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 今年、日本イタリア外交関係樹立150周年記念の事業が多く催されていることは(展覧会ではカラヴァッジョやポンペイ壁画、メディチ家の秘宝、モランディ…等々)、ご存知の方も多いと思うが、ではイタリアで日本側がどのような紹介をしているのかということは、あまり知られていないのではないだろうか(もちろんHPを見れば、概要を知ることができるが…)。

 この夏に、ローマで大々的に日本仏像展があったということは知っていたが、イタリア各地で能楽公演が催されていることは知らず、今回ヴェネツィア行きを決めてから、ゴルドーニ劇場で公演があるんだと…。
 ほか、ローマのアルジェンティーナ劇場(ナヴォーナ広場へ行く際に通ったので、あそこかと)、フィレンツェのペルゴラ劇場、ヴィチェンツァのテアトロ・オリンピコ(パッラーディオ!行きたい)にて演目を変え公演を行っている。本格的な能楽公演は約二十年振りとのこと。

 チケット購入時には、結構空席が目立ち心配していたが、開演時にはプラテア(平土間)は満員、パルコ(2階以上)はボチボチといった感じで、ひとます安心。
 日本人は、関係者を除いては現地にお住まいといった感じの方が数名で、日本人観光客などは私ぐらいだったのではないかと思う。印象的だったのは、若い方が随分と多いということだった(学生さんだろうなと)。
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 かのゲーテが、ここヴェネツィアのゴルドーニ劇場(当時はサン・ルーカ劇場)を訪れ、実際にゴルドーニの舞台に接し、「これで私も喜劇を見たと公言することができることとなった」と書き残しているそうだ。
 ヴェネツィアの劇作家ゴルドーニは私のお気に入りで、オペラの台本作者として初めてその作品(ハイドン《月の世界》)に接したときには、もう度肝を抜かれてしまったほどである。その笑いのセンスは現代でも十分に通じるものがあり、数年前には三谷幸喜も取り上げている(この舞台も笑えた~)。ゴルドーニは、オペラの台本作家としても優れた手腕を発揮しており、そう、いつか、同郷の作曲家ガルッピと組んだオペラ《田舎の哲学者》を観たいな…。ガルッピの音楽も楽しくて洒落てて、(ブッファ!)好きだ。
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 だから、ヴェネツィアを訪れた際には、ぜひここも訪れて、できればゴルドーニの作品を観たいと思っていた。実際に行くことになり調べたところ、ちょうど、ゴルドーニの代表作「二人の主人を一度に持つと」がかかっている!演出上もコンメディア・デッラルテ(即興的な仮面劇)の形式を踏んでいるようで、これは必見、と勢いづいたものの、上演日程があわずに断念…。
 しかし、なんと能楽公演(こちらも仮面劇だ)があり、外国での上演を観る機会はそうはないだろうと、事前にチケットを購入。フェニーチエ劇場での公演後に、ゴルドーニ劇場へ向かうという、まさかのダブルヘッダーとなってしまった。
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 ベッリーニによるオペラ作品は、ベルカント(美しい声)・オペラとも呼ばれるように、「声の芸術」にたっぷりと浸れる歓びに満ちている。ソプラノ・メゾソプラノ・テノール・バスと各ソリストの名人芸ともいえる声の饗宴が繰り広げられ、流麗でありながらも、イタリアらしい情熱が全面に押し出されたオーケストレーションも本当に魅力的だ。
 私はベッリーニの《ノルマ》と《カプレーティとモンテッキ》(これはヴェネツィアが初演だった)が特に好きなのだが、なかなか日本では上演されないのが残念。しかし、今月はこれらの作品を日本とヴェネツィアで聴けるという、またとない機会だった(が、日本での《カプレーティとモンテッキ》は旅行前の過密スケジュールでどうしても聴けず、無念。これを逃すともう一生、舞台で見れないかも…)。 
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 デヴィーアの声、高音域の煌めきは今なお健在で、目の前にキラキラと金の粉が舞い落ちてくるような感覚になる。年齢を考えると、今このへヴィーな役柄に挑むとは、驚異以外の何物でもない(いや、だからこそ今、と思われているのかもしれないけれど)。舞台姿も信じられないほど美しくて…。
 ベッリーニによる、ソプラノとメゾソプラノの二重唱は、もう息を呑むほどの美しさで、間違いなく聴きどころの一つだが、メゾのロクサーナ・コンスタンティネスクとの相性もぴったりで、若々しいコンスタンティネスク(声はダークで好み)とベテランのデヴィーアによる対比の妙も、十分に魅せてくれた。(コンスタンティネスクは今年の東京・春・音楽祭で聴いているのだが、あまり記憶が無く…)

