カテゴリ:美術展( 24 )

e0036980_23185773.jpg
展覧会のチラシを観てびっくり。
数年前から我が家で愛用しているピンクの南部鉄器カラーポット&ポット敷きが載っているではありませんか。これは観ずにはいられません。

南部鉄器400年の歴史を辿るというコンセプトで、江戸時代から現代に至るまでの様々な南部鉄器に接することができました。今まで知らなかった日本伝統工芸の美に触れ、改めてその良さを感じています。

南部鉄器は茶道の茶釜がルーツ、煎茶の流行により茶釜に注ぎ口と鉉(つる)をつけるようになったのが始まりとか。岩手県北部を治めていた藩主南部家が京都から鋳物師などを招いてつくらせ、特産品となりました。近代になると作家がこぞって海外の万国博覧会へ出品し、多数の作品が受賞しています。まさに「メイド・イン・ジャパン」代表格だったわけですね。

江戸時代のものは大きく重厚。職員技が映えて造形も凝っています。時代が進むにつれ、小型・簡素化し繊細な意匠が施されてきます。
ブルーノ・タウトが絶賛したという、昭和時代の「亀甲型鉄瓶」。小泉仁左衛門の手によるものですが、この飾り気のない素朴さ、いいです。

現代になると、様々な作家によるバリエーションに富んだ作品の数々が展示されており(灰皿やオーナメント、鍋など)、どれも個性豊かなもので、楽しませてもらいました。
中では十五代鈴木盛久 熊谷志衣子さんの鉄瓶、釜が繊細な造形で素敵でした。欲しいですね~。
[PR]
e0036980_2322823.jpg
東京藝術大学大学美術館で開催中(~7月7日まで)の 「夏目漱石の美術世界」展へ。

文学と美術の関係性に焦点を当てた面白い切り口の展覧会、それが国民的文豪の夏目漱石とくれば、期待に胸膨らみます。
とはいえ、漱石に初めて接したのは高校の授業での『こころ』、読んだのは取っ付きやすく面白い『坊ちゃん』『三四郎』ぐらい。『虞美人草』は昔から憧れの本でしたが、その文体に怖気をなし退却。そして展覧会前に慌てて『草枕』を読む、という何とも申し訳ない読書歴ですが、楽しみに行ってきました。

漱石自身が幼少の頃から絵画が好きで、南画や日本画に慣れ親しんでいたこと、そして英国留学で実際にヨーロッパ絵画に接して大きな影響を受けたことから、小説内にも多くの美術が登場します。こんなにも絵画から影響を受けているとは思いも寄らず、またそれだけに留まらず、同時代の絵画批評をし、自分でも文人画を描いていたことには驚きでした。

漱石が接したイギリス世紀末美術の影響がいかに大きかったか、また、絵画から受けたインスピレーションを小説に反映させていることが具体的に実感できてよかったです。
昔読んだ『坊ちゃん』にはターナー、『三四郎』にはウォーターハウスや同時代の画家黒田清輝をモデルとした人物が登場する、などいくつも美術に関するキーワードが散りばめられていたことに気づかされました…。これを機に、美術鑑賞も同時にできそうな、他の漱石文学も読んでみようかと思います。

展示は小説ごとにセクションを設けてあります。『吾輩は猫である』の装丁に始まり、『坊ちゃん』『夢十夜』『草枕』等々、小説を引用しながら関わりのある絵画を紹介しているので、分かりやすく楽しめました。展示の分量はかなりのもの、一回ではじっくりと見切れないなぁ、もう一度訪れたいとも思いました。

そしてお目当ては、琳派で(日本画の中でも)最も好きな酒井抱一による《虞美人草図屏風》。でも、なんとこれは漱石の想像上の抱一の屏風。『虞美人草』のクライマックスで登場する抱一の屏風を、現代の画家である荒井経さんが小説の描写に沿って再現したもの。
題名通り、虞美人草=ひなげしが銀屏に鮮やかに浮かび上がり、ヒロイン藤尾のように艶やかさと脆さを併せ持った美しさ。
小説では屏風が逆さに立てられ、亡くなった藤尾の傍にあったことを想像すると、まるで最後を彩るがごとく、藤尾に花が降り注ぐよう。
クライマックスにふさわしい演出で、漱石先生の美的センスは素晴らしいと、思わずうなってしまいました。

ほか、印象に残ったのは『三四郎』では「深見先生」となっている浅井忠のヴェニス風景水彩画。しっとりと落ち着いた色彩に、雰囲気のある佇まいの絵で、とても素敵でした。漱石も好意的に書いています。

