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イザベル・ファウスト&クリスティアン・ベザイデンホウト 《オール・バッハ・プログラム》 H28.10.10

 私にとっての殺し文句、それは《オール・バッハ・プログラム》。そう銘打たれたコンサートがあると、「わぁ、いいなぁ」と瞬間的に胸が高鳴る。
 はいえ、演奏機会の多い無伴奏系(独奏)はあまり食指が動かず、かといって宗教カンタータや受難曲となると、その曲の性格から、ウキウキとコンサートを楽しみに行く雰囲気とは異なってくる。もちろん、聴けば心震える。自分が大病した時など、カンタータにずいぶんと慰められた。
 バッハの曲は「堅い(難い)」印象を与える音楽ばかりではなく、カンタータの中にも思わず耳を奪われてしまう美しい旋律の曲があるし、器楽曲も幅が広い。何より、バッハの紡ぎだす音の絡み合いに身を委ねる快楽は、バッハでしか得られない、特別なものがある。

 今回のプログラムは、ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタを中心としたもの。このソナタ集も各曲それぞれに個性的で、バッハらしい綿密な音のアラベスクが、デュオによる華麗な掛け合いで広がっていく。
 それをファウスト&ベザイデンホウトという名手2人で楽しめるなんて!これを聞き逃す手があるだろうか。

 チェンバロを弾いたベザイデンホウトはモーツァルトの評価が高いが、私は全く聴いたことがなく、今回が初めて。このヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集では、チェンバロはただの伴奏ではなく、ヴァイオリンと共にメロディーを奏で、かつ通奏低音も兼ねるという、時代を先取りした形式。演奏が難しいのは当然だが、エキサイティングな弾きっぷりに魅了されてしまった。
 ソロ曲のトッカータニ短調も良かったけれど、ソナタ第6番のチェンバロ・ソロの盛り上がりには、私も気分が高揚。もっと聴いてみたいなと思わせてくれる。
 ヴァイオリンのファウストは、曲ごとに弓を替えながらという研究熱心さが窺え、手堅い演奏だったが、もっと弾んでもいいような。バッハを聴く快楽を味合わせてくれる演奏に出会うのは、やはり難しい。

by marupuri23 | 2016-11-22 23:14 | コンサート | Comments(0)