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北京・故宮博物院の宮廷工芸コレクション
3年前に訪れた紫禁城を思い出しながら

 東京国立博物館で開催されている「故宮の世界」展へ。皇帝コレクションである工芸品の数々を3DCGで鑑賞。皇帝のために特別に仕立てられた調度品ということで、その豪奢さには目を見張るばかり。実際に見るよりもデジタルの方が美しさが際立っているかも。
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 こちらは、実際(故宮博物院・珍宝館)の展示をパチリ。皇帝コレクションの間が再現されており、見応え有り過ぎのお宝満載。現地のガイドさんは、私の驚いている様子に嬉しそう。このお宝たちが、海を越えて日本にお目見えするのは、難しいことだろう。日本の工芸品とは、似て非なるものであることを改めて認識。
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 一番感じるのは、「わび・さび」に代表される日本の美意識との違い。赤・金が多用された眩さに目がくらみそう。紫禁城の黄色の瑠璃瓦と朱色の回廊が目に浮かぶ。

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ラヴェッロのホテル、ルーフォロにてランチ
ピアノ(YAMAHAの自動演奏!)が奏でるモーツァルトの調べ
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 ホテル・ルーフォロのテラスから。いくら眺めても、この風景に飽きることがない。作家ロレンスはここで『チャタレイ夫人の恋人』を書き終えたとのこと。ラヴェッロは、私の好きなヴァージニア・ウルフとも所縁があり、音楽家のみならず数多くの芸術家に愛された街。やはり数日間は滞在して、この浮世離れした天国的な雰囲気を味わいたいものである。
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 視線を左側に向ければ、ヴィラ・ルーフォロの大きな塔とムーア式の回廊がちょこっと見える。この大きな塔はヴィラ・ルーフォロの中で最も古い建築物とのこと。1280年頃から建てられていたそうなので、少なくとも数百年は経っているはず…。中世にタイムスリップしたような感覚に包まれる。
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異国情緒を感じる床のタイルに目を奪われる。素敵だ。

ラヴェッロでの昼食、イカ墨パスタとババ_e0036980_19122274.jpg
アンチョビとフィノッキオ入りイカ墨パスタ
あまり飲めないけど、せっかくだから白ワインも

 伊太利の海岸リゾート、ラヴェッロでのお昼ご飯。ビキニの上からシャツを羽織って、軽装のまま、広場近くの家族経営ホテル内レストランへ。アンチョビは好物で嬉しい。
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 南イタリアでは、大好きなババを毎日食べたいぐらい。私はスフォリアテッラよりもババ推しである。このナポリ銘菓について、夫には「ババって婆?」と失礼なことを言われたが、ナポレターニも「ババ?パパ?」と冗談を言うらしいので、まあよし。

ニッセイ名作シリーズ《カプレーティとモンテッキ》~R3.11.13_e0036980_23074536.jpg
 9月に《清教徒》、その2カ月後にはこの《カプレーティとモンテッキ》を聴けるとは嬉しい。ベッリーニのオペラはあまり上演されないのに、このコロナ禍で当たり年とは驚き。昔から大好きな作品だが、生きている間に実際聴くことができるのだろうかと危ぶんでいただけに、上演に接することができただけでも大満足。
 指揮は鈴木恵里菜さん、序曲からイタリアの薫りが迸り、胸が熱くなる。また、ロメーオを歌った山下裕賀さんがクリアな美声で、日本人離れしているのにびっくり。とても魅力的だった。
 配布されたパンフレットも、音楽学者の岡田暁生さんと『神曲』の訳者である原基昌さんの寄稿で充実したものとなっており、初めての観客にとっても有益だったに違いない。特に、ベッリーニに流れる「シチリアの血」の具現化と、ワーグナーへの影響についてのくだりは私にとっても目から鱗。そしてショパン…、ああ、本当にこの二人のメロディーはよく似通っている。息の長い、滑らかで哀愁に満ちた調べ。私が猛特訓したノクターンのいくつかを脳内再生すると、まさにベッリーニであることに戦慄すら覚えるほど。ショパンとバッハも共通している箇所が多いので、天才同士の相互影響力というのも何かしらの共通点がありそうな。
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鑑賞後は銀座のイータリーへ。本場さながらのイタリアオペラとディナーで、もうイタリアまで行く必要がないのかも…。

鷗外とともに、イタリアへの旅_e0036980_21501688.jpg
ラヴェッロからサレルノ湾を臨む
汝はわが伊太利をひし情のいかに切なりしかを知るか。
一たび浄土を去りたるものの不幸は、嘗て浄土を見ざりしものの不幸より甚し。
森鷗外 訳『即興詩人』より

 昨年の外出厳重自粛中に夢中になったのが、鷗外訳の『即興詩人』。
 きっかけは、たまたま目にしたネット記事で『即興詩人』の舞台がローマをはじめとした南イタリアであることを知ったからだった。数年前に訪れたナポリ、サレルノ、カプリ、アマルフィ、そしてパエストゥム!これは読まぬわけにはいかないと、実家にある岩波書店の鷗外全集を譲り受けてきたものの、旧漢字+文語体で呆然。でも、イタリアへの想いはそれぐらいでは怯まないのである。それならばと筑摩書房の『即興詩人』を取り寄せ併読。
 このアンデルセンによる小説は、グランドツアー的な紀行文の趣きも強く、鷗外が惚れ込んだだけあって、光に満ちたイタリアの魅力が凝縮されている。
 結局、鷗外はドイツ留学から帰国後、二度とヨーロッパの地を踏むことはなかった。さぞかし、イタリアへも訪れたかったであろう、留学時代の恋人とも再会したかったろうと切なくなる。時代というものの厳しさを感じずにはいられない。
 今年は没後100年、日本を代表する文豪との出会いに感謝。

# by marupuri23 | 2022-09-01 23:09 | | Comments(0)