ヴェネツィア式仮装

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 ヴェネツィアは劇場の町。ヴェネツィア自体がすでに劇場で、それにふさわしい舞台装置はすべて整っている。あとは、私たちが仮面を付けて、その舞台に上がるだけ。そのことを実感できるカーニバルは有名だが、当時から、なにも凝った衣装を用意しなくともよかったそうだ。

 塩野七生さんの『海の都の物語』に、わずかな出費で、簡単にできるという、伝統的なヴェネツィア式仮装の紹介が書かれているのだが、まさに「あ~これだわ」というものに出くわした。ヴェネツィアには仮面を扱っている土産物屋がたくさんあって、細い路地の、その店先にいらしたのだった。
 ...夜中の路地では、お会いしたくないなぁと。このシュールさに、ヴェネツィアらしい諧謔を感じるけれど…。

 この仮面は「ペストの医者」。ペスト患者を診るために医者が身に着けていた防護服だったそう。長い鼻の中には殺菌効果のあるハーブが詰められていて、丸眼鏡をかけ、肌をマントで覆い身を守っていた。
 ヴェネツィア対ペストの壮絶な様子は、町に残る建造物や絵画などからも強く感じるが、ここにも名残が…。しかし、不吉な衣装が、どうして仮装の定番になったのだろうか。

 『海の都の物語』には、これはあらゆる意味で、仮装の理想に近いと書いている。この衣装では、確かに男女の区別さえつかない。仮装という発想がここまで行きついてしまうとは、誰でも密かに抱く変身願望を体現する装置だ。知れば知るほど、驚異の町…。

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by marupuri23 | 2016-10-09 23:52 | イタリアへの旅  2016 | Comments(0)