カテゴリ:日本伝統芸能( 20 )

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 この新作歌舞伎は、インドの叙事詩マハーバーラタを題材にしたとのことで興味を惹かれ、久し振り(二年振りぐらい)の歌舞伎座へ。インドは20代初めに訪れた際、その力強さと賑わい、美しさ(ピンク・シティのジャイプールが忘れられない)に感動したものの、体調をひどく壊してしまったのがトラウマで「ああ、ここで暮らすのは難しいかも」と再訪できないでいる。だが、大変魅力的な国。
 ヨガにも取り組んでいたので、マハーバーラタ、そしてその核をなすバガヴァッド・ギータ―は多少馴染みのあるものだ。これをどのように歌舞伎化するのか予想がつかなかったが、結果、活劇として大変面白く仕上がっており、予想以上に楽しむことができた(もう一度見たい!)。
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 序幕は上図のように、黄金に輝く神々がおわすヒマラヤ山の雲の上から。破壊神シヴァは青ではないんだと(アトリビュートはシヴァ神っぽい)、そういえば、バレエ・リュス展でインドを舞台にした《青神》があったなぁと思い出す。
 そして、絵の通りに地上の姫君も着物姿で「母なるガンジスが…」(!)と言っているので、初めは違和感があるものの、話が面白く舞台の豪華さも見事ゆえ、すぐに慣れてしまう。そう、これはあくまでも歌舞伎なのだから、間違ってもサリー姿などはありえないだろうと再認識…。額の「第三の目」であるビンディ飾りは、着物姿でも似合っていて素敵だった。
 ここでの神々は、ギリシャ神話の神々のようにそれぞれ個性的なキャラクターで、それぞれの思惑で人間を動かそうする姿も、また神話的。最後、帝釈天が「輪廻から解き放とう、永遠を与えよう」という言葉には打たれた。仏陀も輪廻はあると言っていたそうだ、解脱とは輪廻のくびきから解き放たれること、日本の仏教とも関連の深いインドの神々の世界に、改めていろいろと思いを馳せた公演だった。

※素敵だったのは鶴妖朶姫を演じた七之助!声もセクシーでうっとり。今回は美味しい役どころでもあったけれど、どんどん魅力を増している感じ。

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隅田川沿いの梅がちょうど見頃に。薫りに包まれる感じ。
 
 時はまさに梅の頃、能《梅枝》の鑑賞へ。
能について何か言うならば「100回観てから物申せ」とは白洲正子さんの言葉だが、やはり何かしらの感想を残しておきたいなと。オーディオガイドでの「歌舞伎は観て楽しむもの。能はやって楽しむもの」というのも、よく分かるが、日本文化のエッセンスがギュッと詰まったこの音楽劇は本当に魅力的で、それはやはり自分が日本人であるということに尽きるのだろう、身に沁み込んでいく親密感があり、故郷に戻るような懐かしさと安堵感を与えてくれる。

 音楽劇なので、その音に身を浸すのも別世界に誘われる体験なのだが、今回はシテの高梨さんの謡が、声自体にも深みがあってまさに「幽玄」な響き、うっとりしてしまった。どうしたら、人間ではないような、こうした声(優美で官能的でもあって…)が出るのかと不思議…。

 《梅枝》では、亡くなった夫への愛着心が強すぎて成仏できずに苦しんでいる妻が、執着を断つために懺悔の舞を披露する。夫の楽人が纏っていた甲と衣を身に着けて舞う姿は、装束の金色が映えて雅やかだが、夫への思慕を断ちがたいさまが、夫も奏でたであろう「青海波」や「越天楽」「想夫恋」などの雅楽の名にかけて謡われ、膝をついて涙にくれる場面は切ない。執念の生々しさを感じるものだった。

 詞章の「梅が枝にこそ 鶯は巣をくへ 風吹かばいかにせん 花に宿る鶯」は、越天楽今様の歌詞としてうたわれていたもののよう。今日訪れた隅田川の梅にも綺麗な黄緑色のメジロが数羽、蜜を吸いにきていて、ああこれが鶯であったなら、というのはメジロに失礼だな、と。

