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待ちわびていた、ジェーン・カンピオン監督の最新作。

エンド・ロール後、隣の観客が「久し振りに美しい映画を観た気がする」と感想を洩らしていたが、同感。
ロマン派詩人のジョン・キーツを媒介にして描かれる恋人ファニーの物語。どこにでもいる普通の少女が、キーツと出会い、初めて「恋」というものを知る。始めはいかにも少女の恋、恋をしている自分に酔ってしまうような夢見心地。それが時と試練を経て、ファニーも成長を遂げていく、恋から愛へ、そして愛し続けること。

プラトニックな愛、2人は最後までそっと唇を重ねるだけ、でも2人が手を絡ませるシーンのなんと官能的なこと!
この表現こそカンピオン監督の骨頂倶、女性監督ならではの感性。

キーツ役のベン・ウィショー、《パフューム》でも印象に残る主演だったが、ここでも繊細さと内面の複雑さを見せる詩人役がぴったり。線は細いのに、独特の存在感を放っている。次回作のジュリー・テイモア監督《テンペスト》のエアリエルをぜひ観たい!

映像はどこを切り取ってもヨーロッパ絵画のように美しい。当時の再現に最も腐心したというだけある。
そして衣装!アカデミー賞衣装デザイン賞に4度ノミネートされているパターソンが製作。
リネンの風合いの心地良さそうなワンピース、オーガンジーの繊細なブラウス、シルクの舞踏会用の華やかなドレスと、どれも主人公ファニーの手によるファッショナブルな衣装で、女性にとっては溜息もの。
現代でも十分通用しそう(だから色彩やデザインに少々違和感があるのだけれど)。

音楽がまた秀逸。キーツと同年代(25歳)のブラッドショーが作曲。テーマ曲は男声合唱の通奏低音にボーイ・ソプラノらがメロディーを重ねていくもので、グノー=バッハのアヴェ・マリアを思い起こさせるような美しさ。
大好きなバッハの平均律第1巻ハ短調(BWV847)が使われていたのも、嬉しい驚きだった。
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