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 MITO9月音楽祭の会場の一つ、RAIアルトゥーロ・トスカニーニ・アウディトリウムへ。ここではRAI国立交響楽団による演奏を。
 ここへは宿からテアトロ・レージョを横切り、モーレ・アントネッリアーナ(国立映画博物館)方面へアーケード(ポルティコ)下をトコトコ。しかし、21時前という暗さと小雨が降っていたため、場所が分かりにくく、外見的には街に溶け込んだ地味目なコンサートホールという印象(暗くてよく見えなかった…)。内部も年期の入った雰囲気だが、これはこれで歴史を感じさせてよい。
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 ホールはシックな馬蹄形。オーケストラを聴くには大きすぎもせず、小さすぎもせず程よい感じ。今回は1階席前方で聴いたが、もっと後方でも良かったかな、と。舞台はピアノを載せてしまうと(ピアノ・コンチェルトだったので)ちょっとキツキツ。
 地元に馴染んだアットホームな、寛いだ雰囲気があって、尖がった都会っぽくないのがいい。隣の方が「どこから?」と声を掛けてくれたので、「東京から」というと目を丸くして、「おお、そんな遠くから…」と絶句。会場内を見渡してみると、ここでも日本人はもしかして自分だけじゃなかろうかと推測…。でも、文化功労者のコシノ・ジュンコさんもおっしゃっているように、感性の交流に国境や言葉の壁はないのである。音楽が繋いでくれる縁に感謝。

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 C.P.Eバッハはここ最近の大のお気に入り。そして、今回は滅多に聴くことのできない彼のオラトリオ《荒野のイスラエル人》が演奏されるとのことで非常に楽しみにしていた。演奏はオッターヴィオ・ダントーネ指揮、サント・スピリト・アカデミア・オーケストラ&合唱団(トリノにて1985年に設立。スピリト・サント=聖霊教会には行かなかったが、ご当地もので嬉しい)、そしてソリスト陣。
 《荒野のイスラエル人》はテレマンの後任を目指して渡ったハンブルクで初演され、当時でも大変評価の高かった作品。C.P.Eバッハの作品は、アヴァンギャルドで大胆な試みが刺激的だが、ここではオラトリオということで、ドラマチックでありながらも前衛さは控え、抑制を効かせて古典派的、そしてベルリン時代を彷彿とさせるエレガントな美しさが際立っている。さすがC.P.Eバッハ、期待を裏切らぬ見事な出来栄えの作品である。オラトリオだが、オペラティック、というのは、アリア(特にソプラノ2声)がバロック的で繰り返しの部分はお約束の装飾&即興性という華やかさであり、宗教的というにはあまりにも華麗。ソリストには高度な技巧が求められ、音楽自体にエンターテインメント性が高い。
 ソプラノのデュエット・アリアの美しさといったら、内容はイスラエルの民に救いを差し伸べぬ神への嘆きを謳いあげているのだが、モーツァルトに匹敵する天国的な調べで、地上を離れて天に誘われるがごときである。
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 合唱はイスラエルの民の嘆き、そして救われた歓び、神への感謝を情感豊かに表現、きっちりドラマを牽引し、引き締める。バスに割り当てられているのはモーゼ。登場シーンはシンフォニー付きで、いよいよモーゼ登場と金管を鳴らすこの辺りから、モーゼに神の無情を訴えるイスラエルの民(合唱)の怒りの場面の構成もメリハリがあり、ドラマとしてもよく出来ている。ダントーネもツボを押さえた采配ぶりで納得の表現。テノールはアロン。逆境の中、神を信じろと民を諫めるアリアには、心打たれる説得力がある。
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 会場はほぼ満員。当然歌詞はドイツ語なのだが、プログラムにはしっかりと対訳&解説付きで、本当に素晴らしい。観客で対訳を観ている方はそう多くなかったが(この辺りは日本と同じ)、集中して聴き入っている雰囲気。終了後はスタンディングオベーション。ソリストの歌唱も良くて、大満足。聴きに来て良かった、この曲はまず日本では聴けまい(というかやらないだろう)。
 驚いてしまうのは、このコンサートが無料であるということだ。これほど質の高い、オーケストラ&合唱団、ソリスト、指揮を揃え、しっかりとしたプログラムも配布している。いったいお金はどこから出ているのだろうか、と素朴な疑問が湧き出てくると同時に、日本との根本的な「文化」の享受ということの違いに想いを馳せずにはいられなかった。

