イェスティン・デイヴィス カウンターテナー・リサイタル

それは、聴いていると、まさにラファエル前派の絵画たちが浮かび上がってくるような世界…。シェイクスピアの時代に活躍した作曲家、ダウランドやロバート・ジョンソンを始めとした歌曲リサイタルへ。
イギリス・ルネサンスの最盛期、シェイクスピアに代表される文学(演劇)に付随するように、音楽も見事な成果を残している。その代表が、ダウランドによるリュート伴奏付きの歌曲だ。リュートは、ルネサンスを代表する楽器の一つであり、絵画にもよく描かれているので、「ああ、あれか」と思う方も多いだろう。
私はリュートの、そのなんともいえない哀愁を帯びた音色にとても惹かれる。特にヴァイスの曲がお気に入り。

今回のプログラム、まずはシェイクスピアが所属した劇団の「座付き音楽家」である、ロバート・ジョンソンの歌曲から。R・ジョンソンは、シェイクスピアの戯曲にオリジナル曲を付けており、以前、シンベリンやテンペストに付けられた曲を聴いた覚えがあるなと…。
ここまでは、いかにも調和的なルネサンス歌曲の雰囲気だったのだが、ダウランドに移り変わると、開始のリュート・ソロから、一気にダウランドのラクリメ(涙)の世界へ。曲自体も、哀愁から憂鬱、最後はラクリメ(涙)に満ちていく…。

デイヴィスの歌唱を聴いて、今まで抱いていたダウランドのイメージが随分と変わった。いくらラクリメとはいっても、そこは「ルネサンス」という時代の中での表現と思っていた。だが、さすがバロックの歌い手である。
テキストの読み込みの深さからくる表現力の確かさによって、ダウランドがまさにルネサンス後期の作曲家で、バロックへの橋渡しをしているということが、まざまざと伝わってきた。

当たり前だが、時代は続いている。ルネサンスはバロックと繋がっているのだ。もちろんその後も…、そう、現代まで。それを実証したのが、最後のダウランドに続けて演奏された、エリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・へヴン」。なんの違和感もなく、400年前の音楽と現代の音楽が繋がり、私達の心にも熱いラクリメが流れ落ちる…。

その完成されたプログラムと、まさに歌唱と一体化していたリュート演奏にも、ブラボー!
[PR]
by marupuri23 | 2016-02-05 23:18 | コンサート | Comments(1)
Commented by desire_san at 2016-03-01 22:38
こんにちは。
ラファエル前派の絵画たちが浮かび上がってくるような世界というのはどんな世界なのか、興味深く読ませていただきました。私は『ラファエル前派 英国の夢』展を見てきて、ラファエル前派の絵にも多様性がありますが、象徴主義的な作品をイメージしてみましたが、いかがでしょうか。
私は『ラファエル前派 英国の夢』展を見て、『ラファエル前派 英国の夢』展から印象に残った作品について感想と画家の魅力、及びこの美術展を全体を通して考えたラファエル前派美術史的意味についても考察してみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。