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 昨年、ヴェルディ作曲《マクベス》を実際に聴く機会を得、原作のシェイクスピアに改めて向かい合ったこともあり、書店で見かけた際に購入。

 ティーンエイジャーからの支持も高い作家、あさのあつこさんが中学生達に『マクベス』について特別授業を行う内容。
 あさのさんが『マクベス』について若い読者とやり取りする中で投げかける言葉は、分かりやすい、ごくシンプルな、だからこそ心の奥底にまで届く力強い言葉の連続。
 題材は『マクベス』ではなくともよかったのだと思う。若い世代へ『マクベス』を媒介としたメッセージー本が持つ無限大の力を、生き延びていくために活かしてほしい、という願いが伝わってきた。

 大事なのは、一人ひとりの受け取る印象が異なることが「当たり前」ということ。特に『マクベス』は受け取る側それぞれで違った「貌」を持つところが、この作品の凄みだと。
 これは本だけではなく、音楽も絵画も名作といわれるもの全てに当てはまる。様々な解釈(見方)を可能とする作品こそ、奥が深いのだと思う。
 そして、「私とあなたは感じることが違う」ことを認識し合うことで、世界も広がっていく。自分だけの考えに囚われず、他者を受け入れて共に進む柔軟性を大事にしたい。

 私にとって響いたメッセージをメモ。
 「自分の胸のうちにあるものや心の中にあるものを書こうと思ったときに、何が一番大事になってくるかーそれは感覚、五感なんですね。…自分が感じたことをしっかり溜め込むことが必要なのです。…つまらないと思ったこと自体が、自分の五感が働いた証なのです。…書くことは自分に向き合う作業なのですね」

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 新年の読書始めに相応しい一冊だった。高峰秀子さんの主演映画は一作も観ていないのに、ファンなのである。そのエッセイが好きで、この方は「天は二物を与えず」の例外で天は二物も三物も与えるのだなぁと感嘆してしまう。御養女の斎藤明美さんが綴る、高峰秀子さんの在りし日の姿も見事で、「高峰秀子は、女優である前に、人間のプロだった」との言に、人間、このようにありたいものだと我が身を顧みて反省するばかり。

 斎藤明美さんが述べていること―「洗濯とか掃除とか食事とか、そんなものはどうだっていい。それよりも、素晴らしい映画を観たり、優れた書物を読んだり、音楽を聴くほうがずっと大事なことだ。若い頃の私はそう信じていた。だが、四十歳少し前に高峰を知り、彼女の日常を見るようになって、その考えは間違っていたと気づいた。日常が何より大切なのだ。たとえそれが些細と思える小さな日常のことであっても、常に心を込めて、慎重に行うことは、簡単そうでいて難しい。それらを遂行していく何気ない時間の中で人間の心と肉体は培われていく。」

 この一文を心に留めて、この一年、できるだけ精進していきたいなと。とはいえ、もう挫けかけていることも多々…。そんなときにまた読み返すと、襟を正していけるかな。

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 書店でふと目に留まったイザベル・アジェンデ『日本人の恋びと』。題名に惹かれて手に取り、読み始めたら、あっという間に惹き込まれ、夢中になって完読。読み進めて残りのページ数が少なくなってくると、この悲しくも美しい愛の物語が終わってしまう予感に心寂しくなってしまうほどだった。
 
 イザベル・アジェンデは言うまでもなく『精霊たちの家』を代表作とするチリの作家だが、彼女の作品に接するのは初めて。ラテンアメリカ文学で大好きなのはマヌエル・プイグだが、イザベル・アジェンデは現在70歳半ばであっても現役バリバリの作家であるのが嬉しい。

 その年齢にあってこその心境と思わされる「老い」と「過去」と向き合う姿勢はもちろんのこと、現在の世界的な情勢をリアルに捉えた視点が物語に深みを与えている。現在の移民国家アメリカの多様性がよく伝わってきて、「モルドバ」の貧しい実際など目から鱗であった。そして過去の大戦時のホロコースト(主人公の両親はポーランド在住のユダヤ人)、また、日系アメリカ人の収容されたキャンプ(トパーズ収容所)の描写には胸が重苦しくなった。いま、どれほどの日本人がこのことを知っているだろうか…。