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 イタリア・バロックの建築家F・ユヴァッラによる王宮を訪れた後に向かったこの教会も、またユヴァッラの設計によるもの。外見はシンプルだが、内部はこのように彫刻による壮麗な装飾が。とは言っても色調がシックなので、落ち着いた雰囲気。
 ここで、午後4時からコンサート(MITO9月音楽祭)が開催されるのだ。楽しみにしていたが、無料につき入場は先着順なので開演45分前には到着。すでに順番待ちの人がズラッと並んでいたが、中には入れそうで一安心。
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 皆さまお行儀よく並んで待っている。観客としては現地の方が多いのだろう、今回聴いたMITO9月音楽祭(計6公演)では、私のような東洋人は全くいなかったなぁと。また、こうして並ぶ経験も滅多にできないことだしと、期待でドキドキしながら待つこと数十分。
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 いよいよ中へ。中央席を確保して、内部をキョロキョロ。心の中で「わぁ~、ここでC.P.E.バッハのオラトリオが聴けるなんて!」と感慨ひとしお、写真撮りまくりだが、そんな風にソワソワと落ち着かないのは私だけのよう…。天窓から差し込む光も美しく、優雅な教会の雰囲気を満喫。コンサートの様子は、また後日。
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 サバウダ美術館は王宮エリア内にある。共通チケット売り場から階段を登っていくと、バロックの華麗な空間が広がり、ここだけでも雰囲気十分。美術館はさらにその先にあるが、絵画展示室として近代的な改装が施されており、見やすい配慮と工夫が凝らされている。
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 左右の展示室を繋ぐ通路壁には、所蔵作品の画家についての紹介が掲示されている。一番手前はイタリア・バロックの画家、フランチェスコ・ソリメーナについて。彼の絵が、どの展示室(室数も多い!)にあるのかも記載されている。王宮内という広い空間を生かした掲示だが、センスの良さに感心。
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 展示室自体はこのようにシンプルで見やすい配置。祭壇画も素晴らしいものが多く、作品を挙げればきりがない。印象に残った絵画は、また時間を見つけてボチボチと振り返っていきたい。

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 王宮内のサバウダ美術館へ。王家が収集した絵画コレクションだけあり、質が高いのはもちろん、量もかなりのもので、大変見応えがある。また、ご当地もの(画家)が充実しているのが嬉しい。展示室も新しく明るい設え、分かりやすい配置で工夫が凝らされている。そして何よりもガラ空きという、鑑賞にはもってこいの環境である。
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 ここでまず惹かれたのが、モルタナ(ロンバルディアとピエモンテの境目)出身で、主にミラノで活躍し、ヴェルチェッリ(ピエモンテ)で亡くなったベルナルディーノ・ラニーノ(1528年~1581年)のもの。
 テンペラ画で、鮮やかな色彩とドラマティックな表現、ここでもマグダラのマリア(香油壺と思われるものが側にある)の表情に惹かれてしまう。悲しみに満ちた表情の美しいこと…。聖カタリナの側には王冠&壊れた車輪が。ラニーノはガウデンツィオ・フェッラーリの弟子でレオナルド・ダ・ヴィンチからも影響を受けているそう。しかし、レオナルドというよりもフランドル絵画を彷彿とさせる雰囲気だ。
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 静かで、穏やかな王宮内。こうした場所で、長い時を経たいにしえの絵たちと出会うときを、至福と呼ばずして何と言おうか。

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 この新作歌舞伎は、インドの叙事詩マハーバーラタを題材にしたとのことで興味を惹かれ、久し振り(二年振りぐらい)の歌舞伎座へ。インドは20代初めに訪れた際、その力強さと賑わい、美しさ(ピンク・シティのジャイプールが忘れられない)に感動したものの、体調をひどく壊してしまったのがトラウマで「ああ、ここで暮らすのは難しいかも」と再訪できないでいる。だが、大変魅力的な国。
 ヨガにも取り組んでいたので、マハーバーラタ、そしてその核をなすバガヴァッド・ギータ―は多少馴染みのあるものだ。これをどのように歌舞伎化するのか予想がつかなかったが、結果、活劇として大変面白く仕上がっており、予想以上に楽しむことができた(もう一度見たい!)。
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 序幕は上図のように、黄金に輝く神々がおわすヒマラヤ山の雲の上から。破壊神シヴァは青ではないんだと(アトリビュートはシヴァ神っぽい)、そういえば、バレエ・リュス展でインドを舞台にした《青神》があったなぁと思い出す。
 そして、絵の通りに地上の姫君も着物姿で「母なるガンジスが…」(!)と言っているので、初めは違和感があるものの、話が面白く舞台の豪華さも見事ゆえ、すぐに慣れてしまう。そう、これはあくまでも歌舞伎なのだから、間違ってもサリー姿などはありえないだろうと再認識…。額の「第三の目」であるビンディ飾りは、着物姿でも似合っていて素敵だった。
 ここでの神々は、ギリシャ神話の神々のようにそれぞれ個性的なキャラクターで、それぞれの思惑で人間を動かそうする姿も、また神話的。最後、帝釈天が「輪廻から解き放とう、永遠を与えよう」という言葉には打たれた。仏陀も輪廻はあると言っていたそうだ、解脱とは輪廻のくびきから解き放たれること、日本の仏教とも関連の深いインドの神々の世界に、改めていろいろと思いを馳せた公演だった。

