維新の洋画家~川村清雄展
ここ最近、美術検定の受験勉強に取り組んでおり、公式テキストにも目を通していますが、そのテキストでも川村清雄の名が挙げられているほどで、明治時代の美術では重要な画家の一人といえます。
ですが、どれほどの人がその名を聞いて絵を思い浮かべるでしょうか、近代化の流れの中で「忘れられた画家」といえるでしょう。
私も代表作《形見の直垂》しか知らなかったので、今回の大回顧展で川村清雄の全貌を知ることができると、以前から楽しみにしていました。
幕末から明治、大正昭和へと、激動の時代を生き、幕臣として徳川家達や勝海舟と密接な交流のあった人生自体も興味深いものですが(資料多数あり)、やはり見るべきものは絵そのもの。
その時代では非常にまれであった海外(アメリカ・フランス・イタリア)留学で、10年鍛え上げられた油彩画のテクニックは、本当に見事で息を飲みました。
題材としては、長く滞在したヴェネツィアの風景から歴史的人物の肖像画、日本の滝や波濤などの風景画と様々ですが、どの絵を見ても感じられるのは、油彩画でありながら日本画のような色彩感覚、そして透明感と清潔感。
とても丁寧な仕上がりで、日本人特有の精緻な感覚が伝わってきます。
油彩の近代日本画(日本の題材を描いたもの)を見ると、どこか違和感を受けてしまうものが多いのですが、川村清雄の絵にはそれが全くありません。平安朝の御所車と従者を描いた《貴賤図(御所車)》なども、すっと自然にこちらに入ってきます。
「ああ、この人の絵は油彩という表現方法を用いた日本画なんだなぁ。日本人だなぁ。」と、失われた武士魂というか、一本筋の通ったものが伝わり、シャキッと背骨が伸びるような感覚になりました。
と同時に、最後まで油絵で「日本の美」を表現しようとしたその矜持には、心を打たれました…、久し振りに胸に熱いものがこみ上げた展覧会でした。