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ベルリン古楽アカデミー~ヴェネツィアの休日(H28.6.27)

 ヴェネツィア…。それは今も昔も人々の憧れを掻き立ててやまない、煌めく水の都だ。幻想的な美しさに満ちた「アドリア海の真珠」から生み出されたバロック時代の音楽は、ヴェネツィアというイメージにふさわしい、艶やかさと煌めきを持ち合わせている。でも、ヴェネツィアが持っている世界というのは、それだけではないはずだ。須賀敦子さんのエッセイにもあるように、ヴェネツィアは演劇性と虚構とが入り混じった、そう、仮面こそがふさわしいカーニバルの町でもあるのだ…。
 
 ベルリン古楽アカデミーによるヴェネツィア・バロック・プログラムは、まるでカーニバルのように、様々に移り変わるその仮面を次から次へと鮮やかに見せてくれ、魅力的だった。
 ヴィヴァルディ《弦楽のための協奏曲》で見せてくれたのは、まさに水面にまぶしくきらめくヴェネツィア。その輝きに、うっとりと身を任せれば、現実を忘れてしまう…。
 カルダーラ《我らの主、イエスの受難》では、宗教心の篤い、信心深いヴェネツィアが顔を出す。ここでの重厚さ、対位法が際立つ曲においての表現力は、さすがのアンサンブルだと思わされる。
 アルビノーニの抒情性は、さながらゴンドラに揺られながら運河を進むような心持ち…。マルチェッロの哀愁は霧にかすむ幻想の中のヴェネツィアだ…。
 そして、アンコールのヴィヴァルディのチャッコーナ!ジャズ風アレンジで、さながらカーニバルのクライマックス、どんどん熱を帯びていき、まるで人々が踊りまくるような熱狂の渦の中で幕が閉じられた。これには驚き、観客も皆大喜び。アンコールを含め、なんともモダンなヴィヴァルディを聴かせてくれて、このアンサンブルにしか出せない色合いだろう。通奏低音がガッチリと機能しているのが(バロックでの要だ)、私の好みなので、そこがバツグンなのは嬉しい。
by marupuri23 | 2016-06-28 01:03 | コンサート | Comments(0)