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バイエルン国立劇場来日公演《ローエングリン》初日

《ローエングリン》はワーグナーで最も好きな作品。
音楽にはロマンティックな叙情性があって、喩えるならば静かに燃える蒼白い炎のよう。
その炎に包まれるのを感じて、久し振りにワーグナーを聴く愉しみを味わいました。
今回の公演では、団員100名ほどが来日を拒否されたそうですが、さすがにこなれた演奏で、ワーグナーの世界にどっぷりと浸ることができました。

エルザの禁じられた問い、いくら純粋な心の持ち主とはいっても人間であれば当然の行為、嫉妬、疑い、怒りで自分自身を追い詰めていく…。
ローエングリンは「自分自身を苦しめるな」と何度となく忠告するのですが、心の毒が増殖してしまったエルザの耳には届かない。
自分の心さえよく分からないのが人間ですから、信じるという行為もたやすいものではないはず。愛するがゆえに生まれる心の毒もある。
オルトルートは人間のもっているそうした「毒」を象徴するような存在のよう、「毒」の魅力を持ち合わせているので、ある意味魅了されてしまいます。

…こんなことをいろいろ考えてしまうのも、ワーグナーの面白さ。
マイヤーによるオルトルートは存在感抜群。
ローエングリンのボータは安定感があり、代役としての来日は本当にありがたい限りでした。
by marupuri23 | 2011-09-26 02:23 | opera | Comments(0)