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二年振りに神楽坂の矢来能楽堂へ。
近年の神楽坂の変貌は目を瞠るものがあるが、すっかりこの辺りも様変わりしているのに驚く。
だが、この「矢来能楽堂」は国の登録有形文化財となっており、時が止まったような、今も昔も変わらぬ佇まい。ホッとする。
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今回の公演は、日本舞踊と能(半能)の二本立て。
日本舞踊というと、歌舞伎舞踊が思い浮かぶが、ここでは「素踊り」「男性のみ」「群舞」という新たな可能性を追求した創作舞踊を上演する<弧の会>によるもの。日本舞踊界の第一線で活躍中のメンバーで構成されており、それはそれは見応えがあった。
神楽坂にちなみ演目は『毘沙門』。毘沙門天を信仰していた上杉謙信の史実をからませた創りで、戦いのシーンなど、男性舞踊の力強さと迫力に満ちていた。毘沙門天を始めとする四天王の表現も、まるで生きた仏像を観ているような様式美に、思わず溜息…(とっても素敵だった)。
戦神と呼ばれる毘沙門天だが、戦の無残さに嘆き悲しみ、苦しむ場面も描かれていた。帝釈天に諭され、「戦えないもののために、己が戦う」と再び戦神となって立ち向かう姿には、胸が熱くなった…。
感動的だった、また公演があれば是非観たい。

鑑賞前に、神楽坂の毘沙門天にお参りしたのだが、ここは私にとって昔からのパワースポットである。
というのも、毘沙門天がお生まれになったのが、寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻で、私は寅年。つまり、私の守り神ということになる。ここは狛犬ならぬ、狛虎があって、寅年としては、もう嬉しくなってしまう。

その守り神のパワーのおかげで、上演後の抽選会では見事当たり!となり、能舞台へ上がって能と日本舞踊を体験するという機会に恵まれた(友人に譲ったのだが)。神楽坂、やはりいい街である。
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今年の舞台初めは、国立劇場の初春歌舞伎公演。
お正月に相応しく、鏡餅や羽子板、凧飾りで設えられた華やかなロビーに気分が盛り上がります。賑やかな獅子舞も楽しんでから客席へ。

曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』、尾上菊五郎丈を中心とした配役での上演。なんといっても江戸時代からのベストセラーですから、スト-リーも良く知られています。ですが、内容や演出は原作と従来の渥美清太郎本とは大きく異なっているとのこと。
菊五郎丈の監修で、全面的により華やかに楽しく色付けすることにしたそうで、場面ごとに四季感を出し、正月から桜の春、涼やかな夏の川辺、鮮やかな紅葉と背景が鮮やか。それに役者の煌びやかな装束と立ち廻りが加わり、まあ華やかなこと!お正月らしい、艶やかな公演でした。

尾上菊之助・松緑との「芳流閣」の立ち廻りは、若々しさの溢れる迫力の動き。菊之助はとても綺麗で、思わず見惚れてしまいます。八犬士それぞれの個性が、よく表れていたところも面白く、中村時蔵の舞、坂東亀三郎の相撲力士ぶりも楽しめました。
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プログラムの表紙もお正月らしく華やか。掛下帯で子犬と菊、水仙が刺繍されています。江戸時代のこうした刺繍ものは本当に凄いです。将軍家の掛け袱紗など、仰け反るぐらいの豪華さ(そして細かい…)。
一度はこうした図柄を写して刺繍してみたいものだと思いますが…。
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今日は休日ですが6時起き。
一ヶ月の中国出張に出発する相方を新型スカイライナーに乗せるべく、車で日暮里まで送りました。
自宅に戻ってからは、いつものごとく試験勉強。
午後はプールで1Km泳いですっきり。夕方に軽く食事を摂って、新橋演舞場へ(ここは初めてです)。
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前から一度観たいと思っていた「東海道四谷怪談」。

話としては、殺された後に化けて出てくるもの…と単純に思っていましたが、もっと複雑な人間関係があり、ストーリーが入り組んでいることが分かりました。

忠臣蔵と結びついているところが、ミソですね。





本来は全5幕のところ、時間の関係により場面がいくつか省略されていましたが、怪談ものならではの大仕掛けが満載!初めて観るので、特に楽しめたように思えます。
幽霊が燃える提灯の中から登場する「提灯抜け」にはびっくり!客席からも「わぁ!」と声が出ていました。
「戸板返し」はこれぞ本当のどんでん返し、1人2役の早変わりに拍手喝采。
「髪梳き」のすさまじさには、口あんぐり。

仕掛け以外にも、役者さん達の演技は見ごたえありました。
特に大詰めの仇討ちの場、海老蔵と勘太郎の大立ち回りは迫力。
海老蔵は伊右衛門をニヒルな悪党として、憎々しげに演じていました(色男ぶりは出ていましたが、もっと気迫がほしいような)。

それにしても、1人3役(お岩さん、小平、与茂七)の勘太郎は大変。
熱演で素晴らしかった。
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今日は宝生能楽堂へ。楽しみにしていた『西行桜』の鑑賞。春の季節にふさわしい、華やかな詞章が連なり、絢爛。でも、登場するのは桜の老木の精、華やかな詞章とは対照的に枯れた情緒をかもし出していて、対比の妙が効いていました。

