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 「プッチーニの《トゥーランドット》はイタリア・オペラの到達点であり、そこから先へは誰も進むことができなかった」という納得の着地点で講演を締め括ったヴェネツィ氏は1990年生まれの新鋭指揮者。
 プッチーニの作品はオペラ劇場でのレパートリーには欠かせないものであり、また上演数が多いにも関わらず、愛好家や一般向けの講演会及びレクチャー等で取り上げられる機会が少ないのではないだろうか。ヴェルディやベルカントオペラ、バロックオペラなど、他のイタリア・オペラに比べ、日本においてはアカデミックには語られていないような印象がある。が、今回の講演はさすが指揮者である。プッチーニの作曲技法を中心に据えた内容で(とはいっても一般向けなので、専門用語は控えめ)、まさにプッチーニがイタリア・オペラの到達点であることが理論的に述べられていて、非常に勉強になった。
 
 具体的に「フォーム」「メロディー」「ライトモチーフ」「ハーモニー」と項目に分けて説明がされたが、《トスカ》の自筆スコアには「何事にも負けずに、〝旋律”、旋律のオペラを作ること」というプッチーニのメモが残されているそうである。旋律が常にはっきり表れるというのはイタリア的な特徴で、これはトスカーナ地方(カッチーニの名前が出てきたので「新しい音楽」=モノディ様式、フィレンツェのことだろうか、プッチーニはルッカ出身)で生まれた伝統的な形式に沿っているものとのこと。伝統の枠を壊すことなく、ドイツ、フランスの形式を融合させ、「”ヨーロッパ”のオペラ」と呼べるようなところまで持ってきたのがプッチーニで、結果イタリア・オペラを国際的な場へ引き出したのだった。

 ワーグナーの影響と対比(ライトモチーフの扱い方、半音階の用い方)なども詳しい話があり、話せばきりがないのだが、遺作《トゥーランドット》(私は《マノン・レスコー》と同じくらい好き)は表現主義的、特にアリア《この宮殿の中で》は無調へとーギリギリ調性を保つ限界までいってしまったということで、これではなかなか最後が決まらなかったであろうと、うなづけてしまう。
 いったい、プッチーニはどのようにして《トゥーランドット》を終わらせようとしたのだろうか。プッチーニのスケッチと、アルファーノの付け足し部分はほとんど異なっているそうだが、これは永遠の謎である。

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