カテゴリ:イタリアへの旅 2018( 19 )

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 この一週間は以前から楽しみにしていたファジョーリ&ヴェニスバロックなど、久し振りにコンサートが続いたが、なんといっても忘れがたいのはバッティストーニ指揮《メフィスト―フェレ》だ。名前だけは知っていたこの作品のプロローグを、昨年にシャイー指揮のCD《スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集》で初めて聴いて度肝を抜かれた。そう、一聴惚れである(私の場合、好きになる曲はほとんど一聴惚れ)。
 それから全曲をCDで聴き、ますます虜になったが、その理由はこの作品が非常に視覚(映像)的でもあることで、この《メフィストーフェレ》のプロローグとエピローグを聴いていると、壮大な天上の世界が視覚的に目の前で展開していく感覚がーそれはシスティーナのような、いやシスティーナ礼拝堂以外でも、イタリアで観る教会や聖堂の天井は、神々の栄光で溢れており、その輝かしさは目が眩むばかりで、聴いているとそれらが脳裏に浮かび上がってくるようなのである。
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 今年ナポリで訪れたサン・マルティーノ美術館の教会も、なんとも壮麗な内部。もちろん天井は神の栄光が描かれている。《メフィストーフェレ》のプロローグ場面はゲーテの原作とは異なっており、ボーイト流に変更されているのだと思うが、それが見事に視覚的な効果と繋がっているのではないだろうか。《メフィストーフェレ》の天上での音楽は、実際にその世界を視覚からも捉えることをしてきた人の造ったものだ、と感じられてならない。


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 スタンダールがその音楽に対して「…目が眩み、魂を奪う」と記し独創的天才と讃えたロッシーニ⇒「gli occhi sono abbagliati,…」掲示の解説文を読み返してみたら、スタンダールがサン・カルロ劇場を讃えたものだったのね、失礼しました…。ナポリ王宮から続くサン・カルロ劇場博物館にて、ロッシーニの没後150年展が開催されていた。こうした展覧会があるとは知らなかったので、(一応)オペラ愛好家としては、驚くと同時に嬉しさのあまり気分が高揚。ロッシーニの作品にはナポリ初演のものが10作品ほどあって、この地と所縁深いのはもちろんだが、ナポリにも熱狂をもたらしたのだ。
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 開場入口にはスタンダールのコメントが。彼の著した『ロッシーニ伝』には「チマローザが去り、パイジェッロが作曲を止めると、一人の独創的天才(=ロッシーニ)が現れるまで、イタリア音楽は衰えた」「ロッシーニはチマローザを崇拝し、目に涙を浮かべて語る」とある。
 スタンダール曰く「カノーヴァ亡き後、(ロッシーニは)現存する最大の芸術家なのだ。後世はどのような評価を下すだろうか。そればかりは判定のしようがない。」
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 モンセラート・カバリエが身に付けた《エルミオーネ》の衣装。ナポリ初演でコルブラン(ロッシーニの奥様)が歌っている。大好きなラシーヌの『アンドロマック』が原作。確かにアンドロマックよりもエルミオーネの方が印象深い。所謂、敵役ではあるが、この戯曲のように主役のヒロインが喰われてしまうようなパターンって多いのではないかと思う。…が、肝心のオペラを聴いたことがない。日本で聴くのは一生無理かも。

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 チマローザのオペラ・ブッファの続きで…。名高いナポリの大作曲家なので、サン・カルロ劇場にいらっしゃいましたが、実際の上演に接したことがないのが残念。ブッファ、楽しいだろうな。
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 こちら手前にはパイジェッロが。チマローザと並ぶナポリの大作曲家である。オペラは実演で接した覚えがあるのだが、はっきりと思い出せない(ごめんなさい)。《うつろの心》が馴染み深い。
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 可愛らしい雰囲気のホワイエに、オペラ衣装の展示もあったりする。出入り自由だが、ブッフェは別の場所にあるので、他には何も無くてガラガラ。ここをブッフェにすればいいのにな、と。


