ティツィアーノ《ピエタ》

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 アカデミア美術館で思わず心揺さぶられたティツィアーノ《ピエタ》。
 これはティツィアーノの遺作で、音声ガイドによると、キリストにすがりつくような老人(聖ヒエロニムス)は、ティツィアーノの自画像と思われるとのこと。死を意識し、自らのために描いた作品に、晩年の境地が痛いほどに伝わってきた。さらに感動的なのは、画面右下に描かれている小さな奉納画。これはペストからの救済を祈願しているティツィアーノ本人と息子だ。こうした思いは、今も昔も、そして国が違えども、人が抱く根本的な願いであることに変わりはない。
 こうして、最後は自らの人生に捧げるかのように、自らの人生をも一つの芸術作品とするかのごとく、創作へ向かい、生を終えようとする芸術家のあり方に、首を垂れる思いだ。
 そう、ルネサンス音楽の巨匠、ギョーム・デュファイも晩年のモテット《めでたし天の女王》で、自らの死を意識し「死がやってこようとも、どうかたじろかずにいられますよう、心安らかでいられるよう、神よ守り給え、デュファイを憐れみ賜え」と詩に織り込めた。
この《ピエタ》を見て、そのあまりにも清らかで美しいモテットが脳裏に蘇り、しばらくこの絵の前から離れられなかった。

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by marupuri23 | 2016-12-14 22:54 | イタリアへの旅  2016 | Comments(0)