ヴェネツィア・バロックの建築家、ロンゲーナによるカ・レッツォーニコへ。
邸館を正面から眺められなかったのが残念だけれども、内部は1700年代ヴェネツィア博物館となっており、当時の雰囲気をうかがい知ることができる。
邸内ホールに一歩足を踏み入れたとたん、豪華な室内装飾に驚愕。フェニーチェ劇場や規模の大きいドゥカーレ宮殿とは違って、住まいの場としての華やかさに満ちている。
色も鮮やかなヴェネツィアン・グラスのシャンデリアに目が釘付け。ここはオテル・ダニエリかと思ってしまう。ヘンリー・ジェイムズ『鳩の翼』のミリーが借りたパラッツォもこんな感じだったのだろうかと…。
―「パラッツォー・レポレルリは、飾り付けをした極彩色の厳めしい偶像のように、いまだにその大きな膝の上に過去の歴史を抱いていた。この宮殿で絵画や骨とう品に取りかこまれ、崇拝され奉仕されているのは、豪華なヴェニスの消し去ることのできない過去だった」— (『鳩の翼』青木次夫 訳より)
そう、ヴェネツィアは過去の豪華さを、まだ切なく留めようとしているような雰囲気があり、過去に沈む都市というイメージが、私にとっては強い魅力の一つだ。その運河や音楽、絵画全般にノスタルジーを感じてしまう。
ここはカナル・グランデに面しており、ヴァポレットも泊まるのだが、信じられないほど見学者が少なくて、ゆったり過ごせる。絵画を含めた展示品も見ごたえがあって、思った以上に楽しめる博物館。