新国立劇場《イドメネオ》
この作品を始めて聴いたのは、4年前の東京フィルによるオペラコンチェルタンテ公演。その日は体調が絶不調で、公演には行ったものの音楽を聴くどころではなく…。あれからもうそんな月日が経ったとは(唖然)。
24歳のモーツァルトによる渾身の作、10代の時のセリア(ルーチョ・シッラやミトリダーテ)に比べると、当然のことながら音楽の充実さが格段に増しており、若さの勢いもあって上り調子が感じられる、素晴らしい作品だと思います。オペラ・セリアというと、アンシャン・レジームのイメージが強いですが、もうこの頃になると(フランス革命まであとわずか)、伝統的なセリアの形を取りながらも、登場人物の性格付けや振る舞いが、それまでのものと比べ近代的な印象が。
特にタイトルロールのイドメネオ。神にひれ伏すのではなく、「それは神の誤りである」と敢然と挑むところなど、時代の新しさを感じます。
フランスのトラジェディ・リリック(カンプラ作曲)がベースになっているので、フランスの古典悲劇に近いのが嬉しい。エレットラの方が、存在感強く、訴えかけてきます。ラシーヌの「アンドロマック」のエルミオーヌ、「イフィジェニー」のエリフィール、そしてラモーのオペラにも登場するいわゆる悪役のヒロイン、どうしてこちらの方が、いつも圧倒的な存在感を持って迫ってくるのでしょう。