先日、ベルリン古楽アカデミーの演奏で聴いたC.P.Eバッハ《オーボエ協奏曲》は、フリードリヒ大王の宮廷楽師時代に作曲されたもの。大王の好みも反映されているのだろう、優雅で華やか。宮廷の雰囲気と呼応している。
 画家メンツェルによる「サンスーシ宮殿におけるフルート・コンサート」(大王がフルートを演奏している)がよく知られているので、ベルリン時代の曲を聴くと、その画とサンスーシ宮殿がセットで脳裏に蘇ってくる。
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 昨年サンスーシ宮殿を訪れた際には、まさにロココ全開で腰が抜けてしまったが(^^;)、出口にあったのはフリードリヒ大王の肖像画。ん?なんだかウォーホルみたい??と思ったら、まさにそう…。ロココからいきなり現代に。でも違和感の無いこの感覚、好き。ピンクが効いてる(宮殿内もピンクやら黄色やら…)。
 ウォーホルの作品は、ベルリンのハンブルク駅現代博物館にコレクションがあり、たくさん観た。有名な作品しか知らなかったけれど、他にも洒落てセンスの良い作品がたくさんあるんだな、と。
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聖なる夜に向けて、ルーベンスの《聖家族》を。
秋に訪れたポツダムのサンスーシー公園。広大な園内に、プロセイン王家の絵画コレクションが展示されている絵画館がある。
豪華な装飾の館内に入ると、壁面がバロック絵画で隙間なく埋め尽くされていて、「鑑賞」という感覚が吹き飛んでしまう凄さに、頭がクラクラしてしまった。
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気を取り直して、絵画リストを見ながら行ったり来たり。大きな作品ではルーベンスが圧倒的に多い。バロック好きには嬉しいが、ここまでくると、どうしていいか分からなくなってしまう(^^;)
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シュターツカペレ・ベルリン(バレンボイム指揮)&アルゲリッチのベートーヴェンを聴いたベルリン・コンツェルトハウス。
壮麗なホールには、やはり胸が高鳴る。ホールの大きさも、私的にはベスト。演奏者の息遣いが聞こえるような距離と臨場感が味わえるのは嬉しい。
ホールの両サイドには、これまでのクラシック音楽の歴史を辿るように、作曲家の胸像が飾られている。左右を見渡すと、バッハから始まり、ヘンデル、テレマン、グルック、C.P.E.バッハ…と錚々たる胸像の迫力たるや…!
いくらバロック音楽が好きといっても、このようにバロックの巨匠たちに囲まれる体験をするとは思ってもみず、なんだかドギマギ…。
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私にとって最も親密な作曲家、ブラームスはどこ?と探すとホール後方にいらっしゃいました。よかった(^^;)
1階から上の階を見上げると、小さいサイズながらもドビュッシーやヤナーチェクの胸像が見えたりして、ドイツ系ばかりではないようなので、ホッとしたり…。
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思ったよりホワイエが狭く(皆さん体格がよろしいので、よけいに狭く思える)、休憩中は混み合っていた。中からの景色も雰囲気があっていい。…と思ったら、ジャルスキの特大ポスターが。ベルリンでも美しい声を聴かせているようだ。このホールで聴くのも最高だろう。
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Googleトップページによると、今日はベートーヴェン生誕450245周年(→友人から年が違う!とご指摘あり。ありがとう)。
私にとってのベートーヴェン…、10代の頃は先生に言われるまま《さらばピアノよ》《エリーゼのために》などを弾いていたのですが、自分の好みが出てくると、その後はショパンやブラームス、ドビュッシーなど、専らロマン派以降となり、ベートーヴェンの音楽に触れなくなりました。また、ベートーヴェンのイメージが、「これを聴け!」と押し付けがましいものに見えて、敬遠して…。ショパンを練習している隣の部屋から、ベートヴェンの劇的なピアノソナタが聴こえてくると、その強さに「だめだ…引き摺られる」と感じたり…。
ところが、自分が年を経たのでしょう、今聴くと、受ける印象がだいぶ異なっていることに気づかされます。その音楽に、とても心打たれるのです。心に響くというのは、こうしたことかなと思うのです。

