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 新年の読書始めに相応しい一冊だった。高峰秀子さんの主演映画は一作も観ていないのに、ファンなのである。そのエッセイが好きで、この方は「天は二物を与えず」の例外で天は二物も三物も与えるのだなぁと感じ入ってしまう。御養女の斎藤明美さんが綴る、高峰秀子さんの在りし日の姿も見事で、「高峰秀子は、女優である前に、人間のプロだった」との言に、人間、このようにありたいものだと我が身を顧みて反省するばかり。

 斎藤明美さんが述べていること―「洗濯とか掃除とか食事とか、そんなものはどうだっていい。それよりも、素晴らしい映画を観たり、優れた書物を読んだり、音楽を聴くほうがずっと大事なことだ。若い頃の私はそう信じていた。だが、四十歳少し前に高峰を知り、彼女の日常を見るようになって、その考えは間違っていたと気づいた。日常が何より大切なのだ。たとえそれが些細と思える小さな日常のことであっても、常に心を込めて、慎重に行うことは、簡単そうでいて難しい。それらを遂行していく何気ない時間の中で人間の心と肉体は培われていく。」

 この一文を心に留めて、この一年、できるだけ精進していきたいなと。とはいえ、もう挫けかけていることも多々…。そんなときにまた読み返すと、襟を正していけるかな。

# by marupuri23 | 2019-01-18 22:36 | | Comments(0)
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1325年に建立されたナポリのサン・マルティーノ旧修道院にて
家族や友人達の無病息災を神に祈り、また世界に向けても想いを寄せたい
 
 おかげさまで、夫婦揃って穏やかな新年を過ごしている。お雑煮をいただき、年賀状をゆっくり眺めてのんびり。これから初詣、そして今夜から明日にかけては親戚一同と新年の祝いである。
 お年玉や御祝を用意するのも、嬉しい心持ち。こうして、御祝を渡すことができるのも、本当にありがたいことである。感謝を忘れすに、またそうした想いを分かち合うことを悦びとしていけますように。
 そして、皆さまにとって、この年が心満ちる素晴らしい年となりますように。
 どうぞ今年もよろしくお願いします。

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7月のカプリ島、青の洞窟にて
自然の妙技による鮮やかな青さに惹き込まれる

 今年も何とか無事に乗り切ることができて一息。
 社会で働いている以上、仕事中心の毎日なのは当然。そして趣味と気分転換を兼ねた定期レッスン(ピアノや語学)をコツコツ。生活の基盤となる家庭生活も手を抜きたくない、とは思うものの、実際は抜き放題(!)…。ここは夫にだいぶ助けられており、ありがたいパートナーに感謝である。
 歳を経て社会的な責任が増大していくのと反比例して、非日常の楽しみである演奏会や美術鑑賞等々は年々少なくなっていく傾向にある。優先順位でいくと自然な流れで、また好きなことや興味を惹かれることは他にもあるのだから、今後の鑑賞生活はさらにマイペースとなりそうだ。
 とはいえ、一年の振り返りを(下部Moreに一覧を記載)。

 演奏会(国内)ではロト指揮のレ・シエクル、そしてバッティストーニ指揮《メフィスト―フェレ》がなんといっても印象的だった。ヒューイットの平均律1巻&2巻は、バッハを弾くうえでも得たものは大きかったし、アントニーニ指揮のハイドンは楽しかった!
 そして、オペラ上演に接することは大きな歓びであることに変わりないのだが、今年はイタリア・オペラへの偏りが顕著で、自分でも唖然。海外で聴いたものやライブビューイングを含めると、ヴェルディ7上演、プッチーニ6上演、ロッシーニ2上演、フェッラーリ、ボーイト。それ以外はヘンデル(オラトリオ)とドイツもののツィンマーマン《白い薔薇》(静かな問いかけが感動的だった)、モーツァルト《魔笛》のみ。
 これは、鑑賞が偏っているというよりも、イタリア・オペラ自体の上演が多いからということもあるとは思うが…。