展覧会は東京での開催後、静岡県立美術館へ巡回(7月13日~8月25日)となります。
[PR]
今年一年、皆様はどんな年でしたでしょうか。
私は、家族が皆元気で過ごせたことが何よりありがたいです。時に苦しいことやつらいことがあっても、健康で、好きなことを楽しめる。そうした環境を感謝しながら、年を越したいと思います。

その好きなこと、美術鑑賞について、簡単ですが振り返りとしてまとめてみました。
今年は美術検定2級に挑戦。勉強の甲斐あって無事に合格できました。
試験範囲はともかく膨大で、美術史はもちろん、博物館学まで含むため、全て覚えきれない状態でしたが、マークシート形式だったので、何とか救われた感じです。
来年は美術検定1級を受験しますが、こちらは論文形式…。合格率1割の狭き門ですが、頑張ります。

[今年見た展覧会]

1.ボストン美術館 日本美術の至宝
2.セザンヌ パリとプロヴァンス
3.エルミタージュ美術館展
4.ベルリン国立美術館展
5.マウリッツハイス美術館展
6.エリザベート展
7.バーン=ジョーンズ展
8.ドビュッシー、音楽と美術
9.リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
10.維新の洋画家 川村清雄
11.中国王朝の至宝
12.メトロポリタン美術館展
13.森と湖の国 フィンランドデザイン
14.マンチェスター大学 ウィットワース美術館所蔵 巨匠たちの英国水彩画展
15.シャルダン展ー静寂の巨匠
16.我ら明清親衛隊
17.はじまりは国芳ー江戸スピリットのゆくえ

e0036980_231271.jpg今年は海外有名どころの美術館が目白押し、名前を並べてみると凄いですね。

私のベストは「ドビュッシー、音楽と美術」展。クラシック音楽ファンにはたまりません。音楽と美術の繋がりに視点を当てた美術展が今後も続くことを期待しています。
自筆のスコアに感激。図録ももちろん購入、自宅でゆっくり読み込みたいのですが、時間が…(^-^;)


ボストン美術館のお里帰りした平治物語絵巻、尾方光琳、曽我蕭白は素晴らしかったし、中国王朝の至宝も目から鱗、川村清雄の作品にも感動。
フィンランドデザインも良かった。デザインの変遷がよくわかり、大変見応えがありました。シンプルで機能的で美しいデザイン。自宅ではフィンランド「イッタラ」の食器「ティーマ」を使っていますが、日本の食卓にも違和感なく馴染みます。
ほか、大好きなセザンヌに目いっぱい浸れたのが嬉しかった。
マウリッツハイス美術館展ではレンブラント《シメオンの賛歌》、バッハのカンタータが脳裏に蘇りました。この目で見れて感激。
メトロポリタン美術館展のミレー《麦穂の山:秋》で、初めてこの画家の凄さが理解できました。構図が絶妙で、こちらに訴えかける力の強いこと、凄い迫力。
またターナー《ヴェネツィア:サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂》にうっとり。水の都ヴェネツィアの煌めき。夢のように素晴らしい。

ターナーは「巨匠たちの英国水彩画展」でも水彩画をたくさん見ることができましたが、やはり色彩が本当に美しく、大好きな画家。セザンヌと同様に、私を幸福感で包んでくれます。
来年は回顧展があるので、今から楽しみにしています。
[PR]
e0036980_0381149.jpg
東京国立博物館平成館で開催中の 特別展「中国王朝の至宝」へ。
3か月に亘って放映されたNHKスペシャル「中国文明の謎」(3回シリーズ)とも合わせて楽しませてもらいました。

今、中国では次々と遺跡の発掘が行われており、新発見の品もたくさん出土しているとのこと。
今回の特別展では、その成果を目の当たりにすることができるのに加え、私にはあまり馴染みの無かった中国文化の流れを、多少なりとも体感できたことが大きな収穫でした。

美術検定のために、中国美術については日本と関連性の深い部分(仏教美術・唐や宋元の文物・明清の絵画)はざっと流れを見ましたが、なるほど日本がかつて遣隋使や遣唐使を派遣するなどして学ぼうとしただけのことはあると感心。絵画はまさに超絶技巧のオンパレートで凄い。
日本の弥生文化が始まるのはBC300頃ですが、中国の初期王朝(夏)はBC2000頃から、すでBC1500には見事な細工の青銅器が製造されており、日本と比べるともうそれだけで驚いてしまいます。