世の桜はほとんど散ってしまいましたが、この舞台で、再び満開の桜を眺めて楽しむことができたような。お能で描かれる桜のなんと美しいことよ、春の夢とはこのこと…。
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e0036980_13403544.jpg文楽大夫の竹本住大夫さん、三味線の野澤錦糸さんによるCD,最新版の『心中天網島』に野澤さんのお名前をいただきました。父の友人の紹介で無理を言っていただいてしまったのですが、御両人のファンにとっては嬉しさ一杯。ありがとうございました。

今、お二人による『摂州合邦辻』が上演中で、私も先週鑑賞。今回は、住大夫さんでも体力的にかなり難しいものではないかとのことでしたが、最後まで気迫に満ちた語りで、人間の情を炙り出し圧倒的でした。三味線はこの義太夫節と一体化して、語りを盛り立てていくのですが、錦糸さんも激しい音色で、悲痛な場面をドラマティックに彩ります。

この文楽も、悲劇のカタルシスを強く感じることができます。オペラもそうですが、国は違えど根っこは共通するものがたくさんありますね…。
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e0036980_14757.jpg数ヶ月ぶりの文楽公演へ。一番の楽しみは「摂州合邦辻」竹本住大夫さんの浄瑠璃。2年前に始めて聴いて以来のファンです。今日の朝日夕刊にちょうどインタビューが掲載されていましたが、御年82歳!その声による表現力といったら、登場人物の見事な演じ分けはもちろんのこと、劇的なクライマックスの盛り上げ方、微妙な心理を描いていく鮮やかさ、本当に引き込まれてしまいます。
話自体は継母が義理の息子に恋をしてしまうという、まるでラシーヌ『フェードル』のよう。でも最後にどんでん返しが!結末はいかにも日本っぽくて、いいです。



「妹背山婦人庭訓」は、初めの華やかな道行シーンのみ鑑賞。吉田蓑助さんが操る、お三輪の舞、艶やかでした。昨年9月忠臣蔵での由良助も、忘れがたい名演だったと思います。
この話は一人の男性を二人の女性が奪い合うというもの、「摂州合邦辻」もそうした場面がありますが、女同士の戦いってスゴイ(@0@)。
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今日18時から、宝生能楽堂での鑑賞。狂言『武悪』は一時間ほどもある大作。ユーモアの効いた、ちょっとシニカルな感じの喜劇。立ち合いの派手な場面が多く、見せ場もたくさん。人間国宝の野村萬さん、やはり出てきただけで空気が変わります。重厚感が加わり、劇の厚みが増すんです。実演に接するのは3回目ですが、すっかりファンに (^-^)/

能『梅枝』は眠気に襲われてしまい、まさに夢幻の世界となってしまいました…。後半の舞になって目がパッチリ。能は見る側の器量がかなり問われるので(抽象的だし)、私にとっては遠い遠い世界です。嗚呼…。
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今日は午前中から美容院へ行き、カット&パーマ&染めをお願いしましたが、4時間もかかってしまいました(ストレートパーマは時間がかかります…)。その後すぐ歌舞伎座へ向かい、夜の部を鑑賞。先月に観た文楽版『仮名手本忠臣蔵』と比べてみたかったのです。
今回の歌舞伎座では『仮名手本忠臣蔵』の5、6段目のみ(先月の文楽では大序から最後の11段目まで、ほぼ全て上演していました)。

歌舞伎と文楽はそれぞれの味と見所があり、比べて観るものではないと思いますが、歌舞伎だとなんとなく物足りなさを感じてしまいました。それはなぜか、大阪では文楽を「見に行く」のではなく、「聴きに行く」というそうですが、語り物音楽である浄瑠璃を語る太夫と三味線の演奏によって話が進む文楽は、歌舞伎よりも音楽性が強い。そして私はこれが好き。オペラ(アリア)にかなり近いものを感じます。
太夫が聞かせどころを語った後に沸き起こる拍手は、ちょうどオペラ歌手が見事にアリアを歌いきった後に沸き起こる拍手と同様のものだなぁと。

『仮名手本忠臣蔵』後の『梅雨小袖昔八丈』は観ずにチケットを譲り、神保町の書店へ。来年受験の社会福祉士試験問題集を求めて帰宅。勉強せねば…。あれこれ観にいっている場合ではありませんが、今月はなんだかコンサートなどの予定が多いのです。これでは試験に落ちること間違いなし…。
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