 そして素晴らしかったのが、オーケストラ!指揮はダニエーレ・カッレガリ。序曲からベッリーニを聴いたという実感が沸き上がった。躍動感に溢れた堂々たる出だしに、これからの壮絶なドラマを予感させる緊迫感を併せ持っていて、それがいかにも「オペラ」の序曲にふさわしく、中間部分のハープを交えて奏でられるメロディーの甘美なこと…。この甘美な流れにうっとり、天上からのメロディーのように思え、溜息。このメリハリの鮮やかさに、感心しきりだった。
 歌が入ってくると(特にデヴィーア)、そちらに合わせる形になってしまうのは、まあ当たり前だろうが…。なんといってもベルカント・オペラだ。
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 長丁場の作品だが、夢中で聴いているうちに、あっという間に終了してしまったような感覚。華やかな劇場とともに、忘れられない一夜となった。
 劇場を後にする際に、近くにいた方に感想を聞かれ「デヴィーアは素晴らしい」と口にしたところ、「そうだね」と盛り上がり、傍にいたイタリアマダムが(私は英語がしゃべれないとおっしゃっていたが)、うなづいて「ブラヴィッシマ(...だったと思う)」と言っていたのが、印象に残っている。国や言葉は違っても、こうして分かち合える感動がここにあることが、また嬉しかった。
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 オペラの故郷ともいえるヴェネツィア、その故郷を訪れ、現代に残る華麗なフェニーチェ劇場でイタリアオペラを観るというのは私の長年の夢だった。
 今年はヴェネツィアに行こう(というか、行かねばならない、と思ってしまった)と計画を立てた際に、まず真っ先にこの劇場の上演スケジュールを検索。行けそうな時期に、ベッリーニ作曲《ノルマ》が上演、しかもマリエッラ・デヴィーアがノルマを歌う!…これでもう決まりだ。
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 ローマからヴェネツィアに到着後、サン・マルコ広場近くのホテルにチェック・インしてすぐに劇場へ向かう。開演時間が迫っていたため、美しい広場を横目で見ながら慌ただしく通り過ぎ、迷路のような路地を曲がった先に、その劇場は突然姿を現した。
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 劇場と言われなければあまりにもこじんまりとして、白亜の清楚な佇まい。でも、一歩入ればまさに劇場というほかにない、「醒めながら観る夢」に誘うような華麗な空間が広がっている。
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 初めてのイタリア、ローマ&ヴェネツィアへ。今回の旅は、まるで初めて海外旅行に行くような高揚感に満たされていて、出発前からすでに胸がドキドキ。この高まるドキドキ感は、いったいどこからくるのだろう?
 一度は行ってみたいと思っていた憧れの地。ガイドブックを開くたびに、その煌めきにクラクラしていたけれども、実際は想像していたよりもさらに美しかった。
 
 トーマス・マン(『ヴェニスに死す』)は、陸路から列車でヴェネツィアに入るのは、一つの宮殿の裏口からはいるのにひとしいと…、人はまさに、船で大海を超えて「都市の中での最も現実ばなれのしたこの都市」に到達すべきだ、と書いている。

 水上からみたこの都市のきらびやかさは、今でも幻想的で驚くべき光景だ。あっという間にヴェネツィアという舞台装置に惹き込まれ、現実と虚構が逆転し、時が別の流れに変わってしまう。こんな都市は、ここにしかない。

(実際の行路は、ローマからイタリア・ユーロスターでヴェネツィアのサンタ・ルチア駅へ。ここから水上バス2番の外回り急行でホテル近くのサン・マルコ広場に到着)
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 9月に入り、風や大気はすでに秋の気配を纏っているけれども、実家の朝顔は、まだ鮮やかな色合いの蕾を付けていて、その透き通るような美しざで、目を楽しませてくれる。
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 この秋、楽しみにしているのが、鈴木其一の展覧会だ。国立劇場の緞帳が彼の屏風絵から取られたもので、印象に残っている。
 酒井抱一や尾形光琳、俵屋宗達は接する機会が多いけれども、其一をメインに据えた展覧会については、都内では記憶にない。酒井抱一の弟子なので、作風に通じるものが感じられ、抱一好きの私にとっては、嬉しい企画。会期が短いので、早めに観に行きたい。
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