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ファジョーリ&ヴェニス・バロック・オーケストラ(H30.11.22)

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 昨年スカラ座のヘンデルで初めてファジョーリを聴くことができたが、なんと日本で聴く機会に恵まれることになろうとは思わなかった。この公演を実現していただけたことに、まずは主催事務所を始めとする関係者の皆さまに感謝したい。結果、大成功の公演となりバロック・オペラ(ヘンデルのオペラ)とカウンターテナーの魅力をより多くの方に実感していただけたのではないかと思う。これで弾みがつき、日本でもさらにバロック・オペラへの間口が広がり、公演そしてファンが増えていくことになればと、愛好者の一人として心から願うものである。

 オケはヴェニスバロック、来日の度に聴いているので馴染み深いが、今回はファジョーリがいる。ということで、私も気合を入れて会場に向かったが、開演前から会場全体が高揚感で満ちていることに驚く。そう、今聴くべきはカウンターテナーなのだ、待ってました!という盛り上がりである。

 そしてファジョーリの歌いっぷりだが、前半は思ったより精彩を欠いている印象で、これはもしかしたら昨年のスカラ座と一緒(不調に見えた)かも…と不安を感じていたが、《リナルド》のVenti,turbine,prestateで声が発せられたとたん、これまでとは別人のようなトーンの艶やかさに「わっ!きた!」と胸が高鳴り、とたんに惹き込まれてしまった。これは十八番なのだろう、彼の超絶技巧が冴えわたり圧倒的。このアリアが終わったとたん、「Bravo!」の嵐(私も思わず声を掛けてしまった、お見事!)である。
 休憩を挟んでからは、さらに調子をどんどん挙げていき、それと比例して観客の声援も熱を帯びていく。日本のコンサートではないような熱い雰囲気に。

 ファジョーリの声自体はジャルスキーやメータに比べると、決して「美声」(私の好みは芯の堅いクリアな声)ではないが、テクニックがともかく凄く、ファルセットと地声をあんなふうに使い分けることも滅多にできまい。そのテクニックを駆使して、これ以上はないという豊かな表現をもって、バロック音楽に、ヘンデルのオペラに熱い血の通う生命を吹き込んでくれているのだ。ヘンデルのファンとしても、嬉しい限りだった。

by marupuri23 | 2018-11-25 23:02 | コンサート | Comments(0)