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サン・マルコ大聖堂のバルコニーから

 先日、テレビ東京「美の巨人たち」でサン・マルコ広場が紹介されていた。
 友人が「見た?世界で一番美しい広場だと、何度も言っていたのが印象的で...。あなたも何度か通ったのかしらと思っていたのよ」と嬉しそうに伝えてくれた。
 そう、4日間の滞在で、何度ここを往復しただろう。宿から広場を通って劇場や美術館、教会へ繰り出し、また広場を通って宿に帰ってくる日々。昼間の観光客で活気に満ちた広場から、深夜の落ち着いてしっとりした広場まで体感し、自分がここにいるなんて、今思えば夢のようだった。
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 先月公開された映画『インフェルノ』でも、ほんの少しサン・マルコ広場が登場。サン・マルコ大聖堂のファザードにある青銅の馬が、謎かけの一つになっていた。コンスタンティノープルから略奪してきた彫刻で、こちらはレプリカ。本物は内部の博物館で見ることができる。ヘレニズム時代のものだが、本物の馬と見紛うばかりだ。
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 このときは、広場がアックア・アルタ。9月にもあるんだな、と。この程度で良かったけれど、サン・マルコ大聖堂の前には、歩行専用の高台通路がズラッと並べられ、私もそこを通過することとなった。

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 元同僚に誘われ、上野まで。都会の小さな秋を散策。気持ちが解れていくのは、自然の潤いを感じさせてくれるから。
 そして彼女の希望で「ゴッホとゴーギャン」展へ。ゴッホは人気があるので、凄い人出。これだけ人がいるとゆったり鑑賞するのは難しい。ランチでのんびりして、お互いの近況をおしゃべり。
 その後は、国際子ども図書館の「こんにちは!イタリア」展へ。入口に掲げられているヴェネツィアに、もう嬉しくなってしまう。ちょうどギャラリートークが始まり、ラッキーだった。
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 イタリアの子どもの本を紹介している展示室は、絵本と児童文学のセクションに分かれており、ギャラリートークでは、児童文学のお薦めを何点か紹介してくれた。他国の文化を知ることは楽しい。
 中でも現代イタリアを代表する作家であるピウミーニ『光草』、ガンドルフィ『むだに過ごした時の島』は魅力的だった。そして、ダダモ『イクバルの戦い』は児童労働についての告発状にもなっている(イクバルは、そのために12歳で命を絶たれてしまう)。子供だけではなく、大人こそ読まねばならないな、と。
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 絵本の中では、ニコレッタ・チェッコリ『女の子たちの夢』に惹きつけられる。表紙に佇む少女の危うげで物憂いこと、この時期ならではの不安定さが幻想的に表されていて、お洒落。
 この絵本では、片方のページに「トリスタンとイゾルデ」などの昔の恋愛物語、もう片方に様々な女の子が描かれているとのこと。面白そう!

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 この祭壇画の聖母マリアを見て、「あ、観音様だ」と思ってしまった。ビザンツ様式の名残がそう感じさせるのだろうが、なんと東洋的なのだろう。光背(頭光)や宝冠、頭部を覆うベールと体にフィットする衣の感じが、観音様そのものだ。西洋と東洋は、やはりあるところで繋がっている。絵画においても、歴史を遡れば遡るほど、そう思えてならない。
 それにしても、650年前のものとは信じられないほどの優美さに、ただ茫然と見入ってしまう。
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 これはアカデミア美術館の初期ヴェネツィア派(14世紀後半)の間にある、ロレンツィオ・ヴェネツィアーノ《リオン祭壇画》。ヴェネツィア絵画の祖である、パオロ・ヴェネツィアーノを継承し、10点近い作品が現存しているとのこと(宮下規久郎著『ヴェネツィア 美の都の一千年』より)。ロレンツィオは、パオロよりも人物描写が自然でたおやか、表現的にも洗練されている。そして、この華やかな色彩が、いかにもヴェネツィアらしい。素敵だ…。

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 ヴェネツィア最後の夜。滞在の締めくくりは、再びフェニーチェ劇場へ。
 バロック音楽ヴェネツィアンセンター主催のソプラノ&テオルボによるコンサート。モンテヴェルディ&ヴィヴァルディ・フェスティバル2016の公演で、会場は劇場内の小ホール的な場所(アポロンの間)。こじんまりとしたコンサートにはぴったり。
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 ~AMOR,IO PARTO~
  Dal《Lamento d’Arianna》di Monteverdi,alle《Fonti del pianto》di Vivaldi
 ~愛の神よ、私は去りゆく~
  モンテヴェルディ《アリアンナの嘆き》からヴィヴァルディ《涙の泉》へ

