e0036980_21585803.jpg
 この新作歌舞伎は、インドの叙事詩マハーバーラタを題材にしたとのことで興味を惹かれ、久し振り(二年振りぐらい)の歌舞伎座へ。インドは20代初めに訪れた際、その力強さと賑わい、美しさ(ピンク・シティのジャイプールが忘れられない)に感動したものの、体調をひどく壊してしまったのがトラウマで「ああ、ここで暮らすのは難しいかも」と再訪できないでいる。だが、大変魅力的な国。
 ヨガにも取り組んでいたので、マハーバーラタ、そしてその核をなすバガヴァッド・ギータ―は多少馴染みのあるものだ。これをどのように歌舞伎化するのか予想がつかなかったが、結果、活劇として大変面白く仕上がっており、予想以上に楽しむことができた(もう一度見たい!)。
e0036980_22274221.jpg
 序幕は上図のように、黄金に輝く神々がおわすヒマラヤ山の雲の上から。破壊神シヴァは青ではないんだと(アトリビュートはシヴァ神っぽい)、そういえば、バレエ・リュス展でインドを舞台にした《青神》があったなぁと思い出す。
 そして、絵の通りに地上の姫君も着物姿で「母なるガンジスが…」(!)と言っているので、初めは違和感があるものの、話が面白く舞台の豪華さも見事ゆえ、すぐに慣れてしまう。そう、これはあくまでも歌舞伎なのだから、間違ってもサリー姿などはありえないだろうと再認識…。額の「第三の目」であるビンディ飾りは、着物姿でも似合っていて素敵だった。
 ここでの神々は、ギリシャ神話の神々のようにそれぞれ個性的なキャラクターで、それぞれの思惑で人間を動かそうする姿も、また神話的。最後、帝釈天が「輪廻から解き放とう、永遠を与えよう」という言葉には打たれた。仏陀も輪廻はあると言っていたそうだ、解脱とは輪廻のくびきから解き放たれること、日本の仏教とも関連の深いインドの神々の世界に、改めていろいろと思いを馳せた公演だった。

※素敵だったのは鶴妖朶姫を演じた七之助!声もセクシーでうっとり。今回は美味しい役どころでもあったけれど、どんどん魅力を増している感じ。

[PR]
e0036980_22182595.jpg
 この王宮は、17世紀から19世紀末までサヴォイア家の公式宮殿として使用されただけあって、もうどうしていいか分からないほどの豪華絢爛さで、目がチカチカしてしまう。壁から天井まで装飾びっしりで、ロココというよりもバロックの迫力である。見学者は少数で、ゆったりと巡ることができるのが嬉しい。
e0036980_22303840.jpg
 部屋の大きさ自体はそれほどでもないが、重厚さがあり、かといって無骨な感じはなく、こうした雰囲気はイタリア的と言えるのだろうか。バロックのヴェルサイユ宮殿やロココのサン・スーシ宮殿などとは違った趣。ヴェネツィアのパラッツォとも全く異なる印象だ。
e0036980_22450000.jpg
 国は違えども、宮殿と名の付くところには、東洋の陶磁器コレクションルームは必須アイテムなのである。もちろんここにもございます。漆の装飾で飾られた部屋も。

[PR]
e0036980_22191107.jpg
 たっぷりと時間を取って王宮内を見学した後は、さすがに休憩を取りたい。
 嬉しいことに王宮内にカフェがオープンしているので、しばしのんびり。カメリエーレが「ビチェリンはいかが?」と薦めてくれるので、トリノ名物のビチェリンをいただく。小腹が空いたので、プロシュットのパニーノも。パニーニは他にもサーモンやチーズなどいろいろあって選ぶことができる。サンドウィッチもあり。王宮カフェなので上品なサイズ&量。ビチェリン、もっと飲みたかったな。
e0036980_22340668.jpg
 トリノのビチェリンといえば、「カフェ・アル・ビチェリン」(発祥のカフェ)へ行ってみたかったが、宿から距離があったので諦めてしまった。チョコレートの風味が疲れに沁みて美味しい♪甘さはあるが、コーヒーと一緒なので、くどくないの。