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 まるで純白のレースのような大理石ホールを上ると宮廷劇場に。この劇場は現役で、バロック・オペラなどはここで上演されているそう。オーケストラの規模からみても、大きさ的にはぴったり。オーケストラピットもしっかりとあり、手入れの行き届いている印象だ。機会があれば、ここでオペラを観てみたいもの。バロックものでなくても…ああ、ここはナポリなのだった。ナポリ派の、例えばパイジェッロ、チマローザ、ピッチンニ、ヨンメッリ、ペルゴレージ…、挙げればきりがないことに気づく。ここで観れたら最高。
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 こちらサン・カルロ劇場のカタログから、チマローザ《宮廷楽士長》の舞台。カゼルタ(ナポリ王家の住まい)の宮廷劇場で1994年に上演されたもの。いいなぁ…実際に観てみたかったと、ただただ溜息。
 チマローザ《みじめな劇場支配人》は一昨年レザール・フロリサンでちょこっと聴いたけれど、笑えるドタバタ喜劇で楽しかった!ナポリ初演のこのオペラは、ゲーテもローマで聴いて魅了されたのだ。ロッシーニ以外のブッファ、もっと聴きたい。
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 劇場後ろにはロイヤルボックスが。ここは1768年に造られたとのことで、サン・カルロ劇場より30年ほど後。サン・カルロ劇場はナポリ派を始めとする作曲家のみならず、メタスタージオなどの台本作家らが、さあどうだと言わんばかりに目につくが(彫像やら名前を掲げたプレートやら…)、こちらは芸術の神々に囲まれた空間。

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 フィレンツェを発ちナポリの宿に到着して一息。20時からサン・カルロ劇場なので、下見も兼ねて劇場隣の王宮へ。一歩足を踏み入れたとたん、純白の華麗なレースを思わせるような大理石ホールに驚愕。まあエレガントなこと!
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 ブルボン家によるこの王宮は、公式な祝祭で使用されていたとのこと(住まいはカゼルタ)。大階段の凝った装飾を眺めているだけで、あっという間に時間が経ってしまう。
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 天井のレリーフも様々で見応えあり。ナポリ王家の紋章も見える。見学者はとても少なく(皆、海に行ってしまうのだろうか)、というかほとんど人がいなくて、貸し切り状態なのはいいが、確か20時まで開場しているはずなのに、私が見学し終えた後から、次々と部屋を閉め鍵まで掛けていくのである。…まだ16時頃なのに、私が最後の客ということのようだ。
 ナポリの美術館及び博物館の開館時間は当てにならないというのはこのことかと納得。やはり早めに行くのが肝心。

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 ホテル・キアイアでは「本場のナポリ銘菓をどうぞ!」とロビーにスイーツが用意されている。次の日は新鮮なフルーツで、これは嬉しいサービス。これぐらいミニサイズだと食べ比べられるのでありがたい。通常サイズのスフォリアテッラやババを食べると、それだけでお腹一杯になってしまう。
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 朝食にもミニサイズのスフォリアテッラ。初めて口にした際は、生地のパリパリ感が凄くて、歯に刺さって(!)痛いぐらいだなと。…このパリパリ感がクセになるのかも。
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  宿近くの大きなプレビシート広場。中央の聖堂には入らなかったが、ローマのパンテオン(こちらは行った)に似ているそう。昔はこの広場も違法駐車の多い無法地帯で荒れていたそうだが、今ではこんなにすっきり。

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中庭に面した部屋。通りの賑やかさはここまで届かず、静かで心地いい。
 
