アンコール上映されたマルコ・ベロッキオ《夜よ、こんにちは》。アンコール上映だが、今回の映画祭で観た中ではマイ・ベスト。
エンディングで流れたシューベルト《楽興の時(有名な第三番)》の明るさと、殺害されたはずのモーロ元首相が解放されて街を歩いていく姿が、まるで映画の題名のように矛盾を強く感じさせるもので、印象に残った。
この映画で描かれているのは、実際に起きた「赤い旅団」による元首相モーロ誘拐殺害事件(1978年)。「赤い旅団」のテロリストたちの、誘拐監禁から殺害に至るまでの経緯を追っていく。このテロリストたちによる論理は、現在からみればいいようのない不可解さがある。でも、それは現在のテロリスト達とも似てはいないだろうか?
ベロッキオは、ただ史実を描こうとしているのではなく、映画ならではの技法を駆使して、夢という形でもう一つの真実を描こうとしているところ、これが素晴らしかった。こうした夢と現実の交差の描き方が、私はとても好き。緊迫感のあるカメラワークも秀逸。
イタリアの歴史を変えた事件でもあるので、これは見た方がいいと勧めてくれた知人に感謝。