 感動的だったのは、最後に故人となった高齢の主人公が、未来を継ぐ若い友人にしっかりと愛のバトンを渡していったこと。
 愛が怖れを打ち砕いたこの場面は、この物語で最高のカタルシスをもたらしてくれた。
 「この友愛の証を前にイリーナは実感した。無垢だったころみたいに、わたしは大事にされていたのだと…。過去の怪物どもが退却しはじめ、養父のビデオのおぞましい力は実寸大に縮小した。…ああ、キルスティン、考えてもみて、わたしったら人生の半分も、つまらない怖れにかられて生きていたのよ」(本文より)
 
 過去は変えることができないが、大事なのは過去と向き合う姿勢。それは個人にとっても国にとっても同じだな、と。

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 毎年のことながら、年度末から年度初めは何かと気忙しく落ち着かない日々が続く。仕事中心の日々なので致し方ないとはいえ、こちらのブログも放置状態だ。
 今年の桜はあいにく天候には恵まれず、また改まって桜見物に出掛ける余裕もなかったが、近所を車で少し回るだけでも花見が楽しめて満足。
 コンサートや美術展へ行く機会も減ったが、無理をしないでカジュアルに自宅で音楽を聴いたり、本を読んだり、近所のシネコンで映画を観たりと、できるだけ時を忘れて楽しめる機会を持つようにしたいなと。

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 最近読んだ本から。

 内澤さんの本は『身体のいいなり』が評判になった際に、初めて手に取った。私と同じように大病をされたこと、ヨガに嵌まったというところに(私が勝手に)共通点を感じて、興味深く読んだことを覚えている。身体のダイレクトな変化とともに精神面も変化していくところが、内澤さんの表現で率直に綴られていて、そのストレートさには爽快感さえ感じられるほど。女性として、こうたくましくありたいと思わせてくれる骨太な生き方がカッコいいなぁ。

 先月の新聞の読書欄に、内澤さんによる移住についての寄稿文とお勧めの本が載っていたが、この『漂うままに島に着き』は都会から地方へ移住した体験のエッセー。
「いつのまにか、地方よりも都会が、東京が、ディストピアになってしまったのだと思う」という一文に深くうなづかされた。私も一応東京生まれ、東京育ちだが、この見渡す限りのコンクリートジャングルに埋もれていると、なんと自然というものから遠く隔たってしまっているのかと、唖然とすることがある。そして時折感じる息苦しさ、人間も自然の生き物なのに。
「家の石垣に腰かけて、ヤギのカヨとカヨの息子のタメと、青い青い海を眺めていると、綺麗すぎて、自分は実はもう死んでるんじゃないかとすら思う。…楽しすぎるんだけど、これ夢じゃないの?とも」。読者として、そのシーンを想像しただけでも、まるでユートピアのよう。本当の豊かさとはいったい何を指すのだろうか?実体験に基づいたリアルな洞察が、そこにはある。

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 元同僚に誘われ、上野まで。都会の小さな秋を散策。気持ちが解れていくのは、自然の潤いを感じさせてくれるから。
 そして彼女の希望で「ゴッホとゴーギャン」展へ。ゴッホは人気があるので、凄い人出。これだけ人がいるとゆったり鑑賞するのは難しい。ランチでのんびりして、お互いの近況をおしゃべり。
 その後は、国際子ども図書館の「こんにちは!イタリア」展へ。入口に掲げられているヴェネツィアに、もう嬉しくなってしまう。ちょうどギャラリートークが始まり、ラッキーだった。
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 イタリアの子どもの本を紹介している展示室は、絵本と児童文学のセクションに分かれており、ギャラリートークでは、児童文学のお薦めを何点か紹介してくれた。他国の文化を知ることは楽しい。
 中でも現代イタリアを代表する作家であるピウミーニ『光草』、ガンドルフィ『むだに過ごした時の島』は魅力的だった。そして、ダダモ『イクバルの戦い』は児童労働についての告発状にもなっている(イクバルは、そのために12歳で命を絶たれてしまう)。子供だけではなく、大人こそ読まねばならないな、と。
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 絵本の中では、ニコレッタ・チェッコリ『女の子たちの夢』に惹きつけられる。表紙に佇む少女の危うげで物憂いこと、この時期ならではの不安定さが幻想的に表されていて、お洒落。
 この絵本では、片方のページに「トリスタンとイゾルデ」などの昔の恋愛物語、もう片方に様々な女の子が描かれているとのこと。面白そう!