特別展では、その初期王朝の夏・殷・蜀から南宋までの文物によって、3000年に亘る中国文明の流れを辿ります。
中では、やはり紀元前の王朝の文物が、こちらの想像を遥かに超えた造形でダントツに面白いです。特に謎の王朝「楚」の文物は、珍貴ともいえるもので、霊獣と人がブレンドされたような像など、まさしく「謎」。
「これはいったい何でしょう?」と口あんぐり。縄文時代の土偶などに通じるものがありますね(土偶よりはるかに精巧ですが)。
またスケールの大きい文物も多数。身長180㎝にもなる兵馬俑の兵士俑や、楚の太鼓などの楽器も迫力があります。

国宝級が60%というのも納得の、中国の壮大な歴史の流れを実感できる文物の数々、目から鱗の展覧会でした。
[PR]
e0036980_16472856.jpg
江戸東京博物館で開催中の 「維新の洋画家 川村清雄」展に行って来ました。
ここ最近、美術検定の受験勉強に取り組んでおり、公式テキストにも目を通していますが、そのテキストでも川村清雄の名が挙げられているほどで、明治時代の美術では重要な画家の一人といえます。
ですが、どれほどの人がその名を聞いて絵を思い浮かべるでしょうか、近代化の流れの中で「忘れられた画家」といえるでしょう。
私も代表作《形見の直垂》しか知らなかったので、今回の大回顧展で川村清雄の全貌を知ることができると、以前から楽しみにしていました。

幕末から明治、大正昭和へと、激動の時代を生き、幕臣として徳川家達や勝海舟と密接な交流のあった人生自体も興味深いものですが(資料多数あり)、やはり見るべきものは絵そのもの。
その時代では非常にまれであった海外(アメリカ・フランス・イタリア)留学で、10年鍛え上げられた油彩画のテクニックは、本当に見事で息を飲みました。  
題材としては、長く滞在したヴェネツィアの風景から歴史的人物の肖像画、日本の滝や波濤などの風景画と様々ですが、どの絵を見ても感じられるのは、油彩画でありながら日本画のような色彩感覚、そして透明感と清潔感。
とても丁寧な仕上がりで、日本人特有の精緻な感覚が伝わってきます。

油彩の近代日本画(日本の題材を描いたもの)を見ると、どこか違和感を受けてしまうものが多いのですが、川村清雄の絵にはそれが全くありません。平安朝の御所車と従者を描いた《貴賤図(御所車)》なども、すっと自然にこちらに入ってきます。

「ああ、この人の絵は油彩という表現方法を用いた日本画なんだなぁ。日本人だなぁ。」と、失われた武士魂というか、一本筋の通ったものが伝わり、シャキッと背骨が伸びるような感覚になりました。
と同時に、最後まで油絵で「日本の美」を表現しようとしたその矜持には、心を打たれました…、久し振りに胸に熱いものがこみ上げた展覧会でした。
[PR]
e0036980_2335644.jpg初めて抱一の作品に接したのは、プライスコレクションでの「十二ヶ月花鳥図」だったと思います。
日本美のエッセンスが凝縮されたような抱一の世界に魅せられました。

高階先生の著作に、古来から日本人は「小さなもの」「愛らしいもの」「清浄なもの」に強い美を感じ、「否定(切捨て)の美学」を発展させてきたとありますが、抱一の画を観ると、まさにその通りと思います。

今回の展覧会の「十二ヶ月花鳥図貼付屏風」も本当に素晴しかったです。
たおやかで可憐、日本の四季折々の情緒美が並び、もう溜息しか出ません。日本人で良かったと感じる瞬間でもあります。
この世界を日本刺繍で表現できたら、どんなにかいいでしょう。

銀屏風の「紅梅図屏風」は゛さびたる美”というのでしょうか、金地とは異なる、きりりと締まった感覚が新鮮です。
蒔絵の下絵もありましたが、そのデザイン感覚は今観ても斬新。
抱一の弟子、鈴木其一の作品も見ごたえがありました。墨のみで描かれた「雑画巻」には驚き、筆さばきの見事さといったら!

e0036980_23492144.jpg生誕250年記念の別冊太陽。
きれいに作品が載っていますが、本物はこの何倍も何倍も美しい。
[PR]
先週、相方に「ミーハーだねぇ」と言われつつ、激混み状態のオルセー美術館展へ。
「セザンヌとセザンヌ主義」というセクションが設けられており、まとめてセザンヌの絵を見られるいい機会だから。

