マックス・リヒター《3つの世界:ウルフ・ワークスより》

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 マックス・リヒターが英国ロイヤルバレエの新作《ウルフ・ワークス》のために作曲したもの。
 ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』『オーランドー』『波』をモチーフとし、小説ごとに曲が分かれている三部構成。

 私はウルフ『ダロウェイ夫人』には、それはもう心を強く揺さぶられて、感涙したほど(大好きだ)。書法としてはプルーストに似ているが、もっと繊細な表現で抒情豊か。女性ならではの息遣いが感じられるのが、また素晴らしく、想い出すと胸がまた熱くなってしまう。
 『オーランドー』は16世紀から生き続ける、男性から女性へと変化したオーランドーが主人公。設定がSFっぽくもあるので、近未来的なイメージが浮かぶリヒターの作風と小説とのコラボが最も嵌まっていた。主題は変容ということで、曲も《ラ・フォリア》(狂気を意味する)による変奏曲。想い浮かぶのはバロック時代の有名なコレッリ版だが、これがリヒターにかかると最新電子音楽による変奏曲へ。ヴィヴァルディの時もそうだけれど、こうしたアレンジは上手いなぁ。
 英国ロイヤルバレエの公演もライブビューイングで観たけれど、ウェイン・マクレガーのモダンな振付とぴったりで、凄い迫力。『オーランドー』映画版のDVDも(公開されたのは20年ほど前になるかと、昔映画館で観たのだった....)。
 『波』はウルフの自死を濃厚に予感させる曲となっており、波を感じさせる音の流れが不安を増幅させ、緊張感を高めていく。「再び自分が狂っていくのがわかります」というウルフの言葉。波が自分という存在を根底からさらっていくようで、ただ悲しい。

 ウルフを翻訳するのは、骨の折れる大仕事だと思うが、良さの伝わるいい訳で読みたいなぁと。最近出た『船出』も読みたいけれど、なかなか時間が取れないのが、困ったもの。

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by marupuri23 | 2017-06-20 23:02 | CD | Comments(0)