 締めくくりのコンサートは、奇しくもバロック。しかもヴェネツィアと深い所縁のある二人の名を冠したコンサート。好きな音楽に囲まれた、こんな幸福な夜を最後に過ごせるなんて!ヴェネツィアからの贈り物に、ありがとう。

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 私にとっての殺し文句、それは《オール・バッハ・プログラム》。そう銘打たれたコンサートがあると、「わぁ、いいなぁ」と瞬間的に胸が高鳴る。
 はいえ、演奏機会の多い無伴奏系(独奏)はあまり食指が動かず、かといって宗教カンタータや受難曲となると、その曲の性格から、ウキウキとコンサートを楽しみに行く雰囲気とは異なってくる。もちろん、聴けば心震える。自分が大病した時など、カンタータにずいぶんと慰められた。
 バッハの曲は「堅い(難い)」印象を与える音楽ばかりではなく、カンタータの中にも思わず耳を奪われてしまう美しい旋律の曲があるし、器楽曲も幅が広い。何より、バッハの紡ぎだす音の絡み合いに身を委ねる快楽は、バッハでしか得られない、特別なものがある。

 今回のプログラムは、ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタを中心としたもの。このソナタ集も各曲それぞれに個性的で、バッハらしい綿密な音のアラベスクが、デュオによる華麗な掛け合いで広がっていく。
 それをファウスト&ベザイデンホウトという名手2人で楽しめるなんて!これを聞き逃す手があるだろうか。

 チェンバロを弾いたベザイデンホウトはモーツァルトの評価が高いが、私は全く聴いたことがなく、今回が初めて。このヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集では、チェンバロはただの伴奏ではなく、ヴァイオリンと共にメロディーを奏で、かつ通奏低音も兼ねるという、時代を先取りした形式。演奏が難しいのは当然だが、エキサイティングな弾きっぷりに魅了されてしまった。
 ソロ曲のトッカータニ短調も良かったけれど、ソナタ第6番のチェンバロ・ソロの盛り上がりには、私も気分が高揚。もっと聴いてみたいなと思わせてくれる。
 ヴァイオリンのファウストは、曲ごとに弓を替えながらという研究熱心さが窺え、手堅い演奏だったが、もっと弾んでもいいような。バッハを聴く快楽を味合わせてくれる演奏に出会うのは、やはり難しい。

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 今回のヴェネツィア訪問での心残りが、スキアヴォーニ同信会館とコッレール美術館にあるカルパッチョを見れなかったこと。私はカルパッチョが好き。ラスキンが「細部におけるファン・エイク、色彩におけるティツィアーノ」と称えたのもよく分かる。
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 アカデミア美術館にある《リアルト橋における聖十字架の遺物の奇跡》も、いくら見ていても飽きない。当時のヴェネツィアの風俗が手に取るように伝わってくるが、コンパニア・デッラ・カルツェ(直訳するとタイツ・クラブ。二十歳前の若者で構成され、クラブごとにタイツが違うとのこと。塩野七見さんの著書より)と思われる、当時流行の装いをした青年たちを見るのも、また楽しい。
 この腰まで届く金髪に大胆な柄違いのタイツ!カルパッチョの描く艶やかな装いの青年は、なぜか後ろ姿が多い。彼の目の前にいる人物たちも、一人ひとりが丁寧に描き分けられていて、面白い。視線はバラバラ、彼らは一体どこを見ているのだろう?
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こちらもやっぱり後ろ姿。お尻のラインを見せるのが大事なよう(^^; スタイルがいいですね。こちらの雰囲気はエキゾチック。
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 こんな柄(レースのホーザリー)、今ちょうど流行っている気がする。ちょうど足首のあたりが、アンクレットならぬバングルのような感じのところも。