 美術鑑賞ではフィレンツェやナポリで観たものは別として、素晴らしかったのがルーベンスの回顧展(国立西洋美術館)。西洋美術のスタンダード・スタイルの王道である、必見(これを企画していただき感謝)。
 ほか、国内の小さな美術館でゆったりと観れる工芸系の展示は贅沢気分。でも、アンティーク・レースの展示を観たあとに、自宅に戻ってヴェネツィアで求めたレースを見ると、なんだか違う感じではないか…(ショック)。

 映画ではGWのイタリア映画祭で上演された「シシリアン・ゴースト・ストーリー」が名作。実際に起きたマフィアによる誘拐事件を元にしている。この事件はイタリア中を震撼させ(社会的に大きな話題となった)、マフィア対策を前進させたものの一つである。
 現在都内でロードショー中。内容は言葉を失うほどの悲惨さであるが、シチリアの自然を含めた映像の美しさは特筆ものである。お勧め。

 長々と書き連ねてしまったが、これで気持ちも一区切り。
 皆さま、どうぞよいお年をお迎えください!


More 今年の鑑賞記録(国内)
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サンテルモ城からの眺望、ヴェスヴィオ火山&ナポリ湾

 「ナポリを見て死ね」と言われることから、今夏に訪れた際は、ここが一望できるところに行かなくてはと、ヴォメロの丘にあるサンテルモ城へ。宿近くのトレド駅からメトロに乗り込み、ヴァンヴィテッリ駅で下車してテクテクと坂を上る。この辺りは落ち着いた住宅街で、雰囲気もいい感じ。歩いていると、だんたん眺望が開けてきて、ヴェスヴィオ火山と、ナポリ湾が見えてくる。
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サンテルモ城は星型の要塞で、16世紀に築かれたもの。城に入場した後、さらに上っていく。7月の暑さで汗だく…。
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 ここからの眺望に接して、ようやくナポリに来たことを実感。ナポリを例えるならばディズニーランドのよう。美しい眺望にアトラクションやスリルも充実、そして南国の魅惑的な雰囲気。もちろん食事も外せない。
 こんな魅力的な都市を、どうして好きにならずにいられようか。旅は音楽鑑賞を中心にしているので、どうしても時間が足りず、ナポリのアトラクション(スパッカナポリやカポディモンテ、近くのポンペイ遺跡等々…)を満喫できず残念。
 真夏のナポリ&カプリ島は、暑かったけれど解放感に溢れていて、とても心地良かった。

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ナポリのプレゼーピオ(キリスト降誕のジオラマ)
サン・マルティーノ美術館にて

 クリスマスシーズンは一年の中でも好きな季節の一つだが、今年はなんだか年末の気分が全くしなくて、アドヴェントカレンダーも、以前ドレスデンで求めてきたくるみ割り人形等々の飾りつけも無し(一年に一度の機会なのにごめんね)。
 今日はクリスマス・イブなので、今年ナポリでみたプレゼーピオを。プレゼーピオはキリスト降誕のジオラマで、ナポリのそれは特に有名である。私もスパッカナポリのプレゼーピオ専門店でプルチネッラをいくつかお土産にしたかったけど、叶わず残念。でも、サン・マルティーノ美術館でアンティークのプレゼーピオ・コレクションを満喫できたのでよしとしたい。
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 作りの細かさに驚愕。キリスト降誕以外の場面の広がりが凄くて、見どころはキリスト降誕以外の部分にこそある。上部には数多くの天使達、そして下部には群衆達。遠近法も効いているのである。この他にもたくさんコレクションが展示されているので、一見の価値あり。これは小さな人形だが、等身大に近いものもあって、これがまた迫力(というか圧力)である。生誕の場面はいいのだが、受難のシーン(これはトリノで観た14世紀頃の木製人形)となると怖いぐらいで腰を抜かした。
 いよいよ、新年に向けてのラストスパートである。終わり良ければ総て良し、となるように頑張りたい。
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キリストのいない(12月25日以降に真ん中に置くのだろうか)、等身大のプレゼーピオ。ちゃんとロバと牛に天使達も。動物がほんとうに愛らしい。