※素敵だったのは鶴妖朶姫を演じた七之助!声もセクシーでうっとり。今回は美味しい役どころでもあったけれど、どんどん魅力を増している感じ。

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 この王宮は、17世紀から19世紀末までサヴォイア家の公式宮殿として使用されただけあって、もうどうしていいか分からないほどの豪華絢爛さで、目がチカチカしてしまう。壁から天井まで装飾びっしりで、ロココというよりもバロックの迫力である。見学者は少数で、ゆったりと巡ることができるのが嬉しい。
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 部屋の大きさ自体はそれほどでもないが、重厚さがあり、かといって無骨な感じはなく、こうした雰囲気はイタリア的と言えるのだろうか。バロックのヴェルサイユ宮殿やロココのサン・スーシ宮殿などとは違った趣。ヴェネツィアのパラッツォとも全く異なる印象だ。
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 国は違えども、宮殿と名の付くところには、東洋の陶磁器コレクションルームは必須アイテムなのである。もちろんここにもございます。漆の装飾で飾られた部屋も。

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 たっぷりと時間を取って王宮内を見学した後は、さすがに休憩を取りたい。
 嬉しいことに王宮内にカフェがオープンしているので、しばしのんびり。カメリエーレが「ビチェリンはいかが?」と薦めてくれるので、トリノ名物のビチェリンをいただく。小腹が空いたので、プロシュットのパニーノも。パニーニは他にもサーモンやチーズなどいろいろあって選ぶことができる。サンドウィッチもあり。王宮カフェなので上品なサイズ&量。ビチェリン、もっと飲みたかったな。
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 トリノのビチェリンといえば、「カフェ・アル・ビチェリン」(発祥のカフェ)へ行ってみたかったが、宿から距離があったので諦めてしまった。チョコレートの風味が疲れに沁みて美味しい♪甘さはあるが、コーヒーと一緒なので、くどくないの。

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 王宮内の武器博物館からカステッロ広場を、そして滞在中の宿を臨む。
トリノは、美しかった。
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 世界遺産であるサヴォイア王家の宮殿には、欧州随一といわれる武器博物館がある。これが凄い迫力で、芸術品なみの甲冑や武器に目の玉が飛び出そうになる。騎士が馬にまたがっているのがリアルで、今にも動き出しそう、中世にタイプスリップした感覚に。しかし重そう、実際に動けたのだろうかと。
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 そして、お馬さんまでもが重そうなのである。人間も馬もこれでは、身に付けた感覚が想像できない(辛そう)。見た目はもちろんカッコイイのだが(凄いデザイン…アヴァンギャルドだ)。
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…手の先までがこんななの。ここまでくると絶句。いくら見ていても飽きない、時を忘れてしまう。

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ミラノ滞在中に何度も通った、中心部のメラヴィリ通り。
トラムのレトロな趣きが街の風景に馴染んで、どこか懐かしい印象。

今回の音楽の旅は、成田からミラノに到着後トリノへ。そしてまたミラノに舞い戻ってきた。音楽鑑賞を軸にしてしまうと、どうしてもこのような旅程になってしまうのが辛いところ。
 ミラノではスカラ座まで2分の宿、ホテル・スターに2泊。3つ星でも場所的にそれなりの値段がするが、早割でなんと45%オフで確保。一人旅(夫は日本で留守番)には嬉しい。ただ、ホテルのサイトで申し込み後、24時間以内に確認メールのやり取りをしないとキャンセル扱いになるので注意。また、即決済でキャンセル不可なので、旅程が確定しなければ申し込めないのが難点。
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 ホテル・スターはこの細い路地の右手に。ホテル自体は快適で、フロント・デスクもすぐに顔と部屋番号を覚えてくれて、対応がとてもいい。朝食も普通に充実していて美味しい♪なんといっても立地が最高だ。
 だが、トリノの中心部があまりにも整然と美しかったものだから、この辺りに来てみると「なんだかグチャグチャした(パッとしない)所だな」というのが第一印象(ごめんなさいねミラノ)。慣れてみると、これはこれで味わいがあっていい。
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 スカラ座に近いということは、ドゥオーモやガッレリアからも近いということで、実際に行ってみると宿からあまりの近さと、東京都心なみの人混みに驚く。せめてプラダ本店ぐらい覗いてみようと入ってみるが、店内は日本人や中国人の観光客がほとんど。そう、ここは観光地だものね。


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