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  ヴェネツィアの宿は、サン・マルコ広場の近く。
 ヴェネツィアの夜は静かだ。時々、かすかにサン・マルコ広場で奏でられているバンドミュージックが流れてくる程度で、それも0時をまわると営業終了となる。この静けさのおかげで、夜はぐっすり良眠(ローマの宿がテルミニ駅に近く騒がしかったので、よけいにありがたい)。
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 朝、目覚めて窓を開けてみると、朝日を浴びてそびえる鐘楼が見える。ヴェネツィアのシンボルの一つである、この鐘楼をここから見ることができるなんて、なんと幸せなのだろう。ひととき、ヴェネツィア人になったような...。
 宿は直接運河と繋がっていて、裏手にもう一つ入口がある感じ。ここでゴンドラが行きかうのを眺めていると、本当に別世界に迷い込んだよう。
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 この辺りは運河が通っていて、狭い路地も入り混じり、すぐ迷子になってしまいそうだが、日が暮れるとそれは幻想的。泊まってみたいと思わせる魅力的なアルベルゴがあちこちにあって、いい雰囲気だ。

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 カルパッチョを見るのは楽しい。ヴィヴァルディを聴いたサン・ヴィダル教会では祭壇画を、そしてここヴァネツィアのアカデミア美術館には《聖ウルスラ伝》の連作が並ぶ展示室があり、それは見応えがある。
 カルパッチョの醍醐味は、なんといっても細部の描写にある。特に人物については、一人ひとりに実際のモデルがいたのではないかと思わせるほどのリアリティで、当時の風俗が手に取るように伝わってくるのが面白い。
 今回、アカデミア美術館を訪れた際には、午後の遅い時間帯だったためかガラ空きで、カルパッチョも独り占め。
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 「カルパッチョ」という前菜でお馴染みのメニューがあるが、もともとは生の牛肉を薄切りにしたものだそう。カルパッチョの絵画の赤を思い起こさせるところから名付けられたそうだが、その絵を見ると、確かに赤が特徴的なアクセントとなっていることを実感。赤でも様々な色合いがあり、光の当たり具合によって微妙に色彩を使い分けるところなどは、さすがに素晴らしいなと。
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 《聖ウルスラ伝》の「イングランド使節の到着」から。青年の肩に届くほどの金髪が陽に輝いて、鮮やかだ。その衣装や胸飾りもお洒落、タイツが左右色違いなのはもちろんで、流行最先端ではないかと(^^;) もっと派手な装い(青年の華麗な装いのバリエーション)も、他の絵には描かれていて、「へぇ~こんなの着ていたのか」と思わず見入ってしまう。
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 こちらも金髪青年。背中を向けているポーズが、なんとも粋ではないか。この帽子のデザインといったら!正面から見たらどんな青年かなぁと興味をそそられる。カルパッチョのセンスが生き生きと伝わってくる名画だ。

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 イタリアのプーリア(プッリャ)州出身の方から、「都内(広尾)でプーリア料理を食べられるレストランがあるよ。現地の人にも結構評判がいい。」との情報をいただき、母と二人でアンティキサポーリへ(お互い同士で遅めの誕生日祝い)。
 プーリア州といえば、世界遺産である「とんがり屋根」のアルベロベッロぐらいしか思い浮かばず(すみません)、州としては細長くて結構広いような感じだったなぁと…。そうそう、オレッキエッテ(耳たぶ型パスタ)がプーリア産と聞いていて、美味しそうと思っていたのだった。
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 まず驚いたのが、前菜が盛り合わせ的なものではなく、何種類も一皿ずつ出てくる!私たちが選んだコースでは5種類。ナスのスフォルマート、カポコッロ(豚のうなじのハム)の玉ねぎピクルス添え、ブッラータ(チーズ)、等々...。ブッラータの味はモッツラレッラと似ているけれど、もっと柔らかくってトロトロ。ミルクっぽさもあまり無くてさっぱり、食感を楽しむものかな。
 プリモは2種類のお薦めパスタ。残念ながらオレッキエッテではなかったけれど、美味しい。セコンドはCavallo=馬肉のグリルとサルシッチャ(ソーセージ)。馬肉はクセが全くなくて柔らかく、付け合わせのひよこ豆と相性ピッタリで満足。
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 一番印象的だったのが、食後酒。リモンチェッロ2種類にアマーロ。度数は20~30!で、当然私には無理。でも、このアマーロ(ハーブのリキュールで養命酒的なもの)の味が、とても気に入ってしまった。販売もしているそうで、ボトルの案内をいただいたが、とてもこの量は飲みきれまいと断念…。リキュールに合わせるお茶菓子(ではなくお酒菓子)も、さっぱりとして口直しには最適。
 コストパフォーマンスも良く、HPで見るより実際の方が断然印象がいい。今度は友人を誘って来たいお店。

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