[PR]
e0036980_22311035.jpg
 王宮内の武器博物館からカステッロ広場を、そして滞在中の宿を臨む。
トリノは、美しかった。
e0036980_22412370.jpg
 世界遺産であるサヴォイア王家の宮殿には、欧州随一といわれる武器博物館がある。これが凄い迫力で、芸術品なみの甲冑や武器に目の玉が飛び出そうになる。騎士が馬にまたがっているのがリアルで、今にも動き出しそう、中世にタイプスリップした感覚に。しかし重そう、実際に動けたのだろうかと。
e0036980_23065736.jpg
 そして、お馬さんまでもが重そうなのである。人間も馬もこれでは、身に付けた感覚が想像できない(辛そう)。見た目はもちろんカッコイイのだが(凄いデザイン…アヴァンギャルドだ)。
e0036980_23100968.jpg
…手の先までがこんななの。ここまでくると絶句。いくら見ていても飽きない、時を忘れてしまう。

[PR]
e0036980_20350581.jpg
ミラノ滞在中に何度も通った、中心部のメラヴィリ通り。
トラムのレトロな趣きが街の風景に馴染んで、どこか懐かしい印象。

今回の音楽の旅は、成田からミラノに到着後トリノへ。そしてまたミラノに舞い戻ってきた。音楽鑑賞を軸にしてしまうと、どうしてもこのような旅程になってしまうのが辛いところ。
 ミラノではスカラ座まで2分の宿、ホテル・スターに2泊。3つ星でも場所的にそれなりの値段がするが、早割でなんと45%オフで確保。一人旅(夫は日本で留守番)には嬉しい。ただ、ホテルのサイトで申し込み後、24時間以内に確認メールのやり取りをしないとキャンセル扱いになるので注意。また、即決済でキャンセル不可なので、旅程が確定しなければ申し込めないのが難点。
e0036980_21391906.jpg
 ホテル・スターはこの細い路地の右手に。ホテル自体は快適で、フロント・デスクもすぐに顔と部屋番号を覚えてくれて、対応がとてもいい。朝食も普通に充実していて美味しい♪なんといっても立地が最高だ。
 だが、トリノの中心部があまりにも整然と美しかったものだから、この辺りに来てみると「なんだかグチャグチャした(パッとしない)所だな」というのが第一印象(ごめんなさいねミラノ)。慣れてみると、これはこれで味わいがあっていい。
e0036980_21521778.jpg
 スカラ座に近いということは、ドゥオーモやガッレリアからも近いということで、実際に行ってみると宿からあまりの近さと、東京都心なみの人混みに驚く。せめてプラダ本店ぐらい覗いてみようと入ってみるが、店内は日本人や中国人の観光客がほとんど。そう、ここは観光地だものね。


[PR]
e0036980_22150070.jpg
ミラノのシンボル、ドゥオーモ。快晴の空に映える白が眩しい。
この隣にある1900年代美術館も行きたかったが、今回は残念…。

 今回ミラノは3泊。到着日は中央駅傍のホテル・ベルナへ。翌日朝に列車でトリノへ発つので、本当に泊まるだけ。なので三つ星(別館)と四つ星とあるが、今回は経済的な三つ星の方をチョイス。知人のお薦めだったが、これが大正解!
 部屋に入ると枕上にはウェルカムスイーツ(美味)がさりげなく置かれており、心遣いにほっこり。ポットはもちろん、ティーバック類が盛り沢山なうえ、ミニバーにはドリンクがアルコールを含め10本近く入っている。これが全てフリーとのことで、一泊だけとはもったいなかったなぁと(ケチ根性が…)。
 朝食は三つ星も四つ星も同じ場所。滞在客は年輩の方が多く、落ち着いた感じ。スタッフがまめに気遣ってくれるのが嬉しい。
 カフェマシーンがあるが、朝はカプチーノが飲みたい。「マダム、何か他に?」と声を掛けてくれるので、カプチーノを頼むとキッチンに行ってすぐに持ってきてくれた。しかも可愛いの。
e0036980_22132637.jpg
 
