう気分が盛り上がってしまう)こじんまりとした階段を登っていくと、スカラ座のホワイエに。
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 その夜、実際にオペラを観た際にはプラテア席で、1階(piano terra)にずっといたため、ここは日本でいう何階になるのだろうか。1階よりも天井を含め格段に広くて明るいように感じる。ちょうどバレエのリハーサル中だったので、劇場内部は見学できず、パルコ席からガラス窓を通して内部を覗き見る感じ。ぼんやりと薄暗くしか見えなかったが、それでも劇場の美しさが十分に伝わってきた。
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 博物館はまずコンメディア・デッラルテの世界から。オペラが歴史的に演劇の延長線上にあることを踏まえている展示で、さすがポイントを押さえているなぁと感心。ゴルドーニの肖像画もあったので、例の会場スタッフのおじさまに「ゴルドーニが好きで、昨年はヴェネツィアのゴルドーニ劇場へも行った。コンメディア・デッラルテの絵がたくさん!」と言ったら、またまた手招き。その先には道化師の像が。
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 「ほら、これがヴェネツィアのアルレッキーノだ。アルレッキーノはヴェネツィアなんだよ。アルレッキーノはベルガモ(いや、クレモナ?記憶が曖昧)から来たんだ」と。
 そして別の陶器の道化師を指して「これはプルチネッラ。プルチネッラはナポリ。ナポリは行った?」「いえ、まだ」と答えると目を見開いて「ナポリも美しい所だよ。サン・カルロ劇場にカポディモンテ美術館…。でも、ん~ちょっと、あそこはね」と言葉を濁すおじさま。私が「注意が必要?」と言うと、うなづいて荷物をかすめ取るような仕草。ナポリには憧れるが、そんなに危ないのかなぁ(知人が「ナポリでは、あ、ちゃんとしなきゃ、と思ったよ」と話していたのを思い出す…)。

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