スペインの若きピアニスト、フアン・ペレス・フロリスタンのリサイタルへ。
 今年のMITO9月音楽祭のテーマは「natura(自然)」。コンサートごとに表題が付けられており、今回は《AL QUADRATO》。抽象的な題、絵画のような四角い空間を表しているのだろうか。
 会場に入ると舞台にはファツィオリのピアノが。どんな音色を聴かせてくれるのだろうかと、期待が高まる。
 プログラムはリスト、ドビュッシー、そして休憩を挟んでムソルグスキーの《展覧会の絵》とヘヴィーな内容(超絶技巧満載)で、まぁこれは大変(ドビュッシーを挟まなければもたないだろうな)と。
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 まずはリスト《巡礼の年 第2年:イタリア》から3曲。《婚礼》はラファエロの絵画をモチーフとしているが、その絵画は、まさにここミラノのブレラ美術館にある。ロマンの薫り溢れる曲と相まって、それを思うと胸が高鳴り、どうにかなってしまいそう。
 フロリスタンは手さばきもエレガントな、柔軟性に富むロマンティックなリストを奏で、またファツィオリがなんとも艶やかでくっきりとした響き。ヒューイットのバッハでのファツィオリとは全く異なる鮮やかな響きに驚く。そして、《物思いに沈む人》(こちらはミケランジェロ)を挟んで、In questo stato son,Donna,per vuiー悩める恋心を謳いあげた《ペトラルカのソネット104番》、まさにイタリアのアモーレ全開といったソネットで、プログラムにもしっかりとソネットが掲載されているのは素晴らしい。
 最前列にいた若いカップルがぴったり肩を寄せ合って聴き入っているのも、いいなぁ、と微笑ましい。こんな親密な空間で、恋人同士リラックスして聴けるクラシックコンサートなんて、最高ではないか(値段を聴いて驚くなかれ、5€。しかもこの演奏レベルを聴けるとは、日本の感覚では信じられない)。
 私の隣席のおばあさまは、熱心なクラシック音楽ファンのようで、休憩時間には来シーズンのスカラ座プログラムを凄い勢いで一枚ずつめくりながら〇×チェック(×は行かない舞台のよう)をしていた…。カーテンコールでは大喝采、満足されたようで良かった。

 そしてドビュッシーの前奏曲集から5曲。《亜麻色の髪の乙女》《オンディーヌ》《西風の見たもの》と、馴染みのある曲が続く。近代的和声のドビュッシーの世界を鋭い響きで表現。休憩後は大曲《展覧会の絵》、これは圧巻だった。ロシアの薫り…、本当にユニークな組曲。ここでのフロリスタンは、リスト&ドビュッシーとは全く異なった手さばきで、どっしりと芯の通った力強い音を立ち上げる。ギャラリーで実際に絵と対峙しているかのごとく、しっかりと各曲のキャラクターを表現。《リモージュの市場》の賑わいのくだけた表現も上手い。クライマックスの《キエフの大門》への盛り上げ方も迫力満点で、大喝采。
 ムソルグスキーは昨年に《死の歌と踊り》で度肝を抜かれたが、オペラ《サランボー》なんて聴いてみたかった。完成したのが《ボリス・ゴドゥノフ》だけとは、残念。
 

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