この秋、ベルリンのコンツェルトハウスで聴いたのが、シュターツカペレ・ベルリン&アルゲリッチによるベートーヴェンのピアノ協奏曲2番でした。ベートーヴェンの初々しい瑞々しさと繊細さを感じられる曲(いいです)。
アルゲリッチの実際の演奏に接するのは、初めて。
昨年観た、アルゲリッチのドキュメンタリー映画「私こそ、音楽!」では、鋭い感受性で、心のおもむくままに弾く、まさに芸術家タイプとして描かれていましたが、実際に近く(5列目正面)から眺めると、おっとりと柔らかい雰囲気。
そして、ピアノの音色!今まで聴いた中で、最も暖かい音。音はクリアで、流麗この上ないのに、冷たさが全くない。心のぬくもりがそのまま伝わってくるような手触りで、癒されました。そう、「癒される」という感覚がぴったりの演奏。終了後の盛大な拍手に答えて、指揮のバレンボイムとの連弾が10分以上続くというアンコールでした。
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           ドレスデン・ゼンパーオーパー ホワイエの天井画
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クリスマスマーケット発祥の地と言われるドレスデン。9月の旅の終わりが、ここドイツ・バロックの都と呼ばれるドレスデンだった。ドレスデンのシンボルとも言えるゼンパーオーパーでの一夜は、劇場自体の美しさに舞台の素晴らしさが相まって、忘れがたい記憶となった。
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舞台が跳ねた後のゼンパーオーパーも、余韻を残すような佇まい。聴いていたワーグナーの音楽がリフレインし、オペラの夢が醒めてしまわぬよう、ゆっくりと帰路に向かう。
他の観客も同じ気持ちなのだろう、「舞台を観た後に、こうしてブラブラと街中を歩きながら帰るのは、最高だよ」という会話が。ここ古都ドレスデンでは、確かにそうだ。
またいつか訪れることがあるだろうか?戦火から蘇ったセンパーオーパーよ、さらば。
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天井画に描かれているのは、大天使に演劇の神のバッコス、オペラ《ローエングリン》《魔笛》?シェイクスピアの「リア王」、ゲーテの「ファウスト」と思われるシーンも。あとワンシーンが、なんだか分からない…。
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絵画館の後は、世界遺産でもある博物館島へ。
重量級の美術・博物館ばかり、全て観て回りたいが、絵画館だけでもかなり集中力を使ってしまった。
旧ナショナルギャラリーで、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒなどドイツのロマン派や近代絵画まで観る予定にしていたものの、もうすでに消化不良になりそうで躊躇…(フリードリヒはドレスデンでも観れると思ったのだが、叶わず残念。ゼンパーオーパーではワーグナーだったのに)。
夜の予定もあるので、気分転換にペルガモン博物館のみ観てホテルに戻ることにする。
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ちょうど大改修中(ここだけではなく、どこもかしこもという感じ…)で、大神殿は観ることはできなかったが、ミレトスの市場門が目の前に登場し、ここだけでも「わぁ~」と気分が高揚。
ミレトスって、あのギリシャの植民都市のミレトスでしょう、哲学の始まりの地…。
市場門だけでも、古代の交易十字路であったミレトスの壮麗さが思い浮かび、当時はエーゲ海の鮮やかさと相まって、それは見事な眺めであったろうと想像できる。地中海も…、海、水、…タレスの「水」だ。
古代世界が一気に再現される感覚、こうして具体的にイメージできるほどの展示は滅多にない。
古代への想いが搔き立てられる、来てよかった!
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絵画館を訪れた際、館内は2日後から開催される企画展「The Botticelli Renaissance」の準備真っ最中だった。
道理で、常設展に看板娘のボッティチェリが無いわけだ…(観たかったカラヴァッジョも無かったのだが)。
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「The Botticelli Renaissance」のパンフレットを見てみると、ボッティチェリはもちろんだが、好きなシンディ・シャーマンの作品がある!そのほか、マグリットやピカビア、ビル・ヴィオラ、日本のトモコ・ナガオ(初めて知った)まで近現代美術多数で驚く。
ボッティチェリは19世紀にラファエル前派によって再発見された画家だが、近現代美術に与えた影響は大きく、ボッティチェリのビーナスは一種のアイコンとなり、様々な解釈で表現されるようになっている。そうした歴史を辿るという内容で、とても面白そうな内容。
バーン=ジョーンズやロセッティなどのラファエル前派の絵画ももちろんあるが、パンフレットではデビッド・ラシャペルの写真がダントツのインパクトだった。