 ナポリでの宿は劇場近くのホテル・キアイア(3つ星ホテル)。
 キアイア通りは昔から目抜き通りの一つだが、大きな通りではなく車も入れないので、宿を取るにはちょっと不便かも。タクシーならば、キアイア通り入口で降ろされ、後は自力でガラガラとスーツケースを引きずりながらホテルへ辿り着くことになる。また宿の入口が分かりにくいのが難点。フロント・デスクが3階にあるので、エレベーターを使用するのだが、そのエレベーターがまた分かりにくい…。古い建物なので仕方がないが、とってもいい宿だったので(沢山おやつが出るの)、サン・カルロ劇場に行かれるならお薦めしたい。
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 一人にはちょうどいい広さ。ゆったり、のんびり。これでポットも付いていればよかったのだけど。
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 こちらがキアイア通りの入口。左手にはカフェ・ガンブリヌス、右手にはこれまた絶品スイーツ屋さんレオポルドがあって、 スフォリアテッラやババの食べ比べである。宿はここから5分もかからないほど。


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 築地の「パラディーゾ」でナポリ銘菓ババをいただいたが、こちらはナポリの老舗カフエ・ガンブリヌスの「カフェ・ババ」。
 ミニサイズのババがちょこんと乗っかっているが、これが美味しくて、もう感激。ババが香り高くて、しっとり。エスプレッソの苦味とのバランス抜群。このカフェはサン・カルロ劇場のすぐ目の前(ということは宿の近くでもある)で、また深夜まで営業しているので、オペラがはねた後などに立ち寄っていた。
 同じくオペラ鑑賞後に立ち寄ったと思われる隣のカップル(たぶん地元の方)は、通常サイズババ(結構大きい)をカウンターでパクパクっと平らげて、サッと店を後にしていった。さすがだ。
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観光名所なので、メニューも数か国語で記載あり。日本語もございます。ジェラートも種類豊富。
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 優美な店内で美味しいカフェとドルチェを味わいながら、オペラの余韻に浸れるナポリもいい。サン・カルロ劇場内のカフェでも、休憩中にババ(その他いろいろ)をいただくことができる。たぶん、ここのババかな。

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ブオンタレンティ設計によるメディチ家のコレクション部屋(トリブーナ)
朝の日差しに輝くドームの装飾が眩いほど
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 こちらも東京での展覧会から2年振りの再会。ブロンズィーノ(アニョロ・トーリ)の間にて、メディチ家のマリア。当時の衣装や装飾品の豪華さに目が惹きつけられる。頭の先からドレスまで真珠尽くし。真珠は15世紀終わりに新大陸が発見されてから、大量にヨーロッパへもたらされるようになったものだが、高価なため富の象徴である。
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 品格溢れる愛らしいビア。子供にしては落ち着いた憂いのある眼差しが印象的。清楚な白の衣装だが、質感はゴージャスで袖のたっぷりしたギャザーが華やかなデザインで素敵。
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 なんとも艶めかしいキリスト&聖ヨハネ(《エジプトから帰還する聖家族》)。プクプクした赤子の質感と滑らかさが実感として伝わってくる描写。ブロンズィーノによるマリアとヨセフも、滑らかな肌や衣類の質感が際立つ独特の雰囲気。肖像画以外の作品も、しっとりとした憂いを帯びた作風である。色彩はフィレンツェらしく鮮やか。

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 ウフィツィ美術館のペルジーノの間にて。
物憂げな美少年の眼差しに魅せられる。

 ウフィツィ美術館では、綺羅星のごとくにルネサンスの名画が勢揃いしており、奇跡のような場所だが、有名どころの画家以外にも素晴らしい作品が様々に充実していて嬉しい。ペルジーノ(ピエトロ・ヴァンヌッチ)の《若い男の肖像》に目が惹きつけられる。魂が吸い込まれそうな瞳…。
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 今にも瞬きをして、動き出しそうな雰囲気。ラファエロの師といわれるペルジーノ。この優美なタッチは確かに共通する部分がある。
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 《園の祈り》のキリストの穏やかでありながら、鋭い眼差し。待ち受ける死に対しての覚悟が伝わってくるようだ。


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