 中央駅はこれまた荘厳さ溢れる建築物で、内部の装飾も美しく、思わず写真を撮りたくなる。駅周辺は近代的な印象で、いわゆる「都会」な感じ。「都会」は東京も、ミラノもベルリンもパリも雰囲気自体は大体似通っているもの。これがスカラ座周辺となるとまた違った印象となる。

[PR]
e0036980_20511160.jpg
ダンテのベアトリーチェ、書斎のステンドグラスから。
背景にはフィレンツェの鐘楼。

 友人、知人ら皆からお薦めされたポルディ・ペッツォーリ美術館へ。スカラ座からも近く、月曜日でも開館しているので、これ幸いと気軽に訪れた。こじんまりとして落ち着いた邸宅美術館だが、名画を多く所蔵しており、昨年に日本へ来たボッティチェリ《書物の聖母》とも再会。
 また、目もあやなヴェネツィアンレース&グラス、ペルシア絨毯、金銀の装飾品、彫刻、そして見事な時計コレクションなども目を楽しませてくれる。絵画や工芸品は、機会があれば日本へお越しいただけるが、建物自体となると難しいので、こうして貴族の私邸である室内装飾を味わうことができるのは嬉しいな、と。
e0036980_21353198.jpg
 宮殿の豪華絢爛さとは違う寛げる雰囲気がいい。ここでは、ロココの大きなパニエファッション(お姫様ドレス)ではなく、もっと近代的で軽やかなドレスが似合いそう。見どころは絵画(ヴェネツィア派も沢山)をはじめ語ればきりがないのだが、当主がよく過ごしていたという書斎は独特の味わいで、ダンテ《神曲》に因んだステンドグラスが鮮やか、ベアトリーチェが可憐なこと!当時としては随分モダンな感じを受ける。
e0036980_22052854.jpg

[PR]
e0036980_21151771.jpg
 ミラノに来たからには、これ(だけ)は観ねばなるまい、と訪れた《最後の晩餐》。予約を取るのが難しいと聞いていたが、直接サイトにて最後の一枚を確保。ミラノ滞在時に合わせてちょうど一枚だけ残っていたなんて、これこそ奇跡、とチケットを握り締めて無事入場。1グループ(20人~30人ぐらい)単位の見学で、15分間という制限があるけれど、少人数であることのメリットが最大限に生かされており、周りを気にせず絵画とじっくり向き合えるのはありがたい。
 実際に観てみると、思ったより大きいことに驚く(通常は思ったより小さいと思うことが多いのだが)。この絵については、様々な解説を読むことができるが、やはり色彩や質感は、こうして実際に見るのと紙上で観るのとでは全く違う。そして、何よりもこの空間で観ることによってレオナルドが何を描こうとしていたかが、体感できる。この場所であること自体にまず意味がある。描かれている場所と絵は切り離せない、遠近法の見事さは、この空間があってこそ分かるのだと、もう目から鱗状態である。得難い15分間の体験だった。
e0036980_21133464.jpg
 サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の美しさにも息を呑んだ。
 なんと清澄な空気がみなぎっていることか、この教会は今なお生きている。お祈りを捧げている信者の邪魔にならぬよう、音を立てないようにして内部を回らせていただく。敬虔な想いが自然と湧き出てくる教会だ。中庭の回廊から眺める教会の優美さに溜息。内部の独特な壮麗さにも、目を奪われてしまった。
e0036980_21131723.jpg

