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ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー 《リチャード二世》

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イングランドのストラトフォードを本拠地とするロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの初シネマライブへ。
今年はシェイクスピア生誕450年という記念イヤー、上演に接する機会が増えそうで嬉しいです。
来日公演で《オセロー》を観たことがあるのですが、本場の劇場はさすがに雰囲気があります。客席が舞台を取り巻くような造りで、距離が近い。これぐらい密接だと、一体感が生まれやすいのではないでしょうか。

リチャード二世、公演ポスターの肖像画でも分かるように、完全に中世の方(^^;)
開催中のラファエル前派展では、華やかなブラウンの画「エドワード三世の宮廷に参内したチョーサー」にちょこっと登場していました(子供姿)。画ではエドワード三世(祖父)と黒太子(父)に囲まれた幸福な子ども。
このように生まれながらの王でありながら、従弟により王の座を奪われ、最後は幽閉されて死を迎えるという過酷な運命を辿るのです。

劇では、まっしぐらにリチャード二世の転落を綴っていきます。
シェイクスピア劇の凄いところは、単純な勧善懲悪の世界ではなく、主演のテナントが言ったように「人間をありのままに描く、だからこそ後世まで残っている」ということなのだと思います。
リチャードは自分を神から選ばれた人間だと信じ、自分の利益中心の高慢な王。それでいて気弱で卑怯。しかし、王の座を奪われても誇りを失わんとする一種の強さを見せます。対する従弟のボリングブルック、表では正義感に溢れているように見えますが、腹の底では…というように、どの人物も複雑さがあり、一括りにはできません。
人間って、そうではありませんか?納得させられるのです。

そしてシェイクスピア劇の命、言葉。
ともかく台詞、台詞の連続で、着いていくのが大変ですが、舞台で聴くのは、読むのとはまた違った体験です。全編韻文(弱強5歩格)で書かれているので、散文との違いを聴けるのも、興味深かったです。印象的な台詞もいろいろとあり、「なるほど~」と頷くことも。
演出家が「伝統芸能」と言っていましたが、言葉で全てを表現し尽そうとするところは、型や省略が中心となる日本の伝統芸能とは違うんだなぁ、と改めて思わざるを得ませんでした…。

主役のテナントは、ひ弱で滑稽な暴君から、策略に嵌まり転落していく悲劇の王を巧みに演じ切っていました。見事ですね。
長丁場の舞台、こちらも体力と集中力が必要です(^^;)
by marupuri23 | 2014-02-07 23:49 | 映画 | Comments(0)