 今日のパリからはもう得られそうにない、昔のパリの印象を味わってみたいとお思いになるなら、大祭日の朝、たとえば復活祭とか、聖霊降臨祭とかの夜明けに、全市をひと目で見わたせるような、どこか高いところにのぼって、暁の鐘声に耳をかたむけられることをおすすめする。―たしかに、これは耳をかたむける価値のあるオペラだ。
―いま聴くこの鐘の音は、パリの歌声なのである。だから、この鐘楼たちのトゥッティ(総奏)に耳をかしていただきたい。―この音楽のるつぼ、高さ百メートルの石のフルートの中でいっせいにうたうこの一万もの青銅の声、オーケストラそのものとなってしまったこのパリ、嵐のように鳴り響く交響曲、こうしたものより豊かで楽しげで、金色燦然たるものを、何かこの世でご存じかどうか、おっしゃっていただきたいのだ。
       ユゴー作『ノートル=ダム・ド・パリ』辻昶・松下和則訳
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 パリの、そしてノートルダムへのオマージュに満ちた『ノートル=ダム・ド・パリ』。私がその小説に惹かれたのは、ウィーンで活躍した作曲家、フランツ・シュミットのオペラ《ノートルダム》を通してだった。小説が基になっており、オペラ全体を貫くモチーフ(間奏曲として知られている)の旋律が、なんともいえない切なさで好きだ…。
小説自体がまさにオペラ的なストーリーなので(ロマン派ですから)、曲が合わさるとオペラのドラマチックなこと、このうえない。昨年、実際に間奏曲を聴くことができたのは嬉しかったが、まさかベルリン・フィルで聴く日がこようとは思わなかった。

 以前に全集で接したときは、とっつきにくい印象だったものの(全部読んだ記憶がなく、おぼろげ…)、最近文庫版が出たので再読すると、本当に魅力的。ユゴーはストーリーテラーとしても見事だが、うっとりするような詩的表現がいくつもあって、さすが大詩人だと…。
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5月のOPERA NEWSはジャルスキーが表紙。
ミーハー的になってしまいましたが(^^;)、とても素敵に撮れていましたので、思わずこちらに挙げてしまいました。
舞台ではオーラ全開ですが、舞台を降りると、普通のお兄さんな感じで親しみやすい雰囲気。
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ヴィヴァルディ《狂気のオルランド》シャンゼリゼ劇場にて。ジェニファー・ラーモアと。コントラルトとカウンターテナー夢の共演。日本ではまず聴けません(;-;)

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ディドナートの表紙も(ファンです…)。
英国ロイヤルオペラ《ドン・ジョヴァンニ》での来日公演を心待ちにしていますが、本当に来ていただけるでしょうか…。
ホルテン(新国立《死の都》も彼)の新演出、2月に映像で観たばかり。最後の地獄落ちシーンが賛否両論でしょうか。ツェルリーナの描き方が面白かった。
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久々に「読んでよかった」と満足感一杯の美術案内でした。
著者は北海道にある六花亭製菓の美術館づくりに携わってこられた、建築家の飯田郷介さん。
タイトルから、軽快な案内書かと思いきや、かなりのボリューム(350ページあまり)!
自身が携わってこられた六花亭製菓の美術館(中札内美術村)から、日本を代表する建築家による9つの美術館を巡ります。

美術館それ自体にも物語がある…。建設の経緯から、所蔵品についての紹介はもちろん、建築家、味どころ、周辺の散策スポットなど、一つの美術館から無限に広がっていく鑑賞の楽しみがぎっしりと綴られています。本当に楽しめて、プラス建築や美術のお勉強にもなります。文章も、とても読みやすい。

