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モンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》:コンチェルト・イタリアーノ(H29.6.5)

 初めて実演で接したモンテヴェルディの《Vespro》だった。
 なんということだろう、今になってこの曲の凄さを知ることになるとは、遅すぎた!その想いで今は一杯。この曲には、すでにバロック音楽の全てがある。バッハも、ヴィヴァルディもここから聴こえてくるではないか、まさにバロックの源。
 この曲は有名なので、昔CDでいくつか聴いていたものの、どうもピンとこなくて聴き込むことをしてこなかった。だから、今回はなおさら衝撃的。コンサートの後半は圧倒されてしまい、茫然としてしまった。

 確かに宗教曲。でも、これは「生」への高らかな賛歌だ。生きるということは美しく素晴らしい、その肯定感が力強い生命力を伴った音楽となって迸っている。

 「めでたし、海の星 祝福される、海の御母 永遠に変わることのない乙女にして 恵まれた天の門」、聖母マリアは母性の象徴でもある。この讃歌に浮かぶのは、やはりヴェネツィア(初演はマントヴァと推定されているが、その後ヴェネツィアでも演奏されたはずだ)。
 そう、この曲はいやがおうにもヴェネツィアを想い起させる。ヴェネツィアでは、昔から現在まで「海との結婚」が儀式として行われている。ドージェ(元首)は指輪を投げ入れ、宣言する「汝と結婚する、海よ。永遠にお前が私のものであるように」と。
 歌声のメリスマの揺らぎは、サン・マルコ寺院(聖堂 Basilica di San Marco)の黄金のモザイクの揺らめきを、そしてオルガンの響きは、夕日に照らされ艶やかに浮かび上がるサン・マルコ寺院のファサードを、祝祭に満ちる世界で最も美しい都市を、再び目の当たりにしたような感動を与えてくれた。

 見事にモンテヴェルディの核心を突いた音楽を創り上げた、コンチェルト・イタリアーノ。ありがとう、素晴らしかった!

by marupuri23 | 2017-06-06 00:59 | コンサート | Comments(0)