10代の終わりに出会ったセザンヌの《赤いチョッキの少年》(バーンズ・コレクション)には、強いインパクトを受けました。「普通の」肖像画とは違い、少年期の不安定さを感じさせる、ナイーブな内面が伝わる表情、そして独特の色使い。
「美しい」というのとは違う、でもなぜこのように訴えかけてくるのだろう…。セザンヌという画家の迫力を感じました。
その後、実際にオルセー美術館や日本の美術館でサント・ヴィクトワール山を描いたものや、水浴画、静物画も見ましたが、《赤いチョッキの少年》のようなインパクトは受けず…。
e0036980_23543834.jpg
そして3年前にセザンヌの故郷、エクス・アン・プロヴァンスを実際に訪れた時のこと。
ホテルのラウンジで朝食を摂ったのですが、そこにプロヴァンス産であろう、瑞々しいオレンジやプラムなどがぎっしり並べられていたのを見た時、ハッと気がつきました。
これはセザンヌの絵そのものだと。

セザンヌの静物画に登場する果物や野菜は、本当に生命感に溢れていて、太陽の光と恵みを感じさせてくれます。
今回の展覧会での《台所のテーブル》《たまねぎのある静物》も、壁の色から果物まで、なんともいえない魅惑的な色彩。

その色合いに、命の瑞々しさを感じて、しばし眩しいような幸福感に満たされることができました。
[PR]
e0036980_14333987.jpg

早速開催初日に足を運びました。
ボッスの後継者、ピーテル・ブリューゲルと、同・次世代の画家たちによる版画展。
寓意を描いた奇想な世界は、浮世絵の幽霊・妖怪画のように納涼を誘って、今の時期にはぴったりかも。

その細かさに目が痛くなったけど、面白さは抜群!図録をお買い上げ。
寓意画、宗教画が主ですので、読み解くには解説が不可欠。
図録の解説はかなり充実しており、これからもじっくり眺めて楽しめそう。
これで¥2,500とはお買い得です。
[PR]
e0036980_0452276.jpg春が待ち遠しい今日この頃…。ヨガレッスンで体をすっきりさせた後、念願の「国宝 土偶展」へ。

会場は平日水曜だというのに、大変な混みよう。
土偶は人気ありますよね、子供が見ても面白いのではないかと思います。
なんといっても惹かれるのは、その造型。
ひとのようでひとにあらず、いにしえの時代の祈りの姿が形となっているところに、心が捉えられるのです。時代は移り変わっていても、子供を産み育て、幸せと繁栄を願う気持ちは現代と変わりません。
それに我々日本人の祖先によって作られたものですから、なんだか自分のルーツを辿るような思い。

今回は国宝に指定されている3点の土偶が勢揃い。その中では、「縄文のヴィーナス」がやはり美しい~。後姿の神々しさ(ウエストからヒップにかけてのライン)にクラクラです。
土偶といっても、いろんなバリエーションがあって、形も様々。ハート形土偶さん、あなたは何を表しているの?こんなのを「きもかわいい」というのでしょうか…。
縄文人のセンスに、抽象美術の極を感じることもできたひと時でした。

帰宅後は、朝刊に掲載されていたホテルオークラのシェフによるミートソースが美味しそうで、レシピに添ってコトコト煮込んで完成。カブのグリーンサラダと一緒に、久し振りのパスタメニューでした。野菜たっぷりです。
相方より「味がしっかり馴染んでいて美味しい」と好評、良かった♪
[PR]
e0036980_21325588.jpg
いうことで、長閑な正月の午後に国立博物館へ。
目的は「新春特別展示 寅之巻」
なんといっても年女ですから(^0^)/ 

最もインパクト大なのが、岸駒による「虎に波図屏風」。
今にも屏風から飛び出してきそうな迫力!



歌川豊国、渓斎英泉ら浮世絵師による虎図も、独特の風貌で見ごたえ有。
特に渓斎英泉の虎は、なんともいえない個性を放っていて驚き。
魔性の虎とでもいいましょうか、エキゾチック。表現が「濃厚」です。

他、装剣金具の細やかさに感嘆。
よくこんなに細かく彫れますね…。
奈良利寿による「雨下猛虎図鐔」(重要文化財)もじっくりと近くで拝見。
日本の伝統的な彫金世界も、奥が深いこと。

計35点、寅尽くしの展示を楽しみました。
(「国宝 土偶展」も観たかったのですが、結構混雑していたので諦めました。
 また後日ゆっくりと♪)
[PR]