日本初の公立近代美術館「神奈川県立近代美術館」について、ル・コルビュジェの弟子である坂倉準三が設計したことは知っていましたが、その人生や他に手がけた建築物も知ることができたのは収穫でした。
ほか、、前川國男や谷口吉朗、吉村順三など、日本の歴史を感じる建築家についても同様で、これから訪れてみたい美術館や建物をたくさん見つけることができました。

特に惹かれたのが谷口吉朗の建築。明治村やホテルオークラ、そして名随筆と言われる日記はぜひ読んでみたいと思いました。ドイツ出張の際には、国立劇場で上演された《タンホイザー》の客席でヒトラーを見たこともあったそうです。

そして、穂高の碌山美術館。
彫刻家、荻原碌山の美術館です。代表作の《女》は、国立近代美術館《美術にぶるっ》展で見たばかりでしたが、これが遺作。30歳という若さで亡くなったのですね。
ロダンの教えを受け、日本近代彫刻の先駆者と言われるその生涯はひたむきで、悲劇的。胸に迫るものがありました。
生涯を知ったうえで作品を想い起こしてみると、見方も変わってきます。

様々な角度から、美術の楽しみについて、有意義な情報を知ることができて面白かったです。世界が広がりました。
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ハイドンからプーランクまで、時代を追いながら23人の作曲家の自宅を、エピソードと美しい写真で紹介しています。それぞれの名曲を想い起こしながら、ゆったりと楽しめ、贅沢な時間を過ごした気分になりました。
また違った視点から作曲家の人生を眺めることができます。こうした楽しみ方もあるのですね。

表紙になっているのは、ノルフェーのオーレ・ブルのサロン。シャンデリアも見事なアラブ=ムーア風の邸宅です。ブルはパガニーニと並ぶ有名なヴァイオリニスト兼作曲家だったとのことですが、今では忘れられています(私も曲を知りません)。北欧の作曲家なので、なんとなく曲のイメージが浮かぶのですが…。

ブラームスのバーデン・バーデンの家は、イメージ通りのシンプルさ。爽やかなブルーの壁紙の「青いサロン」が印象的で、趣味の良さが窺えます。「雨の歌」が浮かび上がってきました。

飛び切り洒落ているのは、ラヴェル。自分で装飾を行い、寝室の壁の模様やインテリアもセンス抜群。

自分が住んでみたいのは…、花の庭園が、まさにイギリスの邸宅らしいエルガーの生家でしょうか。緑豊かな環境に憧れます。

家からの眺め(景観)にこだわる作曲家が多いのは、そこから受け取るインスピレーションも考えているのでしょうね。自然が与えてくれる創造性の大きさを感じました。
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ヨガをしている私に、父が薦めてくれた本。
イギリスの児童本の翻訳で、大型カラー印刷、図やイラストも豊富。噛み砕いた言葉で、宗教の歴史から宗教と科学の対立、宗教と哲学の関係など、様々なテーマが取り上げられており、大人が読んでも宗教への理解が深まる内容だと思います。

日本人のおおかたは、宗教をほとんど意識しないで生活を送っていますが、世界に目を向けるとそうではないことは誰もが知っている通りです。
本の初めには「この本を読むかどうかは君たちの自由だ。だが読めば、ほかの人々がなぜそう考え、ふるまうのかがわかるだろう。まずは理解することから、他人に対する寛容や尊敬の気持ちが生まれるのだ」とあります。
世界理解を深める教養の一つとして、自分と異なる世界への偏見を取り除き、また、正しく物事を捉えるためにも、世界宗教について知っておくのはよいことではないでしょうか。

ヨガについては、東洋思想が西洋に移植されて発展した、現代的なスピチュアル思想として説明があります。現代的ヨガはアメリカから大ブームになりました。自分の内面に目をむけ、日々のストレスマネジメントとしての意味合いが強くなります。

ヨガの良いところは、思想だけではなく、アーサナや呼吸法、瞑想などの実践をともなうところだと思います。そのバランスが大事ですね。