[PR]
 スペインの若きピアニスト、フアン・ペレス・フロリスタンのリサイタルへ。
 今年のMITO9月音楽祭のテーマは「natura(自然)」。コンサートごとに表題が付けられており、今回は《AL QUADRATO》。抽象的な題、絵画のような四角い空間を表しているのだろうか。
 会場に入ると舞台にはファツィオリのピアノが。どんな音色を聴かせてくれるのだろうかと、期待が高まる。
 プログラムはリスト、ドビュッシー、そして休憩を挟んでムソルグスキーの《展覧会の絵》とヘヴィーな内容(超絶技巧満載)で、まぁこれは大変(ドビュッシーを挟まなければもたないだろうな)と。
e0036980_20123613.jpg
 まずはリスト《巡礼の年 第2年:イタリア》から3曲。《婚礼》はラファエロの絵画をモチーフとしているが、その絵画は、まさにここミラノのブレラ美術館にある。ロマンの薫り溢れる曲と相まって、それを思うと胸が高鳴り、どうにかなってしまいそう。
 フロリスタンは手さばきもエレガントな、柔軟性に富むロマンティックなリストを奏で、またファツィオリがなんとも艶やかでくっきりとした響き。ヒューイットのバッハでのファツィオリとは全く異なる鮮やかな響きに驚く。そして、《物思いに沈む人》(こちらはミケランジェロ)を挟んで、In questo stato son,Donna,per vuiー悩める恋心を謳いあげた《ペトラルカのソネット104番》、まさにイタリアのアモーレ全開といったソネットで、プログラムにもしっかりとソネットが掲載されているのは素晴らしい。
 最前列にいた若いカップルがぴったり肩を寄せ合って聴き入っているのも、いいなぁ、と微笑ましい。こんな親密な空間で、恋人同士リラックスして聴けるクラシックコンサートなんて、最高ではないか(値段を聴いて驚くなかれ、5€。しかもこの演奏レベルを聴けるとは、日本の感覚では信じられない)。
 私の隣席のおばあさまは、熱心なクラシック音楽ファンのようで、休憩時間には来シーズンのスカラ座プログラムを凄い勢いで一枚ずつめくりながら〇×チェック(×は行かない舞台のよう)をしていた…。カーテンコールでは大喝采、満足されたようで良かった。

 そしてドビュッシーの前奏曲集から5曲。《亜麻色の髪の乙女》《オンディーヌ》《西風の見たもの》と、馴染みのある曲が続く。近代的和声のドビュッシーの世界を鋭い響きで表現。休憩後は大曲《展覧会の絵》、これは圧巻だった。ロシアの薫り…、本当にユニークな組曲。ここでのフロリスタンは、リスト&ドビュッシーとは全く異なった手さばきで、どっしりと芯の通った力強い音を立ち上げる。ギャラリーで実際に絵と対峙しているかのごとく、しっかりと各曲のキャラクターを表現。《リモージュの市場》の賑わいのくだけた表現も上手い。クライマックスの《キエフの大門》への盛り上げ方も迫力満点で、大喝采。
 ムソルグスキーは昨年に《死の歌と踊り》で度肝を抜かれたが、オペラ《サランボー》なんて聴いてみたかった。完成したのが《ボリス・ゴドゥノフ》だけとは、残念。
 

[PR]
e0036980_22251438.jpg
 偶然に入ったサン・マウリツィオ教会で、色彩鮮やかなフレスコ画に目を奪われてしまったが、最も印象的なのが、このブルーの天井画。まさに天上の世界が描かれている。このフレスコ画、厳格な雰囲気が全く無く、柔和でエレガント。愛らしい雰囲気があって、微笑ましい。癒されるなぁ。
e0036980_22322873.jpg
 天上の世界の下には、キリスト受難の物語と聖人たちさまざま。ここでもマグダラのマリアが本当に綺麗(いつも輝く髪を波打たせてキリストの足元にいるイメージ)。
 ヴェネツィアでもお馴染みの聖ロッコ。そして聖カタリナ、聖アガタと美しき女性の聖人たちが並んでいる。女子修道院らしい雰囲気。
e0036980_22503444.jpg
 聖ルチア。マグダラのマリアと違って、凄まじい殉教を遂げた聖女たちは皆、凛とした佇まい。ドレスもエレガント。
 面白かったのは《ノアの箱舟》、まるで子供向けの想像力を掻き立てられる絵本の世界だなぁと。この時代には、もうラクダやらキリンやらはよく知られていたのだろうか。目立つ位置にユニコーンがいるのもナイス。
e0036980_22592096.jpg


[PR]