国際バッハコンクールのオルガン部門で、冨田さんが日本人として初めて1位になったとのこと。審査員から「バッハの音楽の力を感じさせてくれた」と最高の褒め言葉。冨田さんはこれから指揮やアンサンブルも極めていきたいとのことで、日本での演奏も楽しみにしている。

 最終審査で演奏された《パッサカリア》は、先日コープマンでの演奏でも実際に聴いたばかりだが、バッハのめくるめく壮大で無限的なアラベスクの世界に鷲掴みとなる、バッハを聴く醍醐味が詰まった曲。オルガンによる演奏は、音がそのまま天に直接繋がっていくような、宇宙的な広がりを感じさせる。
 バッハの「音楽の力」、私はバッハの音楽はとても「強い」と思っている。その強さが、音楽を信じるということの拠り所にもなれば(感覚をニュートラルな状態にしてくれる)、自分が弱っているときは、その強さに引き摺られてしまうこともある。
 …確かなのは、バッハの音楽は私にとって欠かせないということ。その存在に、感謝している。

 ALL OF BACHのサイトで、先週アップされた佐藤俊介さんのヴァイオリン・ソナタもいい。このBWV1016の第1楽章は、まるでコレッリだ。イタリア風の流麗さが際立つ。第4楽章はバッハらしい生き生きとした溌剌さがあって楽しい。エマヌエルとの関連も言及しており、インタビューでも大活躍だ。

 

 そして、こうしたブランデンブルクを実際に聴けたら!いつもながら「バッハはこうでなくては」と思わせる鮮やかな演奏。あの細かなバッハのパッセージを、一音一音クリアに響かせる技術の確かさ(これは大変難しいことだと思う)、その技術があってこその、自由自在な即興性のある装飾の美しい流れにはうっとりだ。センスが本当にいい。バロックらしいパッションもよく伝わってくる。
 佐藤俊介さんの演奏を、今年は実際に2回聴くことができたが、日本でもバッハのアンサンブルをぜひ聴かせてほしい。


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ヴェネツィア・アカデミア美術館で開催中の企画展「アルド・マヌーツィオ」展。大好評につき7月31日まで会期延長とのこと。

 「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展が開幕、アカデミア美術館のマリーニ館長による講演会へ。
 館長に就任してからまだ7か月ということで(バッサーノが専門だそうだ)、「皆様の方が、よくご存じかもしれませんが…」と笑いを誘うジョークなども交えつつ、美術館の歴史やコレクションの紹介、そして改修後の展示状況について、映像を見ながら詳しい説明を聞くことができた。
 さらにヴェネツィア派が生まれた背景やその特徴、そして後世への影響までといった幅広い内容を含んでおり、美術の素人の私にも分かり易い説明で納得。
 また、コレクターを通して読み解くことも可能という視点には、歴史の深さを感じる。ドメニコ・グリマーニ枢機卿が最も有名なコレクターだそうで、ボス(フランドル絵画)を3点も所蔵しているとは初めて知った。ヴェネツィアでボスが観れるなんて、「へぇ~」と感心…。ヘンデルのオペラ《アグリッピーナ》の台本もまた、グリマーニ枢機卿(ヴィンチェンツォ・グリマーニ)だった。このオペラは台本がとてもよくできていて、だからストーリー的にも面白いのだけれど、いやさすがの家系だと、また感心。ヴェネツィアのグリマーニ家は、当時、劇場を所有していたので、オペラとの繋がりも当然深い。

 「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展自体は未見だか、同会場の「ルノワール展」よりもまだまだ空いている印象。混雑を避け、東京の夏の最中、イタリア旅行気分で(^^;)ゆっくりとヴェネツィアの色彩を味わいたいと思う。
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 Sospiri d'Amore~愛のため息~とは、いかにもカヴァッリにふさわしいタイトルだ。
 カヴァッリの甘美な旋律を存分に味わえそうな、ヴェネシアーナ(古楽アンサンブル)の新譜。届くのが楽しみ。CD紹介の映像があり、収録1曲目の"O luci belle”の抜粋を聴いたが、これも心のひだに溶け入るような甘やかさ。カヴァッリによるデュエットも本当に素敵…。指揮のカヴィーナが、もううっとりと音楽に囚われている様子なのが微笑ましい(分かる~)。



 アラルコン指揮のカヴァッリと比べると、器楽アンサンブルはあっさり。アラルコンとは収録曲が被っていないようなので好し。
 ヴェネシアーナは実際に聴いたことがあるのだが(目白バ・ロック音楽祭にて、随分前だ…)、この時の演奏は強烈だった。あのモンテヴェルディ!カヴァッリ・プログラムで来日していただけると嬉しい…。
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 先日はベルリン古楽アカデミー風ヴェネツィアの休日を味わったが、私がヴェネツィア・バロックと聴いて思い浮かべるのが、まずヴィヴァルディとカヴァッリの音楽だ。
 アラルコン指揮によるこのカヴァッリ(CD)は素晴らしいとしかいいようがない。初めの一音の響きから「ああ、これはヴェネツィアだ…」と、アンサンブルの紡ぎ出す音に陶然となってしまう。このたおやかで、情感に溢れた官能性は、まさにイタリア・バロックの真骨頂。カヴァッリの音楽が美しさに満ちているのはもちろんだか、またこうして新鮮な演奏によって現代に甦るのは嬉しい限り。

 カヴァッリのオペラを年代順に並べて、各オペラごとに抜粋するというスタイルで作られている。
 ヴェネツィアのサン・カッシアーノ劇場(史上初の公開オペラ劇場、1637年開設)で上演された《テティとぺレオの結婚》(1639年)がデビュー作で、そのオペラのヴィーナスのアリアから始まるのだが、「始めの一音から…」と書いたように、思わず「わぁ…」と溜息が出てしまう。歌い手とアーチリュート、テオルボ、オルガン、ガンバ等々10人程度のアンサンブルでの演奏だが、豊かでなめらかに歌われるカヴァッリの世界に惹きこまれる。
 ヴィーナスのアリアの歌詞は、ちょっと驚いてしまうほどセクシーで直接的な表現(かなり大胆。「私にキスを…、私の体に触れて…」。台本はO・Persiani)。さすが、ヴェネツィアだ…。
 あらゆる階層を対象としたという公開オペラ劇場ということからか、師であるモンテヴェルディのオペラをさらに大衆向けに推し進めたような雰囲気があり、また、音楽と劇とが自然に、密接に結び付いているところも魅力(アリアとレチタティーボの境目が曖昧)。
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