期間が合わず、観れなかったのは残念(こんな残念が今回は多かったのだけど…)。
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ベルリン絵画館のヴェイデンの中で、最も脳裏に焼付いたのが、この《ミラフローレスの祭壇画》だ。
十字架降下の傷ついたキリスト、血が流れ、なんと痛々しい哀れな姿よ。神聖さというよりも、生々しい人間の遺体にしか見えないむごさに、胸が詰まる。
そして、そのキリストを抱くマリア。これは、神としてのキリストではなく、無残にも殺された最愛の息子をひしと抱きしめている母の姿だ。その悲しみが痛いほど伝わり、絵のマリアと同様、私の目にも涙が溢れた。
写真ではよく伝わらないのが残念だが、マリアはもちろん、他の使徒の目にも悲しみの涙が溢れている。
画家も同じ気持ちでいたに違いない。ああ、この画が描かれてから600年も経つのに、なぜこんなにも強い感情が伝わってくるのだろうか。

ヴェイデンの画は、この時代としては考えられないほど、劇的な表現だということがよく伝わってくる。
いくら観ても見飽きないが、この後にはコンサートも控えており、他にも観るべきものはたくさんある。
後ろ髪を引かれる思いで絵画館を後にした。
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ベルリンの街中(特に駅)で、本当によく見かけたのが、このポスター。
クラシック音楽奏者とは思えないアヴァンギャルドな風貌に、思わず立ち止まり、まじまじとポスターに見入ってしまった。
キャメロン・カーペンター、初めて知るオルガニスト。フィルハーモニーのシュッケ製オルガンで、バッハを演奏するとのこと。ロックなお兄さんに見えるが、これでバッハを演奏するのか…。ぜひ聴いてみたかったが、日程はだいぶ先。残念だった。

帰国後、ベルリン・フィルハーモニーのデジタルコンサートの映像があったので視聴。プログラムはバッハ(無伴奏チェロ組曲プレリュード)から始まるのだが、本人のアレンジによってどんどん変容し、なんだか凄いことに…(^^;)なるほど、確かにロックな演奏!熱い。
いくらクラシック好きでも、オルガン曲となると特殊な部類に入ってしまうので、なかなか身近には感じられない世界。でも、カーペンターのエンターテイメント性豊かな表現によって、オルガンの音色の多彩さ、壮大さを存分に感じることができる。個性が溢れすぎているので、拒否反応もあるだろうが、オルガンの魅力が十分に伝わってくる演奏に感嘆。ブラーボ!
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ベルリン2日目。フィルハーモニーの下見も兼ね、すぐ側の絵画館へ。
好きなフランドルの画家、ロヒール・ファン・デル・ヴェイデンの作品がまとまってあるので、ここだけは外せない。ヴェイデンによる画を初めて観たのはボーヌだった。なんの前知識もなく、いきなり目の前に現れた《最後の審判》、観ているうちに「…これは凄い絵だ」と本当に度胆を抜かれてしまった。
ボーヌにこれを観るためだけでも行く価値は十分にある。絵からこんなに衝撃を受けることは滅多になく、強烈な印象だった。

《キリストの洗礼》で描かれているヴェイデンの天使。翼をよく見ると、表側に規則的な突起があり、羽自体は内側という独特の表現(その時代はこうした表現が標準だったのだろうか?)、これはボーヌの大天使ミカエルでも同様で、「ああ、やっぱりヴェイデンだ」と嬉しくなる。
色彩はなんとも繊細。ブルーの透明感がなんとも言えず美しく、「ヴェイデン・ブルー」と呼びたいほど。溜息が出る。

この日の絵画館は人が少なかった。ゆったりと好きな画に向き合うことができ、貴重なひと時を過ごせた。
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