「ラモーの甥」ディドロ著

今年再版され、ラモーと聞くと黙っていられない私にとっては嬉しい出来事。160頁ほどの小篇ですが、読みこなすのに一苦労。訳はこなれており読みにくくはないのですが、内容把握が…(理解できたとは言えず)。
ディドロはルイ15世紀時代に発展した「啓蒙思想」の旗手であり、『百科全書』の編纂者。この作品はラモーの実在の甥をモデルにし、その甥を通して旧体制のフランス社会を風刺したもの。このラモーの甥の造型(偽悪者)に見るべきものがあります。来るべき革命の予感も感じさせる内容で、貴族社会の暗部が生々しく描かれており、その具体的さ(ここまで書いていいの~)は現在の週刊誌並です(笑)。生前には出版されず(できず?)、ゲーテの訳によってドイツで出版されるという紆余曲折の運命を辿っています。『ファウスト』メフィストの造型は、このラモーの甥から影響を受けているという指摘が多いようです。
風刺文学ですが題名からも分かるように、それが音楽論を通して行なわれているところに特徴があります。音楽史的に有名な「ブフォン論争」(イタリア音楽VSフランス音楽)がベースになっていますが、著者の立場は明確になっていません。新しい感覚の輸入音楽(イタリア)に惹かれながらも、自国の伝統的な音楽も捨てがたいというジレンマが感じられ、これは日本にいながらヨーロッパ音楽をあたりまえに聴いている私にも当てはまるようで、共感を覚えました(こうした捉えかたは古いのかもしれませんが)。
ところで、別な意味で楽しかったのは、その当時に聴かれていた音楽がリアリティを持って語られる箇所。現在では古楽復活が進んでいるので、この著作に記載されている音楽を容易に聴くことができます。

e0036980_9575528.gifラモー「カストルとポリュクス」。テナールのアリア『深淵、夜、永久の夜』について、ラモーの甥は「これが歌われるたびに、こうしたものはお前には作れまいといつも苦しげに独り言を言わないではいられなかった。わしは伯父を妬いていたんです…」
また、ディドロはラモーについてこう書いています。「音楽理論についてあんなに多くの不可解な幻想と黙示録的な真理とを書いたが、それは彼自身にも何人にもかいもく分からなかった。オペラの中には和声と、歌のはしくれと、きれぎれの思想と、騒音と、飛翔と、凱旋と槍と、光栄とざわめき、息せき切った勝利と、永久にも続きそうな舞踊曲がある…」


e0036980_10203725.jpgイタリアのロカテッリ「ヴァイオリンの技法」。この作曲家(兼ヴァイオリニスト)も数回登場。他、ナポリ派のドゥーニ、レオ、ペルコレージのオペラ作品も多数。オペラ好きには嬉しいですが、この本の見方としては完全にズレてますね…。
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by marupuri23 | 2005-10-02 09:50 | early music | Comments(0)