オペラの故郷ともいえるヴェネツィア、その故郷を訪れ、現代に残る華麗なフェニーチェ劇場でイタリアオペラを観るというのは私の長年の夢だった。
今年はヴェネツィアに行こう(というか、行かねばならない、と思ってしまった)と計画を立てた際に、まず真っ先にこの劇場の上演スケジュールを検索。行けそうな時期に、ベッリーニ作曲《ノルマ》が上演、しかもマリエッラ・デヴィーアがノルマを歌う!…これでもう決まりだ。
ローマからヴェネツィアに到着後、サン・マルコ広場近くのホテルにチェック・インしてすぐに劇場へ向かう。開演時間が迫っていたため、美しい広場を横目で見ながら慌ただしく通り過ぎ、迷路のような路地を曲がった先に、その劇場は突然姿を現した。
劇場と言われなければあまりにもこじんまりとして、白亜の清楚な佇まい。でも、一歩入ればまさに劇場というほかにない、「醒めながら観る夢」に誘うような華麗な空間が広がっている。