これぞバロックオペラ!!
コロナ禍となってから外出自体を躊躇しがちとなっていたが、やっぱり大好きなヘンデルをどうしても聴きたくて、当日券でヘンデルのオラトリオ《セメレ》へ。遂に日本でもここまできた感の素晴らしい演奏に感無量。行って本当に良かった…。
オラトリオだけど、世俗的とあるように、オウィディウスの神話『変身物語』から題を取り、ゼウスらが登場する中身はオペラそのもの。最後はアポロンがバッカスの誕生&愛を讃えて幕。
4時間の長丁場だったが、歌手ではカウンターテナ-中嶋さんがクリアな美声で印象的。何よりオーケストラが集中力を切らさないアグレッシブさで上手い!大成功で拍手の嵐、私もスタンディングオべーション。
ただ、観客は普段オペラを観ない方も多いのだろう、このオペラ的な作品(なにせ謳い文句が「淫らなオペラ」だ)を、バッハのカンタータを聴くがごとく「きちんと正座して拝聴せねば」的な雰囲気なのである。いやいや、オペラは娯楽であり、観客が喜んでこそなんぼである。このご時世で、Bravo等の声掛けは難しいが、その分、素晴らしかった歌い手さんへは、独唱後に盛大な拍手を送り、その意を伝えていく。そのやり取りで、どんどん場の雰囲気がほぐれ、盛り上がっていく。「いいぞ!」という観客の熱気が奏者をさらに鼓舞させ、演奏が高みに上っていくという相乗効果が生まれていた。これは、生の舞台でしか味わえないもの、舞台の醍醐味である。
全国紙でも大絶賛「その魅力をようやく日本の音楽家たちが十全に示せる時代になった」(朝日夕刊)。それなのに、残念ながらこの団体では同規模の公演を今後行わないそう。
…これから私は一体どこでヘンデルのオペラを定期的に聴けるのやら。毎年パリやらハレやらヨーロッパまで行けということなのか(泣)。