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《ナポリの隣人》(La Tenerezza,2017)

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 名匠ジャンニ・アメリオ監督(御年74歳)の《ナポリの隣人》鑑賞に岩波ホールへ。

 原題は《La Tenerezza》。私の持っている辞書を引いてみると「いとおしさ」とあり、確かに、この映画からは人をいとおしく(愛しく)想うことの本質を問う姿勢が強く感じられて、ああ、内容にぴったりだと。
 家族だからいとおしく思うのは当然?いや、そんな単純なものではない。愛そうと思っても愛せない、愛さないと思っても愛してしまうのが人間である。そして、愛されなかったことの体験というのは、やはり不幸の連鎖を生む危険性があるのだと。これはイタリアだけではなく、現代社会における共通の問題点であり、また課題の中には移民も含まれているので、そこを描くことも当然というべきか。
 最後には、家族だからこその繋がりが、「愛」という一言では片づけられない、理屈を越えて想わずにはいられない心の揺らぎが、じんわりと胸に迫ってきた。よかった。

 撮影はルカ・ビガッティ。舞台が「ナポリ」であることはとても重要、というかナポリでなければ成立しない!
 ナポリは昨年訪れて気に入ったのだが、映像では工事中のガレリア、そして港(ここからカプリに行ったなぁと)、ゴチャっとしたスペイン地区、ゴミの散乱した落書きだらけの道、車やバイクの荒っぽい運転にクラクションの騒音、この雰囲気こそナポリ!
 そして、心に闇を抱える若い父親を演じたエリオ・ジェルマーノが、目を見張る素晴らしさでびっくり。Bravo!

by marupuri23 | 2019-03-03 21:42 | 映画 | Comments(0)