ヘンデル:オラトリオ《イェフタ》 第13回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン

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今年の第一弾目の演奏会が、こんなにも感動してしまうものになるとは思わなかった。
聴いている途中から、目頭が熱くなるのを感じ、久々に胸が一杯に。この余韻はしばらく続きそうだ。

「晩年のヘンデル」がテーマとなった、今年のヘンデル・フェスティバル・ジャパンの演奏曲はオラトリオ《イェフタ》。ヘンデルが視力を失いつつある中で作曲されたもので、実質的には最後の舞台作品だ。
作曲家に限らず、芸術家の人生の有様と、作品自体は切り離して考えるべきだとは分かっているが、ヘンデルの最後に辿りついた終着点は確かにここにあるということを感じて、胸が熱くなった。

ヘンデルは本質的にはオペラ作曲家で、若き日よりその輝かしいオペラ作品の数々で名を馳せてきた。私はヘンデルのオペラが好きだ。
まさにバロックの精神を体現したような、カストラートの超絶とした声が君臨し、現実を飛び越えて魔法の世界までも鮮やかに作り出し、そして男女の機微を細やかに、艶めかしく表現し、聴くものをこの世のものとも思えぬ陶然の境地へ連れて行ってくれる、ヘンデルのオペラの数々…。
ヘンデルの人生は、そうした自身の作品を上演するための、世間との闘いの連続でもあった。そして最後まで、劇場での上演に命を掛けていたように思える。

この最後の作品を聴きながら、彼の作り出してきた過去の華々しいオペラからオペラ自体の衰退、そしてオラトリオへの転向、ここに至るまでの流れを、その闘いの人生を想い起こさずにはいられなかった。
時の無情な流れには逆らえないけれども、それでも「最後の仕事」の見事な成果を聴くことができたことは、本当に良かった。
この宗教的な深みのある音楽ー《ああ、主よ、御胸の何と幽庵なことか!人間の目には覆い隠されている!我々の歓びはことごとく悲しみに転じ、我々の勝利は悲嘆に変わるー夜が日に取って代わると。確実な喜びは無く、確固たる平和もないー我々人間の知るところでは、この地上では。…》(2幕合唱)
この境地は、晩年だからこそ可能な表現なのだろう。この作品が最後となったことを、本人は悔いてはいないはずだ。

もっと自分が年を経れば、ヘンデルのオペラよりもオラトリオに惹かれるようになってくるのかもしれない…。

★演奏は真摯なもので、この日のために修練を重ねてきたことがうかがえる見事なものでした。一回きりとは本当にもったいない限り。
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by marupuri23 | 2016-01-12 00:28 | コンサート | Comments(2)
Commented by miya at 2016-01-14 00:41 x
まるさんと猫のまるさん、遅ればせながら、
あけましておめでとうございます。
年明けの演奏会、大作ですね!!
しかも一年に一度の企画。熱の入ったものだったのだろなと。
素敵なレポートありがとうございます♪
ヘンデルは多作でオペラだけでもひれ伏してしまいそうな作品数。若いころから長い時代にわたって活躍したから、彼の作品群からバロックオペラの歴史が見てとれる巨きな存在なのだなとまるさんの記事を読んでいて思いました。いろいろ聴いてみたいです。国をまたいで活躍して各地を多く旅していたのも興味深いですし。
バッハと照らすと全く違うので面白いですよね。

ところで私の昨年のベルギーで行けなかったコンサートはコンセール・スピリチュエルの『メサイア』でした。チケットも買ってたのに悔しいです。冬の時期行くのはなかなか難しいですが、これはもうー本当にいつかリベンジしたいです。

今年も素敵な音楽と芸術に出会えますように。
本年もどうぞよろしくお願いします。
Commented by marupuri23 at 2016-01-15 22:47
miyaさん、ご訪問ありがとうございます♪
拙いレポートですが、読んでいただいてありがとうございます。ヘンデル愛が溢れていることだけは確かです(^^;)今回の演奏会、本当に一回きりとは残念。オペラの上演にもなかなか接することができないのが寂しいなと。3月のドレスデンのヘンデル・ターゲが(一週間でヘンデルのオペラ3本立て)羨ましい…(;;)バッハとの違いも面白いですよね、また違った魅力で聴かせてくれます。

ベルギーの悔しい想い出、本当に残念でしたね…。コンセール・スピリチュエルのヘンデルとあれば、きっと良い演奏だったことでしょう!しかも名曲《メサイヤ》ですものね。ニケのクラヴサン演奏は聴いたことがあるのですが、オケとは無いので…。私もフランス・バロックものとか、聴いてみたいなぁ。

miyaさんのブログにも素敵な記事が一杯!ですね、またコメントさせてくださいね。

こちらこそ、今年も引き続き楽しい交流ができますことを願っております。
どうぞよろしくお願いいたします。