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 昨年スカラ座のヘンデルで初めてファジョーリを聴くことができたが、なんと日本で聴く機会に恵まれることになろうとは思わなかった。この公演を実現していただけたことに、まずは主催事務所を始めとする関係者の皆さまに感謝したい。結果、大成功の公演となりバロック・オペラ(ヘンデルのオペラ)とカウンターテナーの魅力をより多くの方に実感していただけたのではないかと思う。これで弾みがつき、日本でもさらにバロック・オペラへの間口が広がり、公演そしてファンが増えていくことになればと、愛好者の一人として心から願うものである。

 オケはヴェニスバロック、来日の度に聴いているので馴染み深いが、今回はファジョーリがいる。ということで、私も気合を入れて会場に向かったが、開演前から会場全体が高揚感で満ちていることに驚く。そう、今聴くべきはカウンターテナーなのだ、待ってました!という盛り上がりである。

 そしてファジョーリの歌いっぷりだが、前半は思ったより精彩を欠いている印象で、これはもしかしたら昨年のスカラ座と一緒(不調に見えた)かも…と不安を感じていたが、《リナルド》のVenti,turbine,prestateで声が発せられたとたん、これまでとは別人のようなトーンの艶やかさに「わっ!きた!」と胸が高鳴り、とたんに惹き込まれてしまった。これは十八番なのだろう、彼の超絶技巧が冴えわたり圧倒的。このアリアが終わったとたん、「Bravo!」の嵐(私も思わず声を掛けてしまった、お見事!)である。
 休憩を挟んでからは、さらに調子をどんどん挙げていき、それと比例して観客の声援も熱を帯びていく。日本のコンサートではないような熱い雰囲気に。

 ファジョーリの声自体はジャルスキーやメータに比べると、決して「美声」(私の好みは芯の堅いクリアな声)ではないが、テクニックがともかく凄く、ファルセットと地声をあんなふうに使い分けることも滅多にできまい。そのテクニックを駆使して、これ以上はないという豊かな表現をもって、バロック音楽に、ヘンデルのオペラに熱い血の通う生命を吹き込んでくれているのだ。ヘンデルのファンとしても、嬉しい限りだった。

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 この一週間は以前から楽しみにしていたファジョーリ&ヴェニスバロックなど、久し振りにコンサートが続いたが、なんといっても忘れがたいのはバッティストーニ指揮《メフィスト―フェレ》だ。名前だけは知っていたこの作品のプロローグを、昨年にシャイー指揮のCD《スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集》で初めて聴いて度肝を抜かれた。そう、一聴惚れである(私の場合、好きになる曲はほとんど一聴惚れ)。
 それから全曲をCDで聴き、ますます虜になったが、その理由はこの作品が非常に視覚(映像)的でもあることで、この《メフィストーフェレ》のプロローグとエピローグを聴いていると、壮大な天上の世界が視覚的に目の前で展開していく感覚がーそれはシスティーナのような、いやシスティーナ礼拝堂以外でも、イタリアで観る教会や聖堂の天井は、神々の栄光で溢れており、その輝かしさは目が眩むばかりで、聴いているとそれらが脳裏に浮かび上がってくるようなのである。
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 今年ナポリで訪れたサン・マルティーノ美術館の教会も、なんとも壮麗な内部。もちろん天井は神の栄光が描かれている。《メフィストーフェレ》のプロローグ場面はゲーテの原作とは異なっており、ボーイト流に変更されているのだと思うが、それが見事に視覚的な効果と繋がっているのではないだろうか。《メフィストーフェレ》の天上での音楽は、実際にその世界を視覚からも捉えることをしてきた人の造ったものだ、と感じられてならない。


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 スタンダールがその音楽に対して「…目が眩み、魂を奪う」と記し独創的天才と讃えたロッシーニ⇒「gli occhi sono abbagliati,…」掲示の解説文を読み返してみたら、スタンダールがサン・カルロ劇場を讃えたものだったのね、失礼しました…。ナポリ王宮から続くサン・カルロ劇場博物館にて、ロッシーニの没後150年展が開催されていた。こうした展覧会があるとは知らなかったので、(一応)オペラ愛好家としては、驚くと同時に嬉しさのあまり気分が高揚。ロッシーニの作品にはナポリ初演のものが10作品ほどあって、この地と所縁深いのはもちろんだが、ナポリにも熱狂をもたらしたのだ。
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 開場入口にはスタンダールのコメントが。彼の著した『ロッシーニ伝』には「チマローザが去り、パイジェッロが作曲を止めると、一人の独創的天才(=ロッシーニ)が現れるまで、イタリア音楽は衰えた」「ロッシーニはチマローザを崇拝し、目に涙を浮かべて語る」とある。
 スタンダール曰く「カノーヴァ亡き後、(ロッシーニは)現存する最大の芸術家なのだ。後世はどのような評価を下すだろうか。そればかりは判定のしようがない。」
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 モンセラート・カバリエが身に付けた《エルミオーネ》の衣装。ナポリ初演でコルブラン(ロッシーニの奥様)が歌っている。大好きなラシーヌの『アンドロマック』が原作。確かにアンドロマックよりもエルミオーネの方が印象深い。所謂、敵役ではあるが、この戯曲のように主役のヒロインが喰われてしまうようなパターンって多いのではないかと思う。…が、肝心のオペラを聴いたことがない。日本で聴くのは一生無理かも。

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 チマローザのオペラ・ブッファの続きで…。名高いナポリの大作曲家なので、サン・カルロ劇場にいらっしゃいましたが、実際の上演に接したことがないのが残念。ブッファ、楽しいだろうな。
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 こちら手前にはパイジェッロが。チマローザと並ぶナポリの大作曲家である。オペラは実演で接した覚えがあるのだが、はっきりと思い出せない(ごめんなさい)。《うつろの心》が馴染み深い。
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 可愛らしい雰囲気のホワイエに、オペラ衣装の展示もあったりする。出入り自由だが、ブッフェは別の場所にあるので、他には何も無くてガラガラ。ここをブッフェにすればいいのにな、と。


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 まるで純白のレースのような大理石ホールを上ると宮廷劇場に。この劇場は現役で、バロック・オペラなどはここで上演されているそう。オーケストラの規模からみても、大きさ的にはぴったり。オーケストラピットもしっかりとあり、手入れの行き届いている印象だ。機会があれば、ここでオペラを観てみたいもの。バロックものでなくても…ああ、ここはナポリなのだった。ナポリ派の、例えばパイジェッロ、チマローザ、ピッチンニ、ヨンメッリ、ペルゴレージ…、挙げればきりがないことに気づく。ここで観れたら最高。
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 こちらサン・カルロ劇場のカタログから、チマローザ《宮廷楽士長》の舞台。カゼルタ(ナポリ王家の住まい)の宮廷劇場で1994年に上演されたもの。いいなぁ…実際に観てみたかったと、ただただ溜息。
 チマローザ《みじめな劇場支配人》は一昨年レザール・フロリサンでちょこっと聴いたけれど、笑えるドタバタ喜劇で楽しかった!ナポリ初演のこのオペラは、ゲーテもローマで聴いて魅了されたのだ。ロッシーニ以外のブッファ、もっと聴きたい。
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 劇場後ろにはロイヤルボックスが。ここは1768年に造られたとのことで、サン・カルロ劇場より30年ほど後。サン・カルロ劇場はナポリ派を始めとする作曲家のみならず、メタスタージオなどの台本作家らが、さあどうだと言わんばかりに目につくが(彫像やら名前を掲げたプレートやら…)、こちらは芸術の神々に囲まれた空間。