カテゴリ:イタリアへの旅  2016( 34 )

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 ヴァティカン絵画館の入り口。博物館には世界中から観光客が集まってくるため、ともかく凄い人出で、入場予約をしないと待ち行列に並ぶことになる(同時期に行った知人は予約を忘れ、本当に2時間並んだとのこと)。今回は朝の9時半に入り、閉館時間まで見学していたので、丸一日がかり。金曜日だったので、夜間入場(夜11時まで開館!)も考えたけれど、サン・ピエトロにも寄らないと来た意味がないので、それは諦めた...。
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 ギャラリーで目を惹いたマルコ・パルメッツァーノをパチリ。かなり大型サイズ、彼独特のタッチ。色彩の鮮やかさと聖母マリアの高貴な佇まいに(硬質な表情がいい)、天使の羽や衣装の質感もなんとも言えない色合い。背景の情景も細やかに描かれており、素敵だった。

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絵画館前通路から望むサン・ピエトロ。どこも人で一杯...。

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―ヴェニスをその街にふさわしく愛する方法はただひとつ、その街にしばしば触れさせる機会を与えることであり、そのためにはぐずぐずとその街に居据わって長居し、どこかに飛んで行って、また舞い戻ってくることだ―『郷愁のイタリア』ヘンリー・ジェイムズ著/千葉雄一郎訳
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 ヘンリー・ジェイムズは私の好きな作家。私も実際にここを訪れて、彼が愛したヴェネツィアの面影が、今でもそのままに感じられるのは嬉しかった。ヴェネツィアでは、夜も音楽鑑賞のため出歩いていたので、必然的に3日間とも22時過ぎまで街中を横断していたことになる。
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 こうしたメインストリートは夜でも艶やかで、雰囲気を十分に味わうことができるのだが、私の泊まっていた宿はサン・マルコ広場の裏手にあり、迷いやすい場所。夜になると、細い路地が入り組んでいるため、位置が分かりにくくなり、人っ子一人いない薄暗い路地(しかも一人がやっと通れるぐらいの狭さ)をドキドキしながら駆け抜けることが数回あった。
 でも、そうした迷宮的なところこそ、今まさにヴェネツィアにいるのだということを実感した瞬間でもあった。ボーッとオレンジのライトで照らされている誰もいない狭い路地と、小さな橋のかかったいくつかの運河を超えて宿に戻るのだ。
 ヘンリー・ジェイムズの言う通りに、いつか、あの迷宮へまた舞い戻ってきたい。

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 今回のイタリアの旅では、美しき女性の聖人にたくさん出会うことができたのだが、ヴェネツィア・アカデミア美術館でのジョヴァンニ・ベッリーニの女性像には、一目で心を奪われてしまった。数百年前とはとても思えない、最近描かれたような新鮮さには、驚きすら感じる。
 この《聖会話》では聖カタリナの真っ直ぐな瞳と、乙女の初々しいさを感じさせる描写にうっとり。
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そして聖母子。こちらはまだ初期ルネサンスの硬質さが感じられるところがいいなと。
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サンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂前から見るカナル・グランデの眺め
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 ヘンリー・ジェイムズは、この聖堂を「サロンの敷居に立つすばらしい淑女のような姿」「サルーテ教会はかつて画家たちが語ったよりも一層豊かであり穏やかで、扉口も落ち着いて見えるのだが、丸屋根に渦巻型の装飾があり、扇型の控え壁と彫像群がはなやかな王冠をなしていて、広い階段がさながらローブの裾のように水面に達している。この絶世の美女のような風格…」と褒め称えている。
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 中の空間は思ったよりも広々。この主祭壇はロンゲーナが構想し、ジュスト・ル・クールが制作したもの。ほか、ティツィアーノやティントレットの名画もあるが、今回は観れず残念。

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 カ・レッツオーニコと同様に、ロンゲーナが手掛けたサンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂へ。
 「サルーテ」は健康という意味、乾杯の際にも「サルーテ!」と言うので覚えやすい名前。この聖堂はヴェネツィアの景観には欠かせないもの。
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 アカデミア橋から見る聖堂の姿は、まさにヴェネーツィア。外観は白いイストリア産大理石で作られ、聖母の被る王冠を表しているそうだが、本当に優雅な女王の風情。

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 カ・レッツォーニコは、ジャンドメニコ・ティエポロとピエトロ・ロンギの美術館といってもよいほど、作品が充実。特にピエトロ・ロンギのこじんまりとした各画面には、18世紀ヴェネツィアの風俗が愛らしく、ユーモアをこめて描かれており、微笑ましい気分になる。
 その人物の描き方はどことなくカルパッチョを連想させ、またカルパッチョと同様に、まるでおとぎ話のような、非現実的な印象があって、それがまたヴェネツィアらしい。
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 絵の中でヴェネツィアらしさを強調するもの、それはなんといっても「仮面(バウタ)」だ。それぞれが仮面を被った演者で、秘密めいた何かを隠しているよう。ゴルドーニの世界の絵画版というのにも、納得。
 この都市は、やはりどこまでいっても劇場の延長線上にある。

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 カ・レッツォーニコの見学コースは2階の舞踏用ホールから。クロザートによる、だまし絵的(トロンプ・ルイユ)な天井画がいかにもバロック的。天井だけでなく、壁面もそのような設えで、なんともいえない華麗な空間となっている。
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 中国の陶磁器の見せ方が、こちらでは考えつかないないようなもので、ヨーロッパ的なものとの強引な融合に「…凄い」と。
 一昨年ドレスデンでも、日本&中国の陶磁器コレクションと、マイセン(初期の初期のもの)をたくさん見たけれども、それは美への執念が感じられるものだった。お互い、持っていないものに憧れるのは同じだなぁ。

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 ヴェネツィア・バロックの建築家、ロンゲーナによるカ・レッツォーニコへ。
 邸館を正面から眺められなかったのが残念だけれども、内部は1700年代ヴェネツィア博物館となっており、当時の雰囲気をうかがい知ることができる。
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 邸内ホールに一歩足を踏み入れたとたん、豪華な室内装飾に驚愕。フェニーチェ劇場や規模の大きいドゥカーレ宮殿とは違って、住まいの場としての華やかさに満ちている。
 色も鮮やかなヴェネツィアン・グラスのシャンデリアに目が釘付け。ここはオテル・ダニエリかと思ってしまう。ヘンリー・ジェイムズ『鳩の翼』のミリーが借りたパラッツォもこんな感じだったのだろうかと…。
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 ―「パラッツォー・レポレルリは、飾り付けをした極彩色の厳めしい偶像のように、いまだにその大きな膝の上に過去の歴史を抱いていた。この宮殿で絵画や骨とう品に取りかこまれ、崇拝され奉仕されているのは、豪華なヴェニスの消し去ることのできない過去だった」— (『鳩の翼』青木次夫 訳より)
 そう、ヴェネツィアは過去の豪華さを、まだ切なく留めようとしているような雰囲気があり、過去に沈む都市というイメージが、私にとっては強い魅力の一つだ。その運河や音楽、絵画全般にノスタルジーを感じてしまう。

 ここはカナル・グランデに面しており、ヴァポレットも泊まるのだが、信じられないほど見学者が少なくて、ゆったり過ごせる。絵画を含めた展示品も見ごたえがあって、思った以上に楽しめる博物館。
 

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 聖夜が近づいているので、アカデミア美術館で印象に残った聖母マリアを。くっきりとした線で描かれた初々しいマリアは、鮮やかな色彩が際立ち、この時代としては(15世紀)驚くほどモダンな印象。厳かな雰囲気と華やかさが同居し、生き生きとした画風に心惹かれる。
 ヤコポ・ダ・モンタニャーナはパドヴァの画家。ジョヴァンニ・ベッリーニの弟子で、アンドレア・マンテーニャからの影響が強いとのこと。マンテーニャと似ていなくもないな、と。
 ヴェネツィアの華麗なゴシック邸宅カ・ドーロ(フランケッティ美術館)にあるマンテーニャ《聖セバスティアヌス》は美術館の目玉だが、今回は行けず残念。美術館は2つしか見ることができなかったので、悔いが残っている…。またの機会に。

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 ヴェネツィアはどこを撮っても絵になる所だが、やはりカナル・グランデ(大運河)のある風景が、これぞ「ザ・ヴェネツィア」だろう。
 アカデミア美術館の目の前がカナル・グランデで、観光客を呼び込むゴンドラが待機しているのだが、この雰囲気がまたロマンチック。思わず乗りたくなってしまうけれど、いやいや、一人でゴンドラに乗っても仕方なし(夫は日本でお留守番)。
 夫へのお土産に、このゴンドリエーレの縞々公式ユニホームを求めてきたが(聖マルコの象徴、有翼の獅子ワッペンが付いているエミリオ・チェッカートのもの)、「え~」と言われてしまい、まだ袖を通してくれていない…。いえ、素敵なんですよ!(と、私は思っているが)。
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 アカデミア橋からそのゴンドラを見ると、こんな感じに。
 ヴェネツアィアの見どころは最低3日あれば、だいたい観て回れると聞いたけれど、4日間でも全然観きれなかった。パドヴァにも行きたかった、ヴィツェンツァにも…、と欲はどんとん広がってしまう(いけない…)。3ヵ月経った今でも、ヴェネツィアの余韻から醒めそうになくて、困ったものだ。

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