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びわ湖ホール 歌劇《死の都》

ウィーンの作曲家コルンゴルトによるこのオペラは、私の偏愛する作品の一つで、いつか実際の舞台を観たいと思ってきたもの。
10年前、ザルツブルクにてデッカー演出のものを観ることができましたが、時を経て、今、日本で2つのプロダクションが同時に観られるとは、なんという巡り会わせ…。
今の時代(日本)が、何かこのオペラに惹かれるものを感じているのかもしれません。

私にとって、これはまさにウィーンのオペラ。作品の舞台である古都ブリュージュならぬ、古都ウィーンの薫りを濃厚に感じます。
生と死が絡み合い、時に官能的な旋律に彩られて展開するストーリーと曲は、20年前に初演し、日本でも大ヒットしたウィーン・ミュージカル、《エリサベート》とも共通する、独特な雰囲気を持っています。
帝政末期を舞台にした《エリザベート》と、帝政崩壊時に作曲された《死の都》。
《エリザベート》では「死(Der Tod)」が主人公を捕えようとし、《死の都》では、愛した亡き妻が主人公を捕えて離さない…。

失われた過去に対する愛着が、曲として見事に表現されており、遠い昔に誘われるような、いつもノスタルジックな想いに捉われます。10年ぶりに接してみて、それをさらに強く感じるようになりました。決して戻ってはこない過去…、甘く苦い記憶。
過去に引き摺られながらも、「死者は決して生き返ることは無い…、この世では会うことができないのだ。天国で会えるその時まで…」という主人公に、悲しみを受け止めつつ、今を生きていくことが大事なのだと、ほんのり勇気づけられる気がします。

今回の上演はオール日本人キャスト、力の入れ込みようが伝わってきました。
このオペラは、歌唱ももちろんですが、問われるのは何といってもオケだと思います。後のハリウッド映画音楽を想像させる、壮大なコルンゴルト節を十分に味わうことができました。
特に印象に残ったのが、3幕での「聖体の音楽」。これぞコルンゴルトという迫力で、後の《ヘリアーネの奇跡》が思い浮かびました。
by marupuri23 | 2014-03-15 